出かけると疲れるで、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:木村 香菜(医師)
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
せっかくの休みの日に出かけたのにも関わらず、疲れてしまうと感じることはありませんか。外出先で疲れたりや眠いと感じたりする原因にはさまざまなものがあります。中には、病気が隠れていることもあります。また、最近では外部からの刺激に対して強く反応する、HSP (Highly Sensitive Person)という心理的な特性についても耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。今回の記事では、出かけると疲れるという症状で考えられる原因や対処法について解説します。
出かけると疲れて眠くなる場合には、さまざまな原因が考えられます。例えば、十分な睡眠が取れていない不眠症や、不健康な生活習慣によって睡眠時間が足りていないなどがあります。他にも、睡眠時無呼吸症候群では夜間にしっかりとした睡眠が取れていないので、日中には眠気や疲れを感じる原因となります。その他には、鉄欠乏性貧血や慢性疲労症候群、甲状腺機能亢進症、糖尿病などが隠れていることもあります。出かけると疲れて眠くなる症状がみられる場合には、まずは夜眠れているかどうかをチェックするとよいでしょう。生活習慣の見直し、十分な休息をとりましょう。その上でも症状が強く、特に夜間のいびきや呼吸が止まっているような状況が疑われる場合には、一度耳鼻科などで睡眠時無呼吸症候群でないかどうかをチェックしてもらうようにしましょう。その他の場合にも、疲労感が長期間続く場合には、内科受診を検討しましょう。
休日に外出すると、普段以上に疲れることがあります。これには、先ほどのような病気が隠れている他にも、ストレスの蓄積や仕事での疲労が解消されていないことが原因である場合もあります。そのため、過労や慢性的なストレス、自律神経失調症などでも休日に出かけると疲れる症状を呈することが考えられます。また、近年ではHSP (Highly Sensitive Person)という言葉もSNSなどを中心に広く知られるようになっています。これは医学的な用語や病気ではありませんが、周囲の環境に対して敏感に反応する性格の方を指すようです。HSPの場合には、人混みなどに入ると疲れを感じやすいこともあるかもしれません。疲労の原因はさまざまなので、もし気になる場合にはかかりつけ医などで相談してみましょう。
妊娠初期に出かけると疲れる原因には、ホルモンバランスの変化、特にプロゲステロンというホルモンが大きく影響しています。また、胎盤の発達や胎児に血液を送り込むため、母体の血液量も増加します。これによって心拍数や呼吸数が速くなり、疲労感につながる場合もあります。妊娠初期の疲労が強い場合には、栄養をしっかりとり、こまめに休憩を取るなどの対応が考えらえます。また、散歩や昼寝を取り入れ、日中には水分をしっかりと取ると良いでしょう。妊娠初期の疲労感は、多くの場合緊急性が低いですが、もしも不安な点があれば、通院している産婦人科で相談してみましょう。
妊娠後期には、体重が増えることで日常生活にも体に負担がかかるようになります。そのため、出かけると疲れることがあります。また、お腹が大きくなるので、ぐっすり眠るのが難しくなり、睡眠不足になっている可能性もあります。妊娠後期に出かけると疲れる症状がある場合には、十分に休息を取り、日中には適度な運動をすると良いでしょう。妊娠28週以降には、横向きで寝ることをお勧めします。ただし、不眠にはうつ病が隠れている場合もあります。絶望感を覚える、以前楽しかったことに興味を失うなどの症状がある場合には、医師に相談するようにしましょう。
出かけると疲れて頭痛もある場合には、睡眠不足の他、片頭痛やウイルス感染症の可能性もあります。風邪やインフルエンザ、最近ではCOVID-19などの感染症では、疲労感と頭痛が症状となることが多いです。発熱や咳、喉の痛みなど他の症状も見られる場合には、内科受診をおすすめします。片頭痛は、激しい頭痛が現れる数日前から疲労感を感じることもあります。その他、一部の高血圧治療薬でも疲労感と頭痛の副作用が起こる場合があります。また、貧血や脱水、うつ病、女性の場合には月経前症候群などでも疲労と頭痛が現れる可能性があります。対処法としては、まずは水分や栄養、睡眠をしっかりと取り、カフェインの取り過ぎには注意しましょう。ただし、疲労感と頭痛が改善しない場合には、内科などで医師に相談してみましょう。
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
疲労感に対しては、生活習慣で改善する、あるいは緊急で医療機関へ受診する必要性は低い場合が多いです。しかし、疲労感あるいは倦怠感が強く、手足の痺れや麻痺が現れた場合には、脳卒中などの兆候であることがあります。早急に神経内科や脳神経外科を受診しましょう。場合によっては救急医療の受診も必要です。
息切れや胸の痛みがある場合頭痛や吐き気がある場合急激な体重減少や食欲低下がある場合
ここではMedical DOC監修医が、「出かけると疲れる」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
