島根県雲南市内の道路沿いに、手書きで「左 右」とだけ書かれた看板がある。「左に行ったら左」「右に行ったら右」という意味なのだろうか。行き先の道を示したり、注意を呼びかけたりするような一般的な看板とは明らかに雰囲気が違う。誰がどんな目的で設置したものなのか、調べてみた。
【写真】アップで見ると…情報は方角のみという不親切さに反して、字体はきれいで読みやすい 看板があるのは雲南市木次町木次の木次小学校前を通る県道45号沿い。JR木次駅方面から南東の「木次健康温泉センター おろち湯ったり館」に向かう途中、左手側の柵にかけられている。

大きさは縦20センチ、横80センチほど。茶色くさびが付き、ワイヤーで巻き付けられている。黄色いペンキらしきもので看板の中心に縦線が引かれ、左側に「左」、右側に「右」の文字がある。読みやすくきれいな字体ではあるが、看板でわざわざ示されるほどでもない情報だ。 看板の正面に道が延びており、県道と合流する丁字路になっている。看板の向きから考えて、正面の道路から来た車に向けたものと考えられるが、それにしては小さすぎる。しかも看板のすぐ上には、600メートル先に「おろち湯ったり館」があることを示す正規の看板がある。ますます看板の存在意義が分からない。 地元住民でも「初めて知った」 看板の雰囲気から見て、国や自治体ではなく住民個人や民間団体が手作りしたものと考えられる。まずは近くの民家に聞いてみた。 スマートフォンで撮影した看板の写真を見せながら、周辺の民家を回ったが「知らん。そんなもんあったかいな」「言われて初めて知ったわ」と、いずれも存在自体を認識していなかった。 確かに、現場の看板側に歩道はあるが、とても狭く、歩いて看板前を通る人は少なそう。車で通る際に注視できる大きさではないため、地元の人はかえって見ないのかもしれない。 「おろち湯ったり館」の看板の下にあるため、同館の人が何か知っているかもしれない。同館に飛び込みで尋ねると、稲村美代子課長が対応してくれた。 稲村課長は「(現場に)何かしらの看板があったという記憶はあるが、さすがに当館の関連のものではないと思う」と苦笑い。近くの2カ所に館が設置した案内看板があるが、黄緑色を基調に「おろち湯ったり館 800m」などとしっかり道筋や目的地を示している。設置場所が近かったとはいえ、情報量が少なすぎる「左右看板」と比べるのは失礼だったかもしれない。 稲村課長が湯ったり館の利用者にも聞いてくれたほか、記者が地域の交流拠点の八日市交流センターや雲南市木次総合センターに尋ねてみたものの、看板の詳細を知る人はいなかった。正真正銘の謎の看板なのだろうか。 看板設置を管理する県の事務所は 県道に看板やのぼりといったものを設置するには県の許可が必要なはず。県道を管理する島根県雲南県土整備事務所に問い合わせてみた。 道路に何かを設ける際の「道路占用」についてとりまとめる、管理課の中村玲菜主事によると「確かに看板設置には許可が必要だが、調べた限り、これまでに当該の場所で道路占用の申請は出ていない」とのこと。左右看板は手作り感満載で、正規の手続きを経て設置した看板ではないのかもしれない。 近隣の住民は知らず、道路管理者の記録にもないとなると八方ふさがり。中村主事は「昔、地元の住民が立てた可能性はある」と推測した。 小学生のころ、道路を横断する際「右、左、キョロキョロよし」と、道路を横断する際は左右の安全確認を徹底することを教えられたが、設置した人も同じことを伝えたかったのだろうか。 自治体と地域の人々の情報をフル活用したものの、看板を設置した人物や意図については分からずじまいだった。近所の住民をはじめ、まちづくりに携わる交流センター、自治体ですら詳細が分からず、謎は深まるばかり。真相を知るため、これからも調査を続けたい。 謎の看板について何か知っている人はSデジ編集部まで情報をお寄せください。メールアドレスは[email protected](まいどなニュース/山陰中央新報)
看板があるのは雲南市木次町木次の木次小学校前を通る県道45号沿い。JR木次駅方面から南東の「木次健康温泉センター おろち湯ったり館」に向かう途中、左手側の柵にかけられている。
大きさは縦20センチ、横80センチほど。茶色くさびが付き、ワイヤーで巻き付けられている。黄色いペンキらしきもので看板の中心に縦線が引かれ、左側に「左」、右側に「右」の文字がある。読みやすくきれいな字体ではあるが、看板でわざわざ示されるほどでもない情報だ。
看板の正面に道が延びており、県道と合流する丁字路になっている。看板の向きから考えて、正面の道路から来た車に向けたものと考えられるが、それにしては小さすぎる。しかも看板のすぐ上には、600メートル先に「おろち湯ったり館」があることを示す正規の看板がある。ますます看板の存在意義が分からない。
看板の雰囲気から見て、国や自治体ではなく住民個人や民間団体が手作りしたものと考えられる。まずは近くの民家に聞いてみた。
スマートフォンで撮影した看板の写真を見せながら、周辺の民家を回ったが「知らん。そんなもんあったかいな」「言われて初めて知ったわ」と、いずれも存在自体を認識していなかった。
確かに、現場の看板側に歩道はあるが、とても狭く、歩いて看板前を通る人は少なそう。車で通る際に注視できる大きさではないため、地元の人はかえって見ないのかもしれない。
「おろち湯ったり館」の看板の下にあるため、同館の人が何か知っているかもしれない。同館に飛び込みで尋ねると、稲村美代子課長が対応してくれた。
稲村課長は「(現場に)何かしらの看板があったという記憶はあるが、さすがに当館の関連のものではないと思う」と苦笑い。近くの2カ所に館が設置した案内看板があるが、黄緑色を基調に「おろち湯ったり館 800m」などとしっかり道筋や目的地を示している。設置場所が近かったとはいえ、情報量が少なすぎる「左右看板」と比べるのは失礼だったかもしれない。
稲村課長が湯ったり館の利用者にも聞いてくれたほか、記者が地域の交流拠点の八日市交流センターや雲南市木次総合センターに尋ねてみたものの、看板の詳細を知る人はいなかった。正真正銘の謎の看板なのだろうか。
県道に看板やのぼりといったものを設置するには県の許可が必要なはず。県道を管理する島根県雲南県土整備事務所に問い合わせてみた。
道路に何かを設ける際の「道路占用」についてとりまとめる、管理課の中村玲菜主事によると「確かに看板設置には許可が必要だが、調べた限り、これまでに当該の場所で道路占用の申請は出ていない」とのこと。左右看板は手作り感満載で、正規の手続きを経て設置した看板ではないのかもしれない。
近隣の住民は知らず、道路管理者の記録にもないとなると八方ふさがり。中村主事は「昔、地元の住民が立てた可能性はある」と推測した。
小学生のころ、道路を横断する際「右、左、キョロキョロよし」と、道路を横断する際は左右の安全確認を徹底することを教えられたが、設置した人も同じことを伝えたかったのだろうか。
自治体と地域の人々の情報をフル活用したものの、看板を設置した人物や意図については分からずじまいだった。近所の住民をはじめ、まちづくりに携わる交流センター、自治体ですら詳細が分からず、謎は深まるばかり。真相を知るため、これからも調査を続けたい。
謎の看板について何か知っている人はSデジ編集部まで情報をお寄せください。メールアドレスは[email protected]
(まいどなニュース/山陰中央新報)