読売テレビ(電子版)は8月14日、「【独自解説】すすきの頭部切断殺人、父親は『“ヘリコプターペアレント”の典型』!?殺人容疑で親子3人再逮捕も黙秘続けるのは、『母親守るため』か…犯罪心理学者が分析」との記事を配信した。ワイドショー「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系列)の放送内容をネット版の記事に編集したものだ。
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【写真】瑠奈容疑者とも「女装姿」で会ったとされる被害者のセクシーショット 札幌市・ススキノで殺害された会社員の男性の首が切断された事件で、北海道警は8月14日、無職の田村瑠奈容疑者(29)と父親で医師の修容疑者(59)、母親でパート従業員の浩子容疑者(60)の3人を殺人容疑で再逮捕した。担当記者が言う。
田村修容疑者(本人のSNSより)「捜査で明らかになってきたのは、家族3人が共謀して1人の男性を殺害したという、通常では考えられない経緯です。娘と父親は市内の量販店などで、ナイフ、ノコギリ、スーツケースなど犯行に必要なものを買いそろえ、母親も殺害計画は把握していました。事件当日は父親が娘を車で送り、犯行後は一緒に逃走。娘が被害者の頭部を自宅に持ち帰ると、父親は大量の氷を購入して、保存をサポートしていたと見られます」「ミヤネ屋」は、今年の5月下旬、瑠奈容疑者と被害者がススキノのダンスクラブで“初めて会った”とされる際の映像を入手したとして放送した。その映像から、修容疑者もクラブに入店していたことが明らかになった。「動画には瑠奈容疑者と被害者が親密そうに抱き合う様子などが記録されていました。それを修容疑者が少し離れたところから見守る様子も映っていたのです。番組に出演した犯罪心理学者の出口保行氏は感想を求められ、『正にヘリコプターペアレントの典型だと思いました』と指摘しました」(同・担当記者)子供の入社式に来る親「ヘリコプターペアレントとは初耳だ」という方も多いだろうが、ネットで検索すると多数の記事が表示される。「一説によると、アメリカ人の医師が1990年に出版した教育書の中で、造語として記載されたと言われています。上空を旋回するヘリコプターのように常に子供を見守り、何かあると急降下して事態に介入。要するに、極端な過保護というわけです。モンスターペアレントに似ていますが、こちらは我が子のために学校などを攻撃し、過剰な要求を突きつけたりします。一方のヘリコプターペアレントは、我が子の保護を最優先にする傾向があります」(同・担当記者) 新聞記事のデータベースで検索したところ、ヘリコプターペアレントという言葉が登場したのは2008年5月、朝日新聞の夕刊に掲載された「過保護な親、大学にも 少子化で?顧客満足求める? 教科書どこで買う…」という記事が最初のようだ。「この頃から大学では『子供にどの科目を履修させればいいのかを親が電話で聞いてくる』、『子供が休講すると親が「大学生のふりをするので、子供の代わりに自分に補講を行ってほしい」と頼んできた』といった事例が目立つようになりました。子離れができていない親を新聞は奇異なものとして報じ、その際にアメリカ発のヘリコプターペアレントという造語を紹介したわけです。こうした大学生と親が就職活動の時期を迎えると、今度は『会社説明会や就職試験に親がついてくる』、『子供と一緒に親も入社式に参加しようとした』といった記事が紙面を賑わすことになりました」(同・担当記者)不安や抑うつの増加 今でもネット上ではヘリコプターペアレントの記事が数多く配信されている。だが、2010年代の新聞記事とは内容が異なるようだ。「当時の新聞記事は、過保護な親に対する違和感を伝えるものが大半でした。ところが現在は、『あまりに過保護だと虐待と同様の悪影響を子供に与える』という研究データを紹介した記事が目立ちます。臨床心理士などの専門家がヘリコプターペアレントの問題点を指摘し、警鐘を鳴らすという記事も少なくありません」(同・担当記者) 過保護は児童虐待と同じというのは驚きだが、今年2月、アメリカのアトランティック大学心理学部がその研究結果を発表している。 この研究によると、アメリカではここ数十年間、親のいない場所で子供が遊ぶ機会が減っているという。親から離れて自由な時間を過ごすことで子供は自立心を獲得すると考えられている。友達と一緒に遊べば友情を実感する。