【水柱問題】「掃除機レベル」1km先も“轟音” 降り注ぐ“塩害”…見物客“迷惑駐車”

北海道長万部町で今月8日から高さ30メートル以上の巨大な水柱ができていて、この週末、多くの見物客が集まりました。周辺では迷惑駐車が相次ぎ、その一方で、近隣の畑では作物が枯れるなどの被害が出ていました。
■「神秘的」全国から“多くの見物客”
今月8日、長万部町に突如現れた巨大な水柱。
轟音(ごうおん)とともに、高さおよそ30メートルまで噴き出し続けています。20日間経った今も、周辺は小雨が降るように常に濡れた状態になっています。
この週末も、全国から一目見ようと多くの人が訪れました。
神奈川から訪れた見物客:「(Q.きょうは、どちらからお越しに?)横浜。きのう、千歳に着いて、きょう2日目なんですけれど、これを見に来ました。神秘的にというか、魅力を感じて見てみたいと思いました」
東京から訪れた見物客:「東京からです。すごいですね。音もすごいし」
水柱周辺での路上駐車は事故の危険があるため、町は500メートル離れた所に、臨時の駐車場を設置しました。
多くの人がルールを守って水柱の見物を楽しんでいます。ところが…。
■暴行トラブルも…「迷惑駐車」巡り
この辺り、至る所に駐車禁止の紙が掲示されてますが、そのすぐそばに路上駐車しています。バイクが駐車されているすぐ目の前に「駐車禁止」の貼り紙があります。見えていないんでしょうか。
水柱の周辺の道路では、マナーの悪い一部の見物客による迷惑駐車が横行していました。
車道の真ん中に堂々と車を止め、写真を撮影する女性。車を避けるため、後続車が反対車線にはみ出さなければならなくなっていました。
近隣住民:「一応、そこには生活の道路だから車入らないで下さい。撮影とかで来ないで下さいとか書いてあるけど、全然ダメ」
この車は、住宅の敷地に車を止めてしまっています。
生活道路を塞ぎ、写真を撮る人が後を絶ちません。また、こんな不安を抱く住民もいます。
近隣住民:「この辺、くわえたばこしたりして歩いている人とか。私からすれば、ガス混ざってたりっていう可能性もあるから、ちょっとそういうのも不安になりますよね。不安いっぱいです」
役場によりますと、噴出口付近では可燃性ガスが検出されていて、風向きによっては住宅地でも微量のガスを検出する可能性があるといいます。
さらに、身勝手な見物客によるこんなトラブルもあります。
長万部町役場職員:「駐停車しようとしていた方に、移動するよう求めたら、体を殴られた」
路上駐車を注意した町役場職員が、殴られるトラブルが発生。町は警察に届け出たといいます。そのため、周辺では警察が巡回し、注意を促しています。
警察車両アナウンス:「こちらは八雲警察署です。この道路は駐車禁止です。路上に駐車している車は速やかに移動して下さい」
近隣住民:「水柱と一緒に撮りたいっていうのでね。いつもその辺が人が止まっては、ポーズとって騒ぐ。それは勘弁かなって。ちゃんとマナーさえ守って下されば」
■“塩害”家庭菜園が全滅…車に汚れ
昼夜にわたって噴き出し続ける水柱。
先週、町が検査機関に成分の調査を依頼した結果、水は水温21.5℃の“低温泉水”と分かりました。微量のヒ素が含まれていましたが、人体に害となる数値ではないといいます。
一方で、住民を悩ませているのが…。
近隣住民:「葉っぱが茶色くなって。(水が掛かる前は)葉っぱがまだ青々してたの。こんな感じの青だったんだよ。焼けてこうなった」
去年5月、きれいな赤い花を咲かせていた木が、真っ黒に変色してしまっています。
この温泉水は食塩泉で、塩害によって植物を枯らせたり、金属をさびつかせる可能性があるといいます。さらに、鉄やマンガンなどの濃度が高いため、物を黒くしてしまうこともあるといいます。
その水が24時間、周辺の木々や民家に絶えず霧のように降り注いでいるのです。このお宅では、30年近く家庭菜園でトマトやナスなどを栽培していましたが…。
近隣住民:「(Q.毎年収穫を楽しみに?)孫とかにも採って食べるのが楽しみでしたし。これはピーマンなんですけれど、すっかり枯れちゃって、全然収穫できませんでしたし。これとここの奥の3本がナスビだったんですけれど、それも一つも収穫できませんでした」
水柱発生後、一気に枯れてしまったといいます。
近隣住民:「初めは白い粉が付いたんです、葉に。それからずんずん白いのから黒く、こういうふうに変わってちゃったっていう感じです。除草剤をまかなくても、こういうふうにして枯れて黒くなってっていう感じだから。きっと土自体もダメだと思うんです。残念ですよね」
被害を受けているのは、草花だけではありません。
近隣住民:「こうなってんの。きのうも洗ったんだけれども。何回もこすったけれども、まだ取れないからさ」
車全体に付着した塩の結晶のような白い汚れ。常に水柱から水が降ってくるため、毎日洗車してもこびりつき、なかなか汚れが落ちないといいます。
近隣住民:「(Q.大事な車にも影響が?)これ(影響が)出てくるんだよね、さびてくるし。早く済んでもらいたいですよ、この音と」
■「眠れない」1キロ先まで轟音が…
さらに住民を苦しめているのが、鳴り続ける水柱の“噴出音”。町は轟音を防ぐため、高さ1メートルほどの簡易的な防音シートを設置しましたが、体に響くような轟を感じます。
どのくらいの騒音なのか計測してみると、およそ70デシベル。室内で掃除機をかけている時と同じくらいの音が、24時間、常に響き渡っていることになります。
あまりに音が大きいため、水柱から1キロ以上離れた長万部駅周辺の店でも音が聞こえるといいます。
1キロ以上離れた店の従業員:「風向きによっては、聞こえてくることもあります。水の柱が太い。柱がドーンと上まで出てたからね。それ遠くからでも見えたからね。近所に住んでる人は、大変でしょう。夜寝られないだろうし」
夜になっても噴き出す力は弱まることなく、真っ暗闇の中で、ただ水の噴き出す音だけが住宅街にとどろいています。
近隣住民:「寝られない、寝られない。もう皆グロッキーですね。寝られないのと疲れとで。周り皆そうですよ。本当に環境が変わりました、一変して。いつ止まるのやら分からないですよね」
■今後の対策「防音壁」「飛散防止ネット」
温泉の成分などを調査している公益財団法人中央温泉研究所の滝沢英夫さんに、長万部町の水柱を温泉に活用できるか聞きました。
長万部町が水質検査を行ったところ、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉と推定されました。
これは“日本最古の温泉”の一つ、兵庫・有馬温泉と“日本三美人の湯”で知られる和歌山・龍神温泉の特徴を合わせ持っていて、濃度は低いものの、温泉の利用に適しているといいます。
ただ、一般的に温泉施設を作る場合、掘削や温泉の採取、ガスなどの安全対策が必要で、滝沢さんによりますと、「1000メートル掘るのにおよそ1億円かかると言われている。最低でも数千万円はかかる工事になるのでは」と指摘します。
長万部町によりますと、現時点で温泉として開発する計画はなく、優先すべきは騒音、塩害対策だとしています。現在は、噴出口を防音シートで囲むほか、長万部振興会館を「轟音対策避難所」として開放するなどの対策を取っています。
長万部町は今後の対策として、高さ15メートルから20メートル程度の防音壁や飛散防止ネットの整備を計画していて、早期着工に向け、工法などを検討しているということです。