はしか(麻疹)の感染報告が各地で相次いでいる。
病名にはなじみが深いはしかだが、空気感染などを通じ極めて高い感染力を持つ感染症だ。マスクでは防ぐことができず、予防にはワクチン接種が最も有効とされる。しかし接種率は減少傾向にあり、専門家は感染拡大に懸念を示している。
新幹線に乗っただけで…
「発熱や発疹など疑わしい症状がある場合は必ず受診前に医療機関に連絡し、公共交通機関の利用を控えてほしい」。加藤勝信厚生労働相は5月16日の閣議後会見で、はしかの感染力の強さに危機感を示した。
海外渡航歴のある茨城県の男性が4月27日に、はしかと診断。5月10~11日には東京都の男性と女性それぞれの感染が確認された。
3人は4月23日に新神戸から東京まで同じ新幹線の車両に乗り合わせていた。5月15日には、その神戸市でも新たに1人の感染者が出た。
インフルの数倍の強さ
感染力の強さを示す指標で、1人の患者から感染する人数を示す「基本再生産数」は、インフルエンザや新型コロナウイルスの従来株が2~3であるのに対し、はしかは12~18。ナビタスクリニック(本部・東京都立川市)の内科医、久住英二さんは「同じ空間にいたらほぼ感染する」と指摘する。
免疫を持っていない人が感染すると、10~12日間の潜伏期を経てほぼ100%が発症。発熱や発疹などの症状を伴い、肺炎や脳炎などの合併症から死に至ることもある。
感染予防にはワクチン接種が有効だが、厚労省によると、令和2年度の接種率は98・5%だったのに対し、3年度は93・5%に低下。集団免疫の維持に必要とされる95%を下回っている。背景には新型コロナウイルス禍で接種そのものが滞ったほか、ワクチンに不信感を抱く人が増えたことも考えられるという。
2回接種を
ただ、過去にワクチンを接種したことがあるからといって安心はできない。宮城大看護学群の風間逸郎教授(病態生理学)によると、実際に感染して獲得した免疫が終生有効なのに対し、ワクチン接種の場合は徐々に低下する。「1回のみの接種では、徐々に効果が下がりやすくなる。2回接種により免疫を増強させる必要がある」という。
今後も海外と行き来する人の増加が見込まれ、感染が広がることも考えられる。風間教授は「はしかの流行地の情報は外務省などのホームページにも掲載されている。疑わしい症状が出た場合はすぐに医療機関に電話で伝え、指示に従ってほしい」と訴えた。(本江希望)