ケンカも貴重な経験だろう。 ところが、ヘリコプターペアレントの増加に伴い、アメリカの子供は「他者からの信頼感」や「自分自身の責任感」を認識する機会を喪失。その結果、高いレベルの不安や抑うつなどに悩まされる子供や青年が増えているという。「子供は失敗からも学習します。間違えれば反省しますし、挫折すれば別の道を模索したり、再挑戦したりします。ところが、ヘリコプターペアレントは我が子の失敗を極端に恐れ、何かあるとすぐに介入します。これは子供の貴重な成長の機会を奪うことになるので、虐待に等しい問題行動だと考えられるようになったのです」(同・担当記者)不登校や引きこもりの原因 イギリスの大学が行った調査によると、ヘリコプターペアレントによって育てられた子供は、いじめのターゲットにされる確率が上がるという。「ヘリコプターペアレントは常に子供を監視し、何かあると飛んできます。これは成長してからも幼児扱いされることを意味します。その結果、子供は自分に対して肯定的な評価を下すことができなくなるのです。『いつまでも親に助けてもらわなければならない自分には価値がない』と思い込み、そうした自尊感情の低い状態に、いじめっ子がつけ込んでくるわけです」(同・担当記者) 日本で不登校児の支援を行っている団体も「ヘリコプターペアレントは子供の自尊心に悪影響を与え、不登校や引きこもりの原因となり得る」と注意を呼びかけている。「多くのメディアが『瑠奈容疑者は両親に溺愛され、過保護だった』と伝えています。犯罪心理学者の出口氏が指摘した通り、少なくとも修容疑者がヘリコプターペアレントだった可能性は高いでしょう。一家3人で殺害計画を共有し、父親のサポートを受けながら娘が犯行に及ぶという常人には理解できない行動も、ヘリコプターペアレントという観点から見ると読み解けることが増えそうです」(同・担当記者)医師としてのアドバイス 共同通信は16日、「血痕付着のレインコート押収 返り血対策か、札幌遺体切断」との記事を配信、YAHOO!ニュースのトピックスに転載された。「このレインコートは修容疑者が購入したと見られます。瑠奈容疑者は犯行時、返り血を浴びないよう父親が準備したレインコートを着用し、男性を後ろ手に縛ってナイフで刺しました。首元を複数回刺したことが直接の死因で、肺近くにまで達した傷もありました。さらに、瑠奈容疑者は男性を襲う様子を動画で撮影していたのです」(同・担当記者) もし瑠奈容疑者が単独犯だとしたら、これほど入念な殺害計画を練り上げ、実行することはできなかったのではないだろうか。「重要なのは修容疑者が医師だということです。血が苦手で精神科医になったというエピソードが報じられましたが、外科医ではなくとも医師が人間の体について一般の人より深い知識を持っているのは言うまでもありません。被害者を殺害し頭部を切断するにはどうしたらいいか、医師としての知見を娘に伝えた可能性があります」(同・担当記者)母親の供述 瑠奈容疑者と被害者との間でトラブルが発生し、一家3人が「殺害するより方法はない」と決心した──これが殺害事件の核心だとする報道も散見される。 この見立てが事実だとすれば、修容疑者はトラブル解決のために娘が人を殺めることを容認したどころか、積極的にバックアップしたことになる。まさに究極のヘリコプターペアレントと言えるだろう。「修容疑者は精神科医として高く評価されていました。しかし、どれほど立派な精神科医だったとしても、立派な父親であったかどうかは別問題です。そして、修容疑者が瑠奈容疑者に対して、親戚を含む相当数の知人が『過保護だった』と口を揃えたという事実は大きいでしょう。他人の子供なら精神科医として冷静な判断ができても、実子だと目が曇ってしまうこともあったのではないでしょうか」(同・担当記者) STVニュース北海道(電子版)は17日、「逮捕の母親『娘の犯行止められなかった』 スマホには『すすきの 殺人』の検索履歴 首切断事件」との記事を配信し、YAHOO!ニュースのトピックスに転載された。 記事によると、浩子容疑者は道警の取り調べに対し「娘の犯行を止めたかったが、止められなかった」と話したこともあったという。今後の捜査が注目されるが、ひょっとすると浩子容疑者は、修容疑者ほどのヘリコプターペアレントではなかったのかもしれない。 現在、娘、父、母の3容疑者は、殺人容疑について否認や黙秘をしているという。【参考記事】◆子の決断力奪う親 「ヘリコプターペアレント」日本でも深刻化(産経新聞:2010年11月1日朝刊)◆〈解〉ヘリコプターペアレント(読売新聞:2011年9月9日朝刊)◆子どものメンタルヘルス問題、原因は親の過干渉?(ヘルスデーニュース:2023年3月24日)◆過保護はどうしていけないの?(All About:2013年7月17日/佐藤めぐみ氏の署名記事)デイリー新潮編集部
