東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件で、組織委員会元理事の高橋治之被告(78)=受託収賄罪で起訴=に計約1400万円の賄賂を渡したとして、贈賄罪に問われた大手広告会社「ADKホールディングス」(東京都港区)前社長、植野伸一被告(69)は17日、東京地裁(友重雅裕裁判長)で開かれた初公判で「間違いありません」と起訴内容を認めた。検察側は、スポンサー集めに失敗し続けた同社が会社の威信を保とうと、元理事の影響力に頼った状況を詳述した。
【フローチャート】五輪談合はこういう構図 「面目が保てる」元理事の要求受け入れ 「スポンサー集めに苦戦しています。どうか助けてください」「おう、分かった」。検察側は17日の公判で、ADKホールディングス前社長の植野伸一被告が組織委員会元理事の高橋治之被告に直接便宜を懇願した状況を明らかにした。 検察側は冒頭陳述などで、ADKはスポンサー獲得目標を5社と設定したが、協賛金の金額が折り合わないなど軒並み失敗し、2018年2月にはスポンサーを獲得できる見込みがなくなったと指摘。幹部から「広告業界3位の面目が丸つぶれになる」との声が上がり、植野前社長が同年3月に元理事と会食してスポンサー候補企業の紹介を直接依頼したとした。 元理事はその後、古巣の電通の執行役員(当時)に働きかけ、電通が担当していた駐車場サービス会社「パーク24」をADKに回すよう指示。ADK側には、電通の代理店として再委託を受けることで得られる手数料の半額約2000万円を自身の知人が代表を務めていたコンサル会社(解散)に送金するように求めたとした。 検察側は、植野前社長らが「面目が保てる」と元理事の要求を受け入れ、電通も難色を示しながらもパーク24をADKに回したと指摘。パーク24がスポンサーに決定した後の18年12月、ADKは元理事の要求通り約2000万円をコンサル会社に送金したとした。この約2000万円は贈賄罪の公訴時効(3年)が過ぎておりADK側は立件されなかったが、受託収賄罪の時効は5年のため、元理事はADKから直接受領したコンサル料と合わせて計約4700万円の賄賂を受領した罪に問われている。 この日の法廷に紺色スーツとネクタイ姿で臨んだ植野前社長は、神妙な面持ちで検察側の指摘に耳を傾けていた。【志村一也】
「面目が保てる」元理事の要求受け入れ
「スポンサー集めに苦戦しています。どうか助けてください」「おう、分かった」。検察側は17日の公判で、ADKホールディングス前社長の植野伸一被告が組織委員会元理事の高橋治之被告に直接便宜を懇願した状況を明らかにした。
検察側は冒頭陳述などで、ADKはスポンサー獲得目標を5社と設定したが、協賛金の金額が折り合わないなど軒並み失敗し、2018年2月にはスポンサーを獲得できる見込みがなくなったと指摘。幹部から「広告業界3位の面目が丸つぶれになる」との声が上がり、植野前社長が同年3月に元理事と会食してスポンサー候補企業の紹介を直接依頼したとした。
元理事はその後、古巣の電通の執行役員(当時)に働きかけ、電通が担当していた駐車場サービス会社「パーク24」をADKに回すよう指示。ADK側には、電通の代理店として再委託を受けることで得られる手数料の半額約2000万円を自身の知人が代表を務めていたコンサル会社(解散)に送金するように求めたとした。
検察側は、植野前社長らが「面目が保てる」と元理事の要求を受け入れ、電通も難色を示しながらもパーク24をADKに回したと指摘。パーク24がスポンサーに決定した後の18年12月、ADKは元理事の要求通り約2000万円をコンサル会社に送金したとした。この約2000万円は贈賄罪の公訴時効(3年)が過ぎておりADK側は立件されなかったが、受託収賄罪の時効は5年のため、元理事はADKから直接受領したコンサル料と合わせて計約4700万円の賄賂を受領した罪に問われている。
この日の法廷に紺色スーツとネクタイ姿で臨んだ植野前社長は、神妙な面持ちで検察側の指摘に耳を傾けていた。【志村一也】