「女性はもっと怒っていい」トイレ行列なぜ起きる? 941か所の便器数を調べて分かった男女差

日ごろからトイレの行列に苦しむ女性は少なくありません。男女で行列に差があるのはいったいなぜなのか?独自に調査する女性を取材しました。
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行政書士 百瀬まなみさん(60)「安心して排泄ができる条件が男女間で整っていない。女性はもっと怒っていいんです」
こう話すのは、東京都に住む百瀬まなみさん。3年前に訪れた岡山の駅で、女性用トイレの行列に遭遇したといいます。
百瀬さん「もう早くしてくれよと思って。案内板を見たら女性が『個室4』に対して、男性が『個室3+小便器4』だった。瞬間的に頭が沸騰して。女子トイレが少ないからこんなに混むんだと」
この「怒り」をきっかけに、コンサートや仕事などで立ち寄った駅や商業施設など941か所で、案内板などを参考に便器の数を調べた百瀬さん。すると、大半のトイレで女性用より男性用が多く設置されている現状が浮き彫りになりました。
百瀬さん「941か所を調べて、53か所が女子トイレの方が多かった」
平均で男女を比べると男性用が女性用の1.72倍。女性用の便器が多かったトイレは全体のわずか5%でした。
60代女性「今日も列ができていましたよ。そこしかないから。みんな並んでいましたよ」
50代女性「行こうかなと思ったら行列で、それだけで『あっ』ってなってそのまま出ちゃうこともありますね」
60代女性「バックとか持っているから時間がかかっちゃう。男の人は持っていないからすぐぱってできる」「便器拭いたりとかね」「するする」「1対3ぐらいの割合で女性の方を広くしてもらうとか」
50代男性「気にしたことはないです。男性は早いと思うんですけど、女性は色々大変だと思う」
40代男性「妻と買い物に行っても全然戻って来ないので時間かかるイメージです。女子トイレは見たことないですけど、女性はおそらく全部個室で、色々時間がかかるのかなと思うので。そもそも数が少ないのかな」
国土交通省の調査では、駅のトイレで不便や不満を感じる点について『行列に並ばなければいけない』と答えた人は男性が31.3%に対し女性は44.0%。
大規模商業施設に至っては、男性は15.5%に対し女性は47.6%と、男性の3倍以上でした。
この問題に政府も動き出しています。今年6月に閣議決定した「骨太の方針」に『女性用トイレの利用環境の改善』を盛り込んだのです。
現在、職場など事業所のトイレの設置については、厚生労働省が労働安全衛生法に基づく規則を定めています。
例えば男女それぞれ65人が働いている職場の場合、男性用は「個室2つ、小便器3つ」。女性用は「4つ」です。
その一方、商業施設や駅では各事業者の判断に委ねられています。
この状況に対し、日本トイレ協会の山本理事は「時代のニーズとズレが生じている」と分析します。
日本トイレ協会 山本浩司理事「女性トイレの場合は絶対数が足りない。その多くの原因は女性の社会進出が大きく寄与している」
平均的なトイレの利用時間は男性が37.7秒、女性は93.1秒で、女性は男性の2.5倍かかるとも言われています。
山本理事「『快適なトイレ』というと、『きれいなトイレ』を求めると思うが、トイレがなくて並んでいるというのは不快につながるので、そうした不快な要素を取り除くというのも『快適』の中の一つ」
このような中、トイレ休憩で立ち寄ることも多い、高速道路のサービスエリア(SA)では改善が進んでいます。
北熊本SA(下り)では、利用率のデータを集めて必要な個数を設置しました。男女ともに10以上増やして、それぞれ27に揃えました。女性用トイレに行列ができることは、ほぼないといいます。
ネクスコ西日本施設第1課 新村祐太さん「このエリアに必要な個数はいくつかと計算した上で改修しているので、ここのSAに関しては女子トイレ男子トイレ同数程度の規模」
これまでは、トイレの奥が使用されているか分からず、それが原因で行列になることもありました。
そこで入り口にモニターを設置し、ドアにセンサーを付けることでトイレの使用状況を「見える化」し、パウダーコーナーも完備しました。
そこにはこのような狙いがあるといいます。
新村さん「パウダールームを設けることで回転率が上がる効果がある。トイレ内で化粧をしている機能は別で持たせる必要があると考えているので、今回このような改修になりました」
百瀬さんは、“トイレの平等”について次のように考えています。
行政書士 百瀬まなみさん「人生でどれだけトイレで待って苦しい時間を過ごしているのかと思うと腹立たしい。広さが平等ということではなく、個数の平等を目指してほしい」
5大ドームの一つ、福岡の「みずほPayPayドーム」では女性客が多いイベントの際には、一部の男性用トイレを女性用に切り替える工夫をしています。
熊本県内では、2019年に完成した熊本城ホールは、一時避難場所としての役割もあるため、194の女性用トイレを設置しました。完成から57年が経つ市民会館と比べても、その多さは一目瞭然です。
【熊本城ホール】男性用:171 女性用:194【市民会館シアーズホーム夢ホール】男性用:43 女性用:48
そして公共性の高い建物としては、熊本市役所の本庁舎の建て替えが計画されています。これについて市はどう考えているのでしょうか。
大西一史市長は「女性用トイレの比率を増やす。きちんと予算をつけて快適な環境を整え、防災上も優れた施設にするため対応していく」としています。