先月5日、東京・板橋区の路上で横断歩道を渡っていた88歳の女性を乗用車ではねて死亡させ、そのまま逃走したとして51歳の男が逮捕されました。 ひき逃げなどの疑いで逮捕された板橋区の会社員・牧野利充容疑者(51)は、先月5日の午後1時半すぎ、板橋区の路上で、徒歩で横断歩道を渡っていた近くに住む塩井久美子さん(88)を乗用車ではねて死亡させ、そのまま逃走した疑いがもたれています。 警視庁によりますと、塩井さんは1人で歩いていたところ、牧野容疑者の乗用車にひかれて頭を強く打ち、事故から10日後に死亡しました。 防犯カメラなどの捜査で逮捕に至ったということで、牧野容疑者の乗用車の左前方部分には人とぶつかったような傷があったということです。 取り調べに対し、牧野容疑者は「歩行者にぶつかってはいません」と容疑を否認しています。
まさに「長男教」の犠牲者。祖母に跡継ぎの呪いをかけられた42歳長男社長、弟たちが驚愕した「秘密の散財」
「長男教の親に育てられた子供は“家族の面倒をよく見るリーダー”という役割を強要されがちです。家の中でも威厳を保たねばならず、それが心の負担になり心の病になることもあるのです」こう語るのは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん。彼女は、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。
山村さん連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにしていったのかも含め、さまざまな事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮をしながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介していく。
今回山村さんのもとに相談にきたのは、実家の会社役員である38歳の亮次さん(仮名)と同じくその会社の役員である34歳の弟だ。話を聞くと、会社を継いだ42歳の兄はまさに「長男教」の犠牲者だった。亮次さんの家業は、特殊な薬剤を扱う社員100人規模の中小企業だ。4代前の先祖が大正時代に創業し、代々長男が会社を継いできた。それゆえに長男を過度に尊重する家風だったのだ。しかし長男が社長を継いで5年で、業績が大きく悪化していた。それゆえに素行調査をすることを依頼してきたのだ。
前編では兄が受けてきた「長男教」のリアルを具体的にお伝えした。長男は気の毒ではあるが、それで会社がつぶれては大変だ。果たして誰にとっても良い形に収まることはできるのか。
兄は長男として祖母の希望に従って育てられました。兄の母は、祖母と折り合いが悪く、兄が幼い頃に家を出ており、亮次さんと弟とは母親が違います。兄は祖母から特別扱いをされてきましたが、いい学校に行けというプレッシャーにもさらされてきました。しかし中学受験、高校受験、大学受験どれも志望校に行くことはできなかったのです。むしろ放置されてのびのび育った亮次さんと弟は中高一貫校に合格し、大学も希望の学校に行ってメガバンクと大手商社に就職するというエリート街道を歩んでいます。脅迫的に「いい学校へ行け」と言い続けられても、いいことはないのだなと改めて感じます。
今回の依頼者である亮二さんと弟さんが家業にかかわるようになったのは、2年前、祖母が亡くなったあとです。会長職にある70歳の父に呼び出され「会社の数字を見てくれ」と言われたのです。兄が社長になった5年間で業績が下がるだけでなく、かなりの社員が離職していました。ふたりは家業の衰退に危機感を覚え1年前に仕事を辞めて会社に入りました。
しかし一緒に仕事をしていても、兄には社長の適性がないことがわかってきます。リーダーの素質がある弟を代表にしたいが、兄は譲りません。コンプライアンス時代なので、兄の素行に問題があれば、それを見せて交渉ができる。その調査が目的でした。
ただ、「兄も被害者だと思う」とお二人が語っていたことを聞いても、長男のスキャンダルで引きずりおろそうとしているのではないこともわかりました。「健全な会社にすする」「長男が出直すきっかけを作る」ための調査となったのです。
