前沢友作氏の資産会社、4億円の申告漏れを国税指摘…「養育義務のある子供たちの母親」に「社債利子」

衣料品通販サイト運営会社「ZOZO」(千葉市)の創業者・前沢友作氏(49)の個人資産管理会社が、東京国税局から2023年3月期までの4年間に計約4億円の申告漏れを指摘されていたことが関係者の話でわかった。
社債発行に伴う利子が知人に渡るスキーム(枠組み)を組んでいたが、同国税局は不当に税負担を減少させる目的があったとして、利払いの経費計上は認められないと判断したとみられる。(加藤哲大)
社債は民間の会社が資金調達のために発行する債券。満期に額面で償還されるまでの間、決められた利子が購入者に支払われる。一般的に国債よりも利回りが高いとされる。
関係者によると、申告漏れを指摘されたのは資産管理会社「グーニーズ」(東京都港区)で、前沢氏が100%の株を保有している。同社は21年3月期に数億円の社債を発行し、前沢氏の税理士が設立に関わった都内のコンサルティング会社が全額を購入。グーニーズはその後、社債の利子をコンサル会社に支払ったとして3年間で計約2億円の経費を計上した。
同国税局が税務調査したところ、グーニーズの社債購入後、コンサル会社が同額の社債を自社から発行し、前沢氏の知人が購入していたことが判明した。コンサル会社は知人に対し、グーニーズから受領した利子の大半にあたる金額の利払いをしていたという。知人は前沢氏からの低利の貸付金を、コンサル会社の社債を購入する際の原資にしていたとされる。
グーニーズからの利子の多くがコンサル会社を経由して知人に渡って所得となっていたことから、同国税局はグーニーズからの利払いは実質的に「寄付」だったと判断したとみられる。社債発行による資金調達も合理性に乏しく、利払い分の経費計上で不当に税負担を軽減させたとして、行為計算否認を適用し、申告漏れを指摘した模様だ。
知人に資金を直接渡した場合、最高で55%の贈与税を課される可能性がある。これに対し、社債の利払いの形をとれば約15%の源泉徴収で済むことから、同国税局は、前沢氏側が高額の税負担を回避するため、こうしたスキームを組んだ可能性があるとして調査したとみられる。
グーニーズは、利払いの不当な経費計上のほか、経理上のミスなどがあったとして計約4億円の申告漏れを指摘されたが、赤字などと相殺され、追徴課税は発生しなかったという。
最終的に利払いを受けた知人について、前沢氏側は読売新聞の取材に「(前沢氏に)養育義務のある子供たちの母親である女性」と説明。資金は養育費の趣旨だったという。グーニーズは「課税庁との見解の相違があったのは事実だが、複数の税理士のアドバイスに基づき、適正に修正申告を行った」としている。
前沢氏は19年9月、ZOZOの社長を退任。現在は24年2月設立の生活インフラ関連会社「カブ&ピース」(港区)の社長を務めている。グーニーズの取締役は昨年末に辞任した。
前沢氏のコメント「この度は申し訳ありませんでした。私は納税義務から逃げも隠れもいたしません。今後はより一層適切な納税を心がけて参ります。これからも、この大好きな日本で暮らし、社会の一員としての責任をしっかりと果たしていきたいので、引き続き税務処理につきましては、より厳正な指導を賜りたくお願い申し上げます」
◆行為計算否認=税務署長の判断で申告内容を否認し、法人税額などを国税当局が計算できるとする法人税法の規定。「税の負担を不当に減少させた」と認定すれば課税できることから「伝家の宝刀」と言われる。