札幌市・ススキノで殺害された会社員の男性の首が切断された事件で、北海道警は8月14日、無職の田村瑠奈容疑者(29)と父親で医師の修容疑者(59)、母親でパート従業員の浩子容疑者(60)の3人を殺人容疑で再逮捕した。担当記者が言う。
「捜査で明らかになってきたのは、家族3人が共謀して1人の男性を殺害したという、通常では考えられない経緯です。娘と父親は市内の量販店などで、ナイフ、ノコギリ、スーツケースなど犯行に必要なものを買いそろえ、母親も殺害計画は把握していました。事件当日は父親が娘を車で送り、犯行後は一緒に逃走。娘が被害者の頭部を自宅に持ち帰ると、父親は大量の氷を購入して、保存をサポートしていたと見られます」
「ミヤネ屋」は、今年の5月下旬、瑠奈容疑者と被害者がススキノのダンスクラブで“初めて会った”とされる際の映像を入手したとして放送した。その映像から、修容疑者もクラブに入店していたことが明らかになった。
「動画には瑠奈容疑者と被害者が親密そうに抱き合う様子などが記録されていました。それを修容疑者が少し離れたところから見守る様子も映っていたのです。番組に出演した犯罪心理学者の出口保行氏は感想を求められ、『正にヘリコプターペアレントの典型だと思いました』と指摘しました」(同・担当記者)
「ヘリコプターペアレントとは初耳だ」という方も多いだろうが、ネットで検索すると多数の記事が表示される。
「一説によると、アメリカ人の医師が1990年に出版した教育書の中で、造語として記載されたと言われています。上空を旋回するヘリコプターのように常に子供を見守り、何かあると急降下して事態に介入。要するに、極端な過保護というわけです。モンスターペアレントに似ていますが、こちらは我が子のために学校などを攻撃し、過剰な要求を突きつけたりします。一方のヘリコプターペアレントは、我が子の保護を最優先にする傾向があります」(同・担当記者)
新聞記事のデータベースで検索したところ、ヘリコプターペアレントという言葉が登場したのは2008年5月、朝日新聞の夕刊に掲載された「過保護な親、大学にも 少子化で?顧客満足求める? 教科書どこで買う…」という記事が最初のようだ。
「この頃から大学では『子供にどの科目を履修させればいいのかを親が電話で聞いてくる』、『子供が休講すると親が「大学生のふりをするので、子供の代わりに自分に補講を行ってほしい」と頼んできた』といった事例が目立つようになりました。子離れができていない親を新聞は奇異なものとして報じ、その際にアメリカ発のヘリコプターペアレントという造語を紹介したわけです。こうした大学生と親が就職活動の時期を迎えると、今度は『会社説明会や就職試験に親がついてくる』、『子供と一緒に親も入社式に参加しようとした』といった記事が紙面を賑わすことになりました」(同・担当記者)
今でもネット上ではヘリコプターペアレントの記事が数多く配信されている。だが、2010年代の新聞記事とは内容が異なるようだ。
「当時の新聞記事は、過保護な親に対する違和感を伝えるものが大半でした。ところが現在は、『あまりに過保護だと虐待と同様の悪影響を子供に与える』という研究データを紹介した記事が目立ちます。臨床心理士などの専門家がヘリコプターペアレントの問題点を指摘し、警鐘を鳴らすという記事も少なくありません」(同・担当記者)
過保護は児童虐待と同じというのは驚きだが、今年2月、アメリカのアトランティック大学心理学部がその研究結果を発表している。
この研究によると、アメリカではここ数十年間、親のいない場所で子供が遊ぶ機会が減っているという。親から離れて自由な時間を過ごすことで子供は自立心を獲得すると考えられている。友達と一緒に遊べば友情を実感する。ケンカも貴重な経験だろう。
ところが、ヘリコプターペアレントの増加に伴い、アメリカの子供は「他者からの信頼感」や「自分自身の責任感」を認識する機会を喪失。その結果、高いレベルの不安や抑うつなどに悩まされる子供や青年が増えているという。
