〈ラーメン二郎 全45店舗を3周達成しました(祝) おそらく女性初の快挙かな!? 気づいたらたくさん食べていました。これからもラーメン二郎を愛しています〉 ──昨年12月に福岡県でオープンしたばかりの「ラーメン二郎 朝倉街道駅前店」の前に立つスレンダーな女性、画家・新チトセさん。彼女がXで6月中旬に発信した投稿が大きな注目を集めた。
「ラーメン二郎」といえば、モヤシやキャベツなどの野菜や細かく刻まれたニンニク、肉厚のチャーシューなどが丼からこぼれ落ちるほど盛られた暴力的な重量と「もはや“二郎”というジャンル」と言わしめるほどの中毒性から人気を確立してきたラーメン店だ。提供される前に「ニンニク入れますか?」と聞かれ、客が「ヤサイ、ニンニク、アブラ、カラメ」などと呪文のようなコールでトッピングを伝えるのも特徴的だ。
そんな“二郎”の魅力に取り憑かれ、北は北海道、南は福岡県まで、全国各地に出店している「ラーメン二郎」を“3回以上”来訪したことがあるという新チトセさんが、全店制覇の裏側を語った。【前後編の前編】
* * *コアなファンが多い一方、初心者からハードルが高いイメージをもたれている「ラーメン二郎」。7月4日には、府中店が「お食事は最大で20分以内にお願いします」という張り紙を掲示して批判コメントが殺到し、店舗側が謝罪する事態に発展した(※張り紙は撤去済み)。ジロリアン(二郎ファンを指すことが多い)である、新チトセさんは騒動を振り返り、こう語る──。
「20分もあれば食べ切れると思うので、時間に関する心配はいらないと思います。二郎はロット(席についた複数人の客に同時に提供されるラーメンの杯数)で回転率を管理しているお店も多いので、完食が遅い人がいることで“ロットが乱れる”、つまり待ち時間が増えるのを懸念している人が多いのでしょう。
ジロリアンの方のなかには『女性は食事が遅い』と思う人が多いのかもしれませんが、二郎は麺の量を減らせるので、心配な方は自分が食べられる量を頼めば問題ないと思います!」
若く見た目も華奢な新チトセさんが「ラーメン二郎」に出会ったのは、5年以上前のことだ。当時通っていた美大の近くに店を構えていた「ラーメン二郎 相模大野店」で麺をすすり、その味に衝撃を受けたのだという。
「一口食べて、『なんだこの美味しい食べ物は!』って。『一口目のインパクト』がとにかく強烈で、それからは二郎ばかり食べるようになりました。初めは『ちょっと怖いな』と思いながら行ったんですけど、全然怖くなかった。むしろ、そのギャップに惹かれました。
ルールさえ覚えれば、安くて美味しいし、量もある。一口食べたときの衝撃をもう一度味わいたいという思いから、そのあとすぐ『新宿歌舞伎町店』や『目黒店』に行って、他にもいろんな店舗に行くうちに、それぞれ味が違うことに気づきました。
二郎は特に自家製麺にこだわるお店が多く、麺そのものから店主のラーメンへの情熱や魂が伝わってくるんです」
その“二郎愛”は並々ならぬもののようで、毎年100杯を超える二郎を食べているという。 最初は関東圏の店舗を巡るうちに、その魅力にハマってしまったとのことだが、全店制覇という活動を始めたキッカケはなんだったのか。
「セクシー女優の桃乃木かなちゃんが、二郎の全店制覇を達成した報告を見て『面白そう!』と思って、私も始めました。関東圏のお店は電車で行けるのでいいんですけど、たとえば『札幌店』や『会津若松駅前店』などは計画を立てないとなかなか訪問できないので、最初はなかなか困難続きでした」
二郎のみならずラーメン全般が大好きなようで、今年は2025年上半期だけですでに二郎とそれ以外合わせて100杯を超えるラーメンを完食しているという。平均すると2日に1杯以上のペースになるのだが、「さすがに毎日のように食べているわけじゃないですよ」と話す。
「どちらかというと、一日で何杯も食べる日があるのでこの数字になった感じです。地方遠征にも行くんですけど、そのたびに『せっかくきたし、食べないともったいない!』って、たとえば博多ラーメンとかだと、昼、昼、晩で合計3回とか食べちゃうんです」
気になるのはその旅費だ。ほぼ日本列島を縦断するかたちになるが……。
「ラーメンは1000円くらいで食べられるし、そんなにお金をかけた記憶はないです。宿泊はカプセルホテルで、移動手段は夜行バスが多かった。とにかく日本中の二郎を食べたい一心で、節約しながら無理のない範囲で飛び回りました」
“二郎全店舗3周達成”という偉業を成し遂げた新チトセさん。日本各地を3周するというだけでもかなり時間と体力を使いそうなものだが、彼女の場合は、『人生でトータル何回食べたか』、つまり1回の遠征で2杯食べたら2周達成としてカウントしているという。
「昨年末にできた福岡県の『朝倉街道駅前店』の時は、3泊して2回食べました。プラス、オープン日にすでに1回食べに行っていたので3周達成することができました!」
ファンなら「せっかくなら何回も食べたい」という気持ちになるのは当然かも知れないが、逆に「せっかくなら他の物も食べたい」とはならないのだろうか。
「もちろんなりますが、二郎は同じ店舗でも時間帯によって味が違うことが大きな魅力だと感じているんです。『朝倉街道駅前店』も、夜と昼で味が違くて。昼食べた時は、店内にどことなく『三田本店(ラーメン二郎の本店)』の香りが漂っていて、まさにこの変化が二郎の醍醐味だと思いました」
他方、ラーメン二郎ばかり食べるようになったことで、「食事は1人ですることが多くなった」と語る新チトセさん。
「初めての二郎は友達と行ったのですが、2回目からはずっと1人で。もう友達は一緒に並んでくれなくなりました(笑)。例えば、電車で1時間ほどかかる『どこどこ店の二郎にランチ行こう!』って誘われたら、普通はイヤですもんね。
私自身も、約束してラーメン食べに行くのはあまり好きじゃない。たしかに、食べ終わったあとに居酒屋で飲みながら感想を話し合うのも楽しいですけど、やっぱり二郎は“1人で戦うもの”だと思っているので」
二郎をこよなく愛する新チトセさんだが、なんと好きが講じていつしか「ラーメン二郎」全店舗の油絵……もとい“脂絵”を制作するようになったという。続編ではラーメン画家としての活動と、体型や健康維持の秘訣について語っている。
(後編へつづく)