慢性疲労症候群は、体のさまざまな部位に影響を与え、長期にわたって症状が続く病気です。最も一般的な症状は極度の疲労です。その他にも、睡眠障害や思考力の問題、身体的・精神的な活動の後に症状が悪化するというものがあります。慢性疲労症候群の患者の中には、体の痛みや高熱、関節痛といったインフルエンザのような症状を呈する人もいます。慢性疲労症候群のはっきりとした原因はまだわかっていませんが、脳内の神経の炎症などが関与している可能性があるとされています。治療法は、内科的治療や精神科的治療などが行われます。それぞれの患者の症状に合わせ、漢方薬やビタミンC補充などを行います。特に長期間、強い疲労感を感じている人は、一度内科受診することをおすすめします。
糖尿病は、インスリンというホルモンが働かなくなり、血液中を流れるブドウ糖、つまり血糖値が高くなる病気です。膵臓の機能が低下することによるインスリンの分泌低下と、肥満などが原因でインスリンが効果を発揮しない場合があります。糖尿病では、高血糖状態になり、体が糖分をエネルギーとして十分に利用することができなくなります。また、尿の量も増え、脱水傾向になります。すると疲労感を感じることにつながります。糖尿病の治療は、血糖値を下げる薬の内服や、インスリン注射を行います。急激な体重減少や疲労感、喉の渇きなどの症状がある方や、健康診断で血糖値の異常を指摘された方は、内分泌内科を受診しましょう。
自律神経失調症は、自律神経という意思と無関係に体の状態をベストに保ってくれる神経の働きのバランスが崩れてしまった状態のことです。ストレスや生活習慣の乱れなどが影響しているといわれています。倦怠感や疲労感、熱っぽさ、痺れ、息切れ、動悸、めまい、頭痛、不眠、食欲不振などさまざまな症状が現れます。症状は長引くことが多いですが、ストレスとうまく付き合い、生活習慣を正すことで症状はかなり改善します。治療法としては、症状を抑えるための対症療法や、心理的なアプローチなどがあります。自律神経失調症が疑われる場合には、かかりつけ医などに相談してみましょう。定期的に通院することが大切です。
更年期障害は、閉経を挟んだ10年間(更年期)に現れる、身体的・精神的症状のことを指します。加齢に伴うエストロゲンの低下や、体の機能低下や社会環境の変化などが原因と考えられています。症状としては、のぼせや発汗、ほてり、イライラ感、不眠、抑うつ、関節症状、疲労感、めまい、動悸、息切れ、皮膚症状、などさまざまなものがあります。治療としては、ホルモン補充療法や漢方薬などがあります。生理不順になってきたことに加え、いろいろな症状が現れる場合には更年期障害の可能性があります。しかし、糖尿病や甲状腺機能低下症、メニエール病などの除外も必要です。気になる場合には、内科や婦人科などを受診するようにしましょう。
うつ病は、抑うつ性障害とも言われる、よくみられる精神障害の一つです。長時間にわたって気分が落ち込んだり、活動に対する喜びや興味が失われたりします。ゆううつな気分が少なくとも2週間、ほぼ毎日、1日中続きます。その他、集中力の低下や睡眠障害、強い疲労感、自殺願望などが他の症状として現れます。うつ病の第一の治療法は、心理療法です。症状が重い場合には、抗うつ薬の併用も考慮されます。もしゆううつな気分が続き、疲労感も強く、自分を傷つけるような衝動が現れるようであれば、早めに精神科や心療内科を受診しましょう。
出かけると疲れる場合には、まず十分な休息や睡眠を取るようにしましょう。また、健康的な生活習慣を心がけ、栄養バランスの取れた食事や適度な運動をしましょう。もしも疲労感や倦怠感の原因がわからない場合には、内科やかかりつけ医を受診するようにしましょう。貧血や糖尿病、甲状腺機能亢進症などの病気が隠れている場合もあります。
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「出かけると疲れる」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
木村 香菜(医師)
過労や睡眠不足、ストレスなどが主な原因と考えられます。また、体調不良や慢性疲労症候群、自律神経の乱れなども、外出時に疲労感を感じる原因となります。
木村 香菜(医師)
人ごみに出ると、多くの情報や刺激があります。それによって、通常よりも脳が過剰に働き、エネルギーを消耗しやすくなることもあります。また、物理的に他人と距離が近く、身動きが取りづらくなってしまうために疲労感を感じることもあるでしょう。
木村 香菜(医師)
疲労感の原因として、鉄欠乏性貧血があります。日常生活で、鉄分を積極的に摂取することが大切です。
出かけると疲れる症状がある場合には、まずは睡眠や休息が取れているかどうかを見直しましょう。生活習慣改善によっても疲労感が軽くならない場合には、鉄欠乏性貧血や睡眠時無呼吸症候群、あるいは慢性疲労症候群などの病気が隠れているケースもあります。また、まれではありますが強い疲労感・倦怠感とともに手足の麻痺などの症状がある場合には、脳卒中などの緊急対応が必要な病気の可能性もあります。今回の記事を参考にして、まずは十分な睡眠、休息、そして健康的な生活習慣を心がけましょう。
「出かけると疲れる」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
妊娠(初期・後期)
これらの診療科を参考に、症状が続く場合は適切な受診を検討すると良いでしょう。
「出かけると疲れる」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
眠気
息切れ
頭痛
手足のしびれ
食欲不振
体重減少
これらの症状が長く続く場合、身体的または精神的な健康問題が潜んでいる可能性があるため、医師に相談することをおすすめします。
うつ病|厚生労働省
慢性疲労症候群の病態機序とその治療|J-STAGE
自律神経失調症|日本臨床内科医会