〈「僕はこの仕事が天職だと思っています」「これ以上何を望むわけではないけど…」月80人の“素人”を撮影する現役風俗カメラマンが明かす“宣材写真撮影”現場のリアル〉から続く
理学療法士として病院勤務をしていた奥山まめ。しかし、職場での陰湿ないじめに遭い、逃げるように退職した彼女が次に選んだ道は、カメラマンだった。最初にレンズを向けたのは、元ダンサーである夫の「ヌード」だったという。
【画像】理学療法士から風俗写真家に転身した女性が撮影した「作品」がコチラ
身体の仕組みを知り尽くした彼女がたどり着いたのは、「ラブホ女子会」プランを利用した撮影会。「男性カメラマンだと緊張する」という風俗嬢たちの支持を集め、コンプレックスさえも魅力に変えていく。
元医療従事者はなぜ、夜の世界で輝く女性たちを撮るようになったのか。フリーライターの山田厚俊氏による『風俗カメラマン「姫」を輝かせる者たちの世界』(草思社)の一部を抜粋し、紹介する。
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驚きの転身人生を歩んできた女性風俗写真家を紹介しよう。この取材では唯一、夫婦揃ってのインタビューである。
やさしさ溢れる夫のサホートか奥山まめを輝かせる
奥山まめは、つい数年前まで風俗とは全く関係のない仕事に従事していた。大学で資格を取得し、卒業後に理学療法士となった。理学療法士とは、病気やケガ、加齢などによって身体の機能が低下した人に対し、運動療法や物理療法を用いて日常生活を送るためのサポートをする専門職のこと。要は、歩けるようになるためのリハビリテーションを行うなどの仕事だ。
2017年、まめはたーきーと出会う。たーきーは当時、介護職員をし、トレーナーや整体師の活動も行っていた。共通の知り合いである男性理学療法士を通じて、会うこととなった。当初、話を持ちかけられていたまめはなんとなく苦手意識があり、会うのを躊躇していたが、会ってみるとまめの一目惚れだった。付き合って1年で結婚した。
順風満帆の新婚生活かと思いきや、まめには悩みがあった。約9年間働いていたものの、職場での陰湿ないじめ、パワハラなどを受け続け悩んでいたのである。たーきーは語る。
「結婚するまではさまざまな仕事をしていましたが、あまり安定していなかった。それが結婚を機にリハビリ特化型の施設で正社員として採用された。それでも低い賃金で、妻に助けてもらい続けていました。職場環境が改善しないなかで苦しむ妻を見て、『つらかったら辞めてもいいんだよ』と話をしました」
夫の言葉に背中を押され、まめは退職する。2020年10月だった。次の仕事は何も決めていなかったが、早く会社から抜け出したかった。辞めてから、ふと思いついたのがカメラだった。
友人たちと遊びに出かけると、まめは写真を撮っていた。皆から「うまいね」と褒められていた。
「どこまでできるか分からないけど、カメラを仕事にしてみよう」
そう思い、まめは約100万円を投じてキヤノン5D Mark犬篁圧咫⊂般栖鏘颪覆謬〆牋貅阿鮃愼した。独立当初、縁あって起業家のSNS写真を撮ったり、町おこし関連の仕事も手がけるようになった。ところが、まめの頭のなかにふとしたことが思い浮かんだ。夫・たーきーのヌード撮影だった。
「彼は元ダンサーで、身体がキレイだと思っていました。だから写真を撮ってみようって」
その妻の思いにたーきーは応えた。
「写真を他人に見られることへの抵抗はありませんでした。僕自身、トレーナーとしての仕事も始めていて、彼女は僕をプロデュースする気持ちもあり、撮りたいと言ってくれた」
まめは、たーきーにメイクを施し、ポージングの指示も細かに出した。元理学療法士として、人間の身体の部位は熟知している。それをどのようにしたら、より良く見えるのか。写真映えするのかが分かっていたのだ。しかし、まめの欲求は夫のヌードに留まらなかった。
「女性のヌードが撮りたい」
そう思い始めたまめは、知り合いのセックスカウンセラー、夏目江理(なつえり)に相談する。
セックスカウンセラーとは、セックスレス、性交痛、妊活、パートナーとの関係性など、恋愛や性生活全般の悩みについて相談を受け、サポートをする専門家のことだ。当然、既婚、未婚にかかわらず女性とのネットワークが幅広い。
そこから夏目と二人三脚で始めたのが、「ラブホ撮影会」だった。ラブホテル──通称ラブホは、「風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)」に基づいて営業されるホテルのこと。2時間、3時間の休憩と宿泊が基本だが、比較的安価な料金設定をしているため、回転率を上げないと利益が出にくい収益構造となっている。利用率が下がっていたことから、各ラブホでは「女子会プラン」を設定。女子だけで平日の昼間6時間などでの利用について安い料金で提供し出していた。ここに目をつけ、撮影会を組んだのである。
独身OLや主婦などとともに、風俗嬢も参加していた。風俗嬢たちとの会話では、「自分だけが浮いているって自覚しています」と、まめは笑う。それでも「お店のパネル写真に使いたい」「男性カメラマンだと緊張してしまうのでありがたい」といった声を聞き、風俗嬢たちとの距離を縮めていくなかで、2024年に風俗写真家を名乗るようになった。
「風俗嬢の皆さんにはそれぞれ思いがある。それに立ち入ることはありません。それよりも第一線で自分の身体を使って見せたり、価値を提供する道って、ダンサーやアスリートといったパフォーマーと変わらないと感じていて、私はリスペクトしています。それを撮る側の私は、理学療法士やトレーナーの立場と同じようだと感じています。夫のヌードを撮りたいと思った気持ちと、私のなかで違いはないんです」
そのうえで、「男性は自分の見せたい筋肉の部位を知っていて、そこをアピールしたがる傾向があります。一方で女性は、コンプレックスを抱いている部分を写さないでほしいと言う人が多い」と、まめは語る。妻の顔を穏やかな表情で見守るたーきー。これからも夫は妻をさりげなくサポートしていくのだろう。
しかし風俗写真家としてデビューを果たした2024年の秋、まめは妊娠。2025年夏、めでたく第一子を出産した。しばらく休業状態が続き、9月時点でも10分ほどの歩行にもかかわらず全身筋肉痛に見舞われるほど体力が落ちた。それでも11月に現場復帰した。ラブホ女子会撮影の新星の活躍はこれからだ。
(山田 厚俊/Webオリジナル(外部転載))