東京五輪・パラリンピックの選手村として活用された、東京・中央区の大規模レジデンス「HARUMI FLAG(以下、晴海フラッグ)」の部屋が、次々と転売されている。
分譲総戸数4145戸の晴海フラッグは、選手村の跡地の再活用という経緯から、中央区アドレスとしては破格の安値で売り出され、購入希望者が殺到。抽選倍率200倍を超える部屋も飛び出した。
「売り出し時の晴海フラッグの価格は、85平米でおよそ8000万円。銀座・新橋至近で坪単価が300万円のマンションが出てくることはほぼあり得ないので、購入希望者が殺到するのは必然でした」(不動産業者)
当初の予定では、2020年に五輪が終了した後にリフォームをして、’23年3月ごろから購入者への引き渡しが始まることになっていた。ところが新型コロナウイルスの流行で五輪は1年延期、引き渡しも後ろ倒しになった。
「そうこうしているうちにも、都心のマンション価格は高騰を続けました。ウクライナ戦争が材料費の高騰に拍車をかけ、マンション価格の頭打ちは見えません。こうした状況が、晴海フラッグの割安感をさらに際立たせた」(全国紙経済部デスク)
最寄り駅の都営大江戸線・勝どき駅まで最短で徒歩16分、海沿いの埋立地という立地を疑問視する声も当初はあった。だが、コスパのいい新築マンションが端から売れていくにつれ、晴海フラッグの人気は高まっていったのである。
こうした状況下で、価格の高騰をチャンスと見た成約者が物件を転売するケースが散見されるようになったのだ。気になるのはその販売価格。大手住宅情報サイトを見ると、売り出し価格が5000万円台だった61.06平米の物件がなんと9100万円で販売されている。
また、同サイトに掲載されている4LDK、100.15平米の物件販売価格は1億6700万円。入居することなく即転売する、いわゆる「即転」で億ションに化けたのだ(掲載は執筆時点)。
「売り出し時の販売価格表を見ると、同タイプの部屋は8790万円になっています。つまり、即転で価格はおよそ2倍になっているのです。坪単価も500万円台にハネ上がった」(前出・不動産業者)
「転売価格」が上乗せされた晴海フラッグに、果たして買い手は現れるのだろうか。マンショントレンド評論家の日下部理絵氏は言う。
「似たようなケースで、’08年に竣工した『シティタワー品川』があります。’72年の定期借地権がついていることから破格の安さで販売され、抽選倍率が数百倍になった部屋もありました。そのため、5年間は転売、賃貸の禁止、自己居住専用という条件が設定され、違反が判明した場合は10%の違約金を引いてデベロッパーが買い戻すという買い戻し特約までつけられた。晴海フラッグにはそのような制約がないため、次々と売却する購入者が現れたのでしょう。
肝心の価格ですが、坪単価500万円台になっても買い手がつく可能性はあります。近隣エリアでは、坪単価600万円台のタワマンも販売されていて、売出し中の物件数も枯渇しつつある。ここ数年間の都心のマンション価格高騰で、転売価格が上乗せされても許容範囲と感じる人はいるのではないでしょうか」
転売狂騒曲が鳴りやむのはいつの日か――。