うつ状態なのに体が勝手に動いて働けてしまう。だからこそ、苦しいー心と体が限界を突破しているのに動いてしまうその状態はゾンビにも喩えることができる。そんな人々が増えているという。その実態を追った。
◆特例子会社に転職希望するも上手くいかず
ITエンジニアの高橋充さん(仮名・50歳)は3年前から手の痺れ、気分の落ち込みが定期的に表れていたが「疲労のせい」と思っていた。しかし妻の勧めで精神科を受診するとうつ病と診断された。
「まさか自分がうつ病だなんて……ショックでしたね」
現在、処方されている薬は5種類。今の会社には勤続15年だが、「精神障害者手帳を得たので、2年前から特例子会社(障害者雇用を促進している大企業の子会社)への転職活動をしています。でも、競争率が高くて全然ダメ。共働きですが、老後の資金を貯めるために今、仕事を失うわけにはいかない」と言う。
◆「出口のない迷路に迷い込んだ気分」
業務中、手の痙攣が5分以上続くことがあるが「治まるまで耐えるしかない」という。
主治医からは「適度に手を抜いて頑張りなさい」とだけアドバイスされているが「矛盾しているので全く理解できない」と不満を漏らす。
「薬も効かないし、休むこともできない。出口のない迷路に迷い込んだ気分です」
◆「負けたくない」一心で不調を抱えながら働く
高校卒業直後からうつに悩まされてきた大塚昌俊さん(仮名・38歳)。自身が「働けるうつ」であると自覚している。
現在は8種類の投薬治療を受けているため症状は比較的落ち着いているが、2~3年で限界を迎えて1年間休んで復職するサイクルを18年以上繰り返している。薬を飲み忘れると強迫観念や脅え、冷や汗などの症状が出る。
そこまでして働くのは、幼少期のトラウマも関係している。
「負けたくないという気持ち。小学生の頃にイジメに遭っていたこともあり、反抗心のようなものに突き動かされていますね」と話す。
◆「立ち向かっているようで、逃げているという感覚も」
だが根本治療を目指し月1回のカウンセリングでイジメの記憶を掘り下げてみたところ、「少し良くなってはいるが、あまり向き合えない」という。
「立ち向かっているようで、何かから逃げているという感覚もおぼえている」と吐露する大塚さん。「遡ると小学生の頃からうつ。なので、心身ともに健康になることが将来の夢ですね」と話す。
取材・文/週刊SPA!編集部