16日、警視庁捜査1課に殺人容疑で逮捕された製薬大手「第一三共」の研究員、吉田佳右(けいすけ)容疑者(40)=東京都大田区西馬込=。
捜査1課は妻(40)に有毒のメタノールを飲ませて殺害したとみている。
メタノールは、天然ガスなどから作られるアルコールの一種で、アルコールランプの燃料や、塗料や接着剤の原料として使われる。メタノールは毒劇物取締法で原体のみが劇物に指定されており、希釈したものは薬局などで購入することができる。
岡山大大学院医歯薬学総合研究科の中尾篤典教授によると、口にした場合、「少量でも重大な後遺症を残し、純度100%のものであれば10~100ミリリットルで致死量とされる危険な物質」とする。摂取すると頭痛や吐き気、目まいなどの症状を引き起こし、症状が進むとけいれんや失明、死亡する危険性もある。量や体内への入り方によって異なるが、症状が出るまでに数時間~1週間以上かかることもあるという。
中尾教授によると、メタノールは「においや味はいわゆるアルコールの味。お酒に少量混ぜてしまうと気づかない可能性もある」という。日本などでは過去に安価なメタノールを含んだ密造酒が出回り中毒死する例が相次いだ。だが、「最近は国内で死亡する例はあまり聞かない。病院にしっかり行けば、亡くなるまでにはならない」という。
中尾教授は「誤って飲んでしまった場合には、すぐに医療機関の受診が必要。通常の医療機関では検査や治療薬がないこともあり、中毒専門医がある施設が望ましい」とした。