長男は結婚し、一男一女がいますが、「モラハラが激しい」と現在は別居しています。兄に女性の影があれば、不貞をしているということになり、進退を問うことができる。亮次さんは「ここまでしたくないのですが、このままでは会社は倒産する。危機感からの調査です」とかなり苦渋を滲ませながら話していました。
2人は1週間分の兄の行動記録を持って来てくれました。弟は「木曜日、金曜日に、相手が誰か不明の打ち合わせや勉強会が入っているのです。代表がこういうことをしていると、社員がやる気をなくす」と半ば怒りながら話していました。
さらに兄は、会社を継いでから2台の高級車を購入しているとのこと。「社用として購入しましたが、使えるのは兄のみ。これも皆のやる気を削ぐ原因になっています」と亮次さんも語ります。
ひとまず、不自然な木曜日から調査に入ることにしました。会社の前で張り込みしていると、16時に敷地から兄が徒歩で出て来ました。兄は背が高く容姿端麗です。亮次さんは「僕たちと母が違う兄は、カッコいいからモテる」と話していたことを思い出しました。兄の母は祖母が探してきた、従順でおとなしい女性だったそうですが、とても美しい方だったとか。
兄の服装は、ハイブランドのTシャツにデニムで、それがとてもよく似合っています。バッグやスニーカーもブランドの最新作を持っていました。カウンセリングルームに来た亮次さんと弟は、ややくたびれたシャツとチノパン姿で、「現場で働く役員」という雰囲気があり、兄とは雰囲気が違うと思いました。
16時45分に池袋駅に着くと、書店に入って時間を潰しています。20分ほどすると、再び改札に移動し、少し離れたところで待っていた30代半ばの女性と合流します。女性は中肉中背、ボーダーシャツにデニムパンツ姿で、デートという感じではありません。2人は笑顔で話しており、手を繋ぐこともなく、駅からかなり離れたレストランに入っていきました。
ここは予約がないと入れず、中の様子はわからない。待っていると1時間半で出てきて、レストランの隣の区画にあるラブホテルへ。それまで友達のような雰囲気だったのに、ホテルに入ると手を握ったり、キスをしたりしており、部屋を選んでいる間、後ろにいる私たちにお構いなし。兄が最も高い部屋を選ぼうとすると、女性は「え、いいですよ」と安い部屋のボタンを押していました。
2時間ほどして、ホテルからは一緒に出ましたが、その瞬間に先ほどのいちゃいちゃは嘘のように他人のような距離感に。女性の跡を追うと、23区郊外の古いファミリータイプのマンションに入っていきました。表札には女性の夫と2人の子供の名前があり、彼女も既婚者だとわかったのです。
翌日、金曜日は15時に出てきた兄を追うと、都心にあるペンシルタイプの雑居ビルの中に入っていきます。表札を見ると、「〇〇研究所」とあり、名前を検索すると霊感がある占い師男性のInstagramが見つかりました。
以上を亮次さんに報告すると「こんなにあっさり行動がわかるとは思いませんでした」と驚きながら、ホッとした様子でした。証拠を受け取りに来たのは、亮次さんのみ。弟は「辞めたい」という社員が急に現れ、その対応をしていると話していました。「辞表を出したのは、役員候補の若手なのです。10年前、父が頑張って大卒採用した年度の最後の一人です」と辛そうに話していました。
そして証拠を見せると、「あ、この女性、うちの社員ですよ。しかも結婚していて、中学生のお子さんが2人います。これはやっちゃダメでしょ」とかなりのショックを受けていました。兄の不貞に対してではなく、後始末が大変になることについて、青ざめています。
「兄は経費の使い方が激しいのですが、まさか占いに使っていたとは。やはり不安だったんでしょうね。今すぐ、父と兄と話してきます。調査を急いだのは、父ががんで、先が短いからです。会社のためにも、すぐに戻ります!」。父は65歳で会長職になっています。やや若い引退は、治療のためでもあったのです。いまはキャリアウーマンだった亮次さんの母が寄り添って暮らしているそうです。
翌日、亮次さんから「いろいろありすぎて、相談に乗っていただいていいですか?」と電話がありました。兄はこの5年間で会社のお金を数千万円単位で使っていたことが判明。そのお金の使い道は、複数の女性と占いだったそうです。