「子供は失敗からも学習します。間違えれば反省しますし、挫折すれば別の道を模索したり、再挑戦したりします。ところが、ヘリコプターペアレントは我が子の失敗を極端に恐れ、何かあるとすぐに介入します。これは子供の貴重な成長の機会を奪うことになるので、虐待に等しい問題行動だと考えられるようになったのです」(同・担当記者)
イギリスの大学が行った調査によると、ヘリコプターペアレントによって育てられた子供は、いじめのターゲットにされる確率が上がるという。
「ヘリコプターペアレントは常に子供を監視し、何かあると飛んできます。これは成長してからも幼児扱いされることを意味します。その結果、子供は自分に対して肯定的な評価を下すことができなくなるのです。『いつまでも親に助けてもらわなければならない自分には価値がない』と思い込み、そうした自尊感情の低い状態に、いじめっ子がつけ込んでくるわけです」(同・担当記者)
日本で不登校児の支援を行っている団体も「ヘリコプターペアレントは子供の自尊心に悪影響を与え、不登校や引きこもりの原因となり得る」と注意を呼びかけている。
「多くのメディアが『瑠奈容疑者は両親に溺愛され、過保護だった』と伝えています。犯罪心理学者の出口氏が指摘した通り、少なくとも修容疑者がヘリコプターペアレントだった可能性は高いでしょう。一家3人で殺害計画を共有し、父親のサポートを受けながら娘が犯行に及ぶという常人には理解できない行動も、ヘリコプターペアレントという観点から見ると読み解けることが増えそうです」(同・担当記者)
共同通信は16日、「血痕付着のレインコート押収 返り血対策か、札幌遺体切断」との記事を配信、YAHOO!ニュースのトピックスに転載された。
「このレインコートは修容疑者が購入したと見られます。瑠奈容疑者は犯行時、返り血を浴びないよう父親が準備したレインコートを着用し、男性を後ろ手に縛ってナイフで刺しました。首元を複数回刺したことが直接の死因で、肺近くにまで達した傷もありました。さらに、瑠奈容疑者は男性を襲う様子を動画で撮影していたのです」(同・担当記者)
もし瑠奈容疑者が単独犯だとしたら、これほど入念な殺害計画を練り上げ、実行することはできなかったのではないだろうか。
「重要なのは修容疑者が医師だということです。血が苦手で精神科医になったというエピソードが報じられましたが、外科医ではなくとも医師が人間の体について一般の人より深い知識を持っているのは言うまでもありません。被害者を殺害し頭部を切断するにはどうしたらいいか、医師としての知見を娘に伝えた可能性があります」(同・担当記者)
瑠奈容疑者と被害者との間でトラブルが発生し、一家3人が「殺害するより方法はない」と決心した──これが殺害事件の核心だとする報道も散見される。
この見立てが事実だとすれば、修容疑者はトラブル解決のために娘が人を殺めることを容認したどころか、積極的にバックアップしたことになる。まさに究極のヘリコプターペアレントと言えるだろう。
「修容疑者は精神科医として高く評価されていました。しかし、どれほど立派な精神科医だったとしても、立派な父親であったかどうかは別問題です。そして、修容疑者が瑠奈容疑者に対して、親戚を含む相当数の知人が『過保護だった』と口を揃えたという事実は大きいでしょう。他人の子供なら精神科医として冷静な判断ができても、実子だと目が曇ってしまうこともあったのではないでしょうか」(同・担当記者)
STVニュース北海道(電子版)は17日、「逮捕の母親『娘の犯行止められなかった』 スマホには『すすきの 殺人』の検索履歴 首切断事件」との記事を配信し、YAHOO!ニュースのトピックスに転載された。
記事によると、浩子容疑者は道警の取り調べに対し「娘の犯行を止めたかったが、止められなかった」と話したこともあったという。今後の捜査が注目されるが、ひょっとすると浩子容疑者は、修容疑者ほどのヘリコプターペアレントではなかったのかもしれない。
現在、娘、父、母の3容疑者は、殺人容疑について否認や黙秘をしているという。
【参考記事】◆子の決断力奪う親 「ヘリコプターペアレント」日本でも深刻化(産経新聞:2010年11月1日朝刊)◆〈解〉ヘリコプターペアレント(読売新聞:2011年9月9日朝刊)◆子どものメンタルヘルス問題、原因は親の過干渉?(ヘルスデーニュース:2023年3月24日)◆過保護はどうしていけないの?(All About:2013年7月17日/佐藤めぐみ氏の署名記事)
デイリー新潮編集部