新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、自転車を活用する人が増えているという。しかし、繁華街やビジネス街では自転車を収容する場所は十分には用意できていないのが実情だ。駐輪場ではない場所に置いてしまう人への警告として「無断駐輪したら●万円」など、独自のルールを掲示する施設も出てきた。
都内在住のJ子さんが先日、港区内の繁華街を訪れると、テナントが多数入るビルの一階に「無断駐輪 金3万円申し受けます」という掲示があったという。J子さんは「こんなに狭いスペースに自転車を置く人がいるのか?と思うような狭い場所で、ここに停められたら上のフロアに出入りするにも大迷惑だと思いました」。
無断駐輪が悪いことは疑いようがないものの、このような措置は、法的には有効なのか。もし無断駐輪してしまった場合には、支払う義務はあるのか。鬼沢健士弁護士に聞いた。
ーー無断駐輪された施設が怒るのは無理ないことですが、少し停めただけでも3万円など支払う義務はあるのでしょうか
法的には、実際に発生した損害額のみを賠償すればいいとされています。無断駐輪によって2~3万円分の損害が発生したことを証明しないと、オーナーが損害賠償を請求することはできません。
なお、無断駐輪した場合には、警告の張り紙を根拠に、損害賠償の合意(民法420条)があったとみる余地はあるかもしれませんが、無断駐輪する人との間で合意が成立したといえる場面はほぼないでしょう。
ーーとはいえ、とめられた側からすれば、非常に迷惑であることに.変わりありません。無断駐輪に悩む人は、どのように対応すれば良いのでしょうか。
無断駐輪をされた場所の所有者や管理人は、損害賠償を得るのも困難であり、車両をロックすると加害者になってしまうという、非常に気の毒な立場です。
無断駐輪のリスクが軽すぎる反面、無断駐輪をされる側の負担が重すぎる事態は否定できず、個人的には、もう少し無断駐輪をされる側を守る法整備がされてもいいと思います。
【取材協力弁護士】鬼沢 健士(おにざわ・たけし)弁護士詐欺サイト(出会い系、支援金、サクラサイト)・副業詐欺被害救済、交通事故、労働問題、を取り扱う。事務所名:じょうばん法律事務所事務所URL:http://www.jobanlaw.com/