「罰金1億円ぐらいにしないとなくならない」専門弁護士が警告する「1000人以上盗撮しても執行猶予という異常事態」

社会的地位の高い教員や政治家などの盗撮事件は、メディアでも大きく報じられるが、事件化されていない盗撮は数え切れないほどあるだろう。
盗撮事件が増えている理由として、スマートフォンの普及に加えて、盗撮するために発売していると言いたくなるような“巧妙に作られた”カメラの存在も大きい。
前編記事『「ちゃんと消したからもういいでしょ」親と教員が揉み消す未成年盗撮の「あまりに甘すぎる現実」』に引き続き、近著に『犯罪被害者代理人』(集英社新書)があり、性犯罪に詳しい弁護士・上谷さくら氏に詳しい話を聞いた。
現状として、ペン型、メガネ型、ボタン型など“盗撮に悪用できる”カメラが、ネットで誰でも購入できてしまう問題がある。当然、販売規制せよという声も強い。しかし、上谷氏はこう指摘する。
「そういう意見も理解できなくはないのですが、それらのカメラは盗撮目的で作られたわけではありません。たとえば、メガネ型のカメラは、自転車に乗りながら景色を撮るため等にも使われています。包丁が料理にも殺傷にも使えるように、要は使い方の問題。カメラだけを規制することは難しいと思います」
盗撮事件が報じられるたびにSNSでは、カメラの免許制導入などが議論されることもあるが、「カメラ自体に危険性があるわけではないので、法的にほぼ不可能ではないか」という。
一方、「日本は性犯罪に甘いのでもっと厳罰化すべき」としばしば批判されることも多い。上谷氏も、この指摘は本質を突いていると語る。
「法定刑自体は海外と比べて軽いわけではありません。しかし、実際の量刑は非常に軽いと言えます。たとえば、不同意性交は、5年以上20年以下の有期拘禁刑と定められていますが、被害者が1人なら、下限の5年になることが多い。
盗撮に関しても、昨年9月に山形で起こった事件で、1000人以上盗撮しても懲役2年、執行猶予5年という判決が出ており、今でも量刑は軽いと言えます」
上谷氏が最も問題視するのが、2023年7月に創設された性的姿態等撮影罪(以下「撮影罪」、法定刑は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」)にある“抜け穴”だ。
「撮影罪は、盗撮した画像や動画を“販売する行為”を処罰の対象としていないのです。売れば儲かるから盗撮する、いわば“盗撮の市場”が存在するのに、そこへの罰がない。
覚せい剤の製造や輸出入だと、無期懲役や罰金1000万円以下の刑罰が定められています。盗撮した画像は高く売れ、世界中に拡散されてしまう恐れがありますから、懲役刑だけでなく、罰金も1億円ぐらいにしないと減らないでしょう」
「万引きは依存症」と指摘する専門家がいるように、盗撮にも“依存的側面”があるという。
「盗撮する人は、ゲームのようにハードルを上げていく。“今日もできた”という達成感があるようです。被害者は撮られていることに気づいていないので、加害者には罪悪感がない。『迷惑をかけていないから別にいいでしょ』と本気で思っている人もいるので始末に負えません」
盗撮は発覚しづらい。ゆえに、依存的に繰り返される。盗撮を減らすにはどうすればいいのだろうか。
「『重罪化しても抑止力は限定的』という見方もありますが、それでも被害者感情を考えれば、刑罰の強化は必要です。他には子どもへの教育も大事だと思っています。親のネットリテラシー不足も問題で、『勝手に撮ったらダメ』、『SNSに公開したらダメ』といった初歩的な教育がまったくできていません」
被害者の尊厳を奪う盗撮。しかし日本社会はまだ、その重大性を十分に理解できていない。
学校ぐるみの隠蔽、量刑の異常な軽さ、盗撮した写真や動画のネット売買、子どもの無自覚な加害、規制できないカメラの存在など、さまざまな問題が残っている。
撮影罪の施行は、まだ「始まり」に過ぎない。私たちがこの問題にどう向き合うかによって、次の法改正の方向性を決めることになるだろう。
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