高市早苗首相による台湾有事をめぐる国会答弁について脅迫とも取れる発言を行い、後に削除していた中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事が2025年11月10日にかけ、改めて持論を展開している。
日本政府は投稿に抗議し、「中国側から明確な説明がなされるよう求めていく」としている。
薛氏の投稿は、朝日新聞デジタルによる「高市首相、台湾有事『存立危機事態になりうる』 武力攻撃の発生時」との記事に反応したもの。記事では高市氏が7日の衆院予算委員会で、日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」にあたる具体例について、台湾有事を挙げたことを伝えていた。
薛氏は8日、この記事を引用すると、「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟が出来ているのか」(原文ママ・以下同)とし、怒り顔の絵文字を添えた。
薛氏の投稿は波紋を広げ、「文脈からして高市首相への殺害予告とも読み取れるので極めて悪質」などとする批判を呼んだ。
薛氏は中国の攻撃的な外交スタイル「戦狼外交」の代表例として知られており、過去にも21年には台湾問題に関連して、「台湾独立=戦争。はっきり言っておく! 中国には妥協の余地ゼロ!!!」と投稿し批判を受けていた。
薛氏は9日夕方までに投稿を削除した一方で、「中国内政への干渉、国家主権の損害、台湾両岸統一の妨害などは一切許さい」(原文ママ)などと主張。このほか、自身の主張を支持するような投稿をリポスト(拡散)している。
木原稔官房長官は10日の記者会見での質疑応答の際、本件に言及した。
「日本政府として今回の投稿に対してなんらかの抗議があったのか」との質問に「ご指摘の中国の大阪総領事の投稿は把握している」とした上で、「その趣旨は明確ではないものの、中国の在外交官の長の言論として、極めて不適切と言わざるを得ない」とした。
薛氏は9日までに投稿を削除しているが、「11月9日午前以降、外務省および在中国大使館から中国に対してその旨の申し入れを行い、強く抗議するとともに、関連の投稿の速やかな削除を求めた」と説明。
9日夜辞典で「関連の投稿の一部は閲覧できない状況」になったとした上で、「中国側から明確な説明がなされるよう求めていく」と語った。
国外退去を求める考えがあるかとの質問には、「中国の大阪総領事による複数の不適切な発言は認識をしており、中国側にも累次に渡り申し入れを行い対応を強く求めている」とした。
批判の声が相次ぐ中、薛氏は自身に寄せられたリプライに返信し、持論を展開し続けている。
9日には、「日本の政治家には他国の国民や政治家に対して脅迫や殺害示唆みたいなことをする人はいません」とする一般ユーザーの投稿を引用し、「勝手な想像任せで拡大解釈と歪曲を止めてほしい」と主張。
「問題の発端は、我が方の再三再四に亘る 反対表明を顧みず、『台湾有事は日本有事』としょっちゅう平気で言ってる日本側の政治屋だと重ねて指摘しておきたい」と反論し、「皆さんの理屈で言えば、これこそ中国への立派な『脅迫』と『殺害示唆』だろう」と反論した。
「外交(対話)で中華統一される事を願います」との意見には、「『台湾有事は日本有事』を言い出した時点でもう対話が成立 しなくなってしまうのよ」と主張した。
「幾ら『海上輸送』などまともそうな口実を立てても、とんでもない約束・ルール違反であり、中国へのあからさまな内政干渉と主権侵害になってしまうからだ。撤回と共に釈明をしてもらうしかない」としている。
中国側から武力による台湾侵攻を否定するべきではないかとの声には、「完全な主権独立国家として自国の国家統一に関わる重大な事柄について他国に仰るような約束は到底できるわけがない。『台湾独立』勢力その後ろ盾の外国勢力が蠢動(編注:しゅんどう=つまらない者が策動すること)しているからだ」と返信。
「但し、平和統一を実現すべく最大限の努力してきたし、これからも続けていく所存だ。他所からの邪魔をやめて欲しいものだ」とつづった。