目を見開き、眉を吊り上げ、おどけるようなリアクションを取る–。1月6日、自民党の仕事始めの挨拶に臨んだ高市早苗首相(64)は、報道陣を前にそんな余裕の表情を見せた(写真)。挨拶では「しっかりと働いて参りましょう」と議員に発破をかけた高市氏。自身の発言通り、首相になって初めての年末年始も、その″モーレツぶり″は変わらずだった。
「地元の奈良県には帰らず、首相公邸で除夜の鐘を聞きました。夫・山本拓さん(73)と『紅白歌合戦』を見たそうですが、ゆっくりできた時間はそれくらい。年末は中国の軍事演習の動向をチェック。年が明けるやトランプ米大統領(79)との電話会談の対応に追われ、合間をみて年頭記者会見の準備と、忙しない年末年始でした」(自民党ベテラン秘書)
読売新聞が発表した最新の内閣支持率(昨年12月21日)は73%を記録。就任以来、異次元の高水準を維持し続けている。
しかし、水面下で多くの懸念事項を抱えていることが、高市氏に帰省を思いとどまらせたのかもしれない。最大の″アキレス腱″は、歯止めがかからない「円安・物価高」だ。帝国データバンクが主要食品メーカー195社を対象に行った調査によると、今年1~4月の値上げ予定食品は3593品目。以降も月1000品ペースで値上げが続く見通しだ。経済アナリストの中原圭介氏は「高市さんは経済の基本をわかっていない」と断ずる。
「需要刺激策として新年度予算に11.7兆円もの物価高対策を掲げていますが、これは逆にインフレを加速させます。インフレは供給不足が原因で、本来は生産能力を高めるために税金を使うべき。
今のような状況下でデフレ対策のようにお金をばら撒けば、物価高に拍車をかける。『国債は乱発しても問題ない』という考えも危険。市場の信認を失えば、金利が急騰し、さらに悪性の円安が進む。国民生活が大打撃を受けるリスクがあります」
ファイナンシャルリサーチ代表の深野康彦氏は、高市氏が消極的な消費税減税について、「強く求めたい」と語る。
「所得税などが掛からない給与所得の控除枠、いわゆる″年収の壁″の引き上げやガソリンの暫定税率廃止などの物価高対策は有用だと思います。一方、株高やインフレの恩恵は資産を持つ富裕層しか受け取れていません。円安で高騰する食料品の消費税を今こそゼロにし、代わりに服など嗜好品の税率を上げる。メリハリある対策が必要だと思います」
新年早々、海外有事も発生した。日本時間1月3日午後、トランプ大統領の指示で米軍がベネズエラの首都を急襲。ニコラス・マドゥロ大統領(63)を拘束したのだ。麻薬密輸と政権の正統性を巡っての軍事侵攻だったとトランプ大統領は主張したが、国際秩序を破壊する暴挙に世界は激震。中国は「覇権的行為」「国際法違反」と猛反発したが、高市氏は自身のSNSで「情勢の安定化に向けた外交努力を進めてまいります」と発信するにとどまった。1月5日の記者会見でも「関係国と緊密に連携しながら対応にあたっている」と歯切れの悪い答弁に終始した。
「高市には台湾有事を巡る″失言″の前科がある。SNSの文面も何重にもチェックされたようだ。ただ、日本のリーダーとしての資質が問われる局面でありながら曖昧な回答に終始する姿勢は、改めて外交判断能力の貧弱さを露呈したようなもの。さらに言えば、軍事作戦を黙認したとも取られかねない対応で、これが支持者にどう映るか……。毅然と対応すべきだった」(自民党ベテラン議員)
3つ目の不安要素は足元にある。連立を組む日本維新の会が″絶対条件″とする議員定数削減はいまだに達成されていない。一方で国民民主党が掲げた年収の壁の引き上げは来年度予算への協力を引き合いに合意。連立相手を蔑(ないがし)ろにするような対応を、維新側はどう思っているのか。維新の国対委員長で首相補佐官も務める遠藤敬氏(57)を電話で直撃した。
–議員定数削減が継続審議となった。
「ギュウちゃん(萩生田光一幹事長代行・62)が法案提出までいってくれた。国民の負担が増える中で国会議員は血を流さないでいいのか、と覚悟が問われとる」
–実現しなければ連立離脱するのか。
「自民党は組織や団体の意向が強すぎて、政治改革をしたくても動かれへん。ただ、現状での離脱はない。一緒にやっている以上、支えていこうという思いは強い」
だが、維新の会の中堅議員は「高市さんは我々が副首都構想を実現するまで連立離脱しないと高を括っているかもしれないが、党内では自民党の対応への不満の声が上がっており、看板政策を塩漬けにされたら顔が立たない。離脱の声が広がりかねない」とホンネを明かした。
高い内閣支持率ばかりに目が行くが、裏では多くの爆弾を抱えている、というのが高市政権の実情だ。ジャーナリストの鈴木哲夫氏が警鐘を鳴らす。
「期待は高いが実績はまだまだ。たとえばガソリン減税はこれまでの政権でずっと議論されてきたもの。首相選出前に主張していた食料品の消費税減税は、『レジの改修が大変だから』と言い訳する始末。

発足から2ヵ月半、党内の議員と開いた会食は麻生さん(太郎副総裁・85)を含め2回だけで、信頼できる側近議員が少ないのも不安要素。国民の期待が高いだけに、実績を上げないと反動で支持は急落するでしょう」
働いて働いて働いて、「3つの課題」を克服することができるか。正念場だ。
『FRIDAY』2026年1月23日号より