「兄は『仕事を頑張らなくちゃと思うと、体が女性を求めてしまう』と話していました。身勝手すぎて怒りしかありません。兄は大学卒業後、23歳で会社に入ってから、複数の社員女性と関係を持ったそうです。あの女性も、20代からの付き合いで、『割り切った関係だ』と言っていますが、会社の代表としてそれはおかしいだろうと」
おそらく兄は性依存症になっているのではないかと思いました。兄は祖母から「一人の人間」としてではなく、「跡取り」として育てられた。おそらく祖母は、兄を安心感と承認欲求を満たすための道具のように扱ったのではないでしょうか。
幼い兄は、それに反抗できなかった。父を頼ろうにも無関心ですし、実母はどこにいるかわからない。父の後妻である亮次さん兄弟の母は、祖母に遠慮して兄とは距離を置きました。そんな孤独感を癒したのが性交渉だったのでしょう。容姿端麗な長男ならば、相手を探すのはまったく苦でなかったと思われます。
私は「お兄さんは圧倒的に孤独だったのでしょうね。だから、自分が代表になって会社が自由になると感じたとき、心の穴を埋めるように、好きなことをしたんだと思います。一度、カウンセラーや精神科にかかってみるといいと思いますよ。このままでは同じことの繰り返しになる可能性も高いです」とアドバイスしました。
また、長男は「祖母の言うことは絶対」「失敗は許されない」という抑圧的な空気の中で育っています。幼い兄は、生き延びるために「支配する側でなければならない」と思いながら育ったのでしょう。だから、兄の妻にモラハラを行った。亮次さん兄弟の経営プランに反対するのも、居場所がなくなる危機感ではないかと感じました。
亮次さんは「そうかもしれません。兄の生育環境を解説いただくと、兄の理不尽な行動の背景がわかる。兄は祖母の被害者だったとは思っていたけれど、想像以上に傷を負っていたんですね。兄がいなかったら自分がその被害に遭っていたかと思うとぞっとします」と言い、ひとまずカウンセラーのところに連れて行くということで、その日は終わりました。
それから半年後、亮次さんから「弟が社長になりました。あの時、相談に乗っていただきありがとうございます。あれから兄に寄り添うような気持ちになったことで、事態はいい方向に変わりました」と電話がかかって来たのです。
兄はあれから、臨床心理士のカウンセリングに週1~2回通うようになり、徐々に自分の生きづらさと向き合うようになりました。その結果「社長でなくても、いいんだ」と思えるようにマインドが変わっていったそうです。
「精神科医から、自然の中に行くといいと聞き、兄と2人、1週間不便な田舎のコテージ暮らししたんです。あまり行きたくないと思いながら始めましたが、これがいい変化をもたらした。一緒にいるうちに、兄は常に強烈な不安感を抱えていることがわかった。僕や弟がそれをサポートする信頼関係ができていったことを感じています。兄は常に不安に支配され、衝動的に動いていた。それを自分でも分かったようで、『最近、気持ちが楽になった』と話し、代表を譲ると言ってくれたのです」
長男は幼いころに実母が家を出て、4歳年下には弟がいる。つまり祖母が母親代わりでした。その祖母に「愛されて」はいても、それは「跡取りとして」でした。だからこそ「跡取りでない自分」になってしまったら居場所がないと感じていたとしても当然です。だから亮次さんと弟さんが会社の使い込みで糾弾するのではなく、そのつらさを知って寄り添い、そのままの長男を受け入れたことで、ようやく鎧を脱ぐことができたのでしょう。占い師に経営を任せていたのでは、会社が傾いても仕方ありません。そうしなければならないほど不安にさらされていたのでしょう。
そして、兄は役員に退き、別の事業も提案をしているそうです。不倫していた女性たちと哉占い師ともきっぱり関係を切りました。兄は妻のところにも謝罪に行き、時間をかけて関係を回復するような気持ちになっており、少なくとも門前払いされることはなくなったそうです。
これから兄は、亮次さんたちと助け合って、会社を次世代に伝えて行くことでしょう。亮次さんは「僕も弟も独身で、今すぐ結婚する気はありません。兄に息子がいますが、好きなことをさせたい。次の社長は社内で育てるために、頑張ります」と話していました。
今回の調査費用は25万円(経費別)です。
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