都市部を中心にマンションの空き駐車場が問題になっている。使わない機械式駐車場はメンテナンス費用が負担になるばかりか、取り壊しにも多額の費用がかかり、“負の遺産”として管理組合と住民の間でどうしていくのか議論が巻き起こっている。解決に向けた動きを取材すると、制度の壁があることが見えてきた。
川崎駅から徒歩10分、築30年のマンション。
21台とめることができる4階建ての駐車場。現在使われているのは、わずか6台のみで、15台分がガラガラ状態となっている。
空きが目立つようになってから、維持コストを減らすため上の2階部分は駐車台ごと撤去した。
東京・板橋区のマンションでも、機械式駐車場が8台分あったが、利用者が少ないため、駐車台を撤去することに。装置を取り壊してできたスペースを埋めるため、トラック3台分の発泡スチロールで次々と運び込まれていた。
撤去と埋め立てにかかった費用はおよそ700万円。
住民の修繕積立金から支払われるという。
都市部を中心に、マンションの駐車場に空きが増える問題が起きている。
空き駐車場対策に取り組む企業が相談を受けるなどしたマンションの位置を示した地図を見ると、都心の大部分と、主な鉄道の沿線に広く分布していることが分かる。
空き駐車場の増加の背景にあるのが、車の保有率の低下だ。国内の1世帯あたりの車の保有台数は、およそ1台と12年連続で減少している。
こうした課題に長年向き合っているマンションが、兵庫県西宮市にある。
築29年、4棟からなる573戸のマンションの敷地内には、3か所、計480台分の駐車場が設置されている。なぜこんなにたくさんの駐車場が作られたのか。
このマンションが作られた1990年代は、バブル期のマイカーブームにより路上駐車が社会課題となっていて、西宮市など多くの自治体では、1戸あたり1台の駐車場を設置する義務があった。
駐車場に行ってみると、2階部分や、地下1階部分で空きが目立つ。機械式駐車場の4割がガラ空き状態だ。
なぜこんなに空いてしまったのか。
取材班は、マンションの住民にアンケートを実施。車を手放した人や、手放すことを検討している人に理由を聞いたところ、最も多かったのは「高齢になったから」で、次いで「車の維持費が高い」、「カーシェアが普及したから」などが続いた。
さらに、車をもつ住民の中はこんな人も…。
記者:ここの駐車場には車は停めていない?
住民:私は停めていませんね。
マンション玄関のすぐ向かいにある敷地外の駐車場に停めているという。
住民:アウトドアにいくからラック積んでるでしょ。入らないものは仕方ないですよ。負の遺産というとおかしいけど、どうしようもないのが現実。
車高の高いワンボックスカーやスポーツ用のSUVは、機械式には入らないためだ。
住民がマンションの駐車場を使わなくなった事態に、管理組合も危機感を募らせている。
管理組合の坂元正三理事は「前は駐車場収入で1億くらいあったが、どんどん減っていって6000万円ぐらいの剰余金が2000万円くらいになった」と明かす。
空きが年々増えるごとに、激減するマンション維持のための資金。機械式の駐車場は、空き状態であってもメンテナンスに年間600万の維持費がかかる「金食い虫」となってしまった。
「このままじゃマンションつぶれちゃいますよ。エレベーター止まっても修理できませんという状況になる」(マンション管理組合の理事)
度重なる協議を経て、このマンションでは機械式駐車場を取り壊し、3階建ての自走式に改築した。
自分で運転してとめる自走式駐車場は、維持費もかからず、機械式の更新と比べて予算を1億円抑えることができた。
新しい駐車場に、車体の大きな車を割り当て、100%住民の要望をかなえたはずだったが…。「車を買い換えたいから(自走式の空きを)待ちます」という人がでてくるなど、人気の自走式駐車場に対して、機械式駐車場の空きがなかなか改善しないという。
ガラガラの機械式駐車場を有効活用するため、登場したのがトランクルームだ。
住人のゴルフセットや、夏場に使う冷房機、スーツケースなどがズラリ。キャンプ道具や車に乗せる仕事道具を預けている住民もいた。
このトランクルーム、よく見てみると、下に車輪がついていることが分かる。
機械式のスペースにトランクルームを置くと、建築基準法などに抵触する恐れがあるため、あえて車輪をつけて「軽車両」とみなしているという。
このマンションでは、トランクルームをさらに増やそうとしている。
機械式駐車場をトランクルームとして使う活用法について、国交省に取材すると「機械式装置は、車の格納を前提に設計されていて、倉庫としての利用は想定されていない。一定時間、利用者が中にとどまるとなると事故の危険性が高く、慎重な検討が必要」と回答した。
現在はマンション駐車場の設置義務は緩和されているが、すでに作られた駐車場の柔軟な活用については安全性を重視する国との間で平行線が続いており、解決に向けた積極的な議論が求められている。
(「イット!」1月8日放送より)