Netflixで全世界に配信中のホームコメディ「離婚しようよ」。Netflixの今日のTV番組TOP10(日本)で1位を9日間、週間グローバルTV番組TOP10(非英語シリーズ)で10位を記録するなど、話題となっている。
【写真を見る】離婚したいのにできない日本特有の国民性…海外に絶対伝わらないセリフをあえてNetflixで使う理由【離婚しようよ】全世界共通のテーマ「離婚」を描いた本作だが、海外の視聴者からは登場人物や設定からにじみ出る“日本らしさ”がウケているという。「離婚」を描く中で見えた、その“日本らしさ”とは?制作プロデューサーの磯山晶にNetflix特有の制約と向き合う制作の裏側を聞いた。

「離婚したいのにできない、というのが日本人特有」ーー「離婚しようよ」というタイトルは「離婚」をポジティブに捉えた挑戦的なタイトルですよね磯山晶 「離婚しようよ」プロデューサー:離婚した方が幸せになる人も絶対にいますし。離婚をネガティブな意味だけで捉える人は少なくなってきていると思います。実際、パートナーシップがあったとしても、「結婚」「婚姻関係」でなくてもいいという人もいれば、長い人生、ひとりの人だけでいいという人もいます。まさに「多様性の時代」ですよね。その上で、吉田拓郎さんの「結婚しようよ」という名曲がありますので。ご本人の許可を得て、そちらを元にさせていただきました。ーーNetflixを通じて全世界配信の本作、なぜ「離婚」をテーマに?Netflixと打ち合わせをしたときに、「結婚」「離婚」「夫婦」は全世界共通のテーマなので、そこに“日本らしさ”を出せたらいいんじゃないかとディスカッションしたのを覚えています。「離婚」そのものを描くだけでも、日本の国民性みたいなものは滲み出ると思っています。アメリカ人とかだと「離婚したいな」と思ったらすぐに離婚しちゃう。だから海外の人から見たら「離婚したいのにできない」というのが日本人特有かもしれない、というところから話しました。ーー松坂桃李さんが政治家を、仲里依紗さんが女優を演じていますが、その役柄にも日本らしさが?旦那さんは世襲議員で、地元で人気の女優の奥さんと離婚すると、「次の選挙で勝てないかもしれない」というデメリットが不安だと。奥さんは女優として主婦モノのCMを多く抱えているから離婚してイメージが壊れると生活に支障をきたすと。だから、選挙事務所の後援会とか、芸能事務所の社長とか、そういう人たちに「絶対に離婚するな」と言われてしまう。でも、お互いに「絶対に離婚する」という目標に向かって一致団結する中で逆に仲良くなっていくっていう。その反比例が面白いと思って。ーー作中で描かれる「日本の選挙」にも日本的な雰囲気を感じますが雨が降っていても候補者が傘をささなかったり、田んぼに入っていって有権者と握手するみたいな「どぶ板選挙」の描写をやりたかったです。あとは本人は「本人」って書いてあるタスキを、妻には「妻」と書いてあるタスキをさせて、自転車にのって選挙区を走るとか。政策のことはほとんど語らず「お体大切に」って言う感じとか。日本の地方選挙は面白いなっていう。ーーNetflixを通じて全世界に配信する上で、なにか制約はありましたか?高橋智大 TBS・プラットフォームビジネス局DX戦略部長:それぞれのお国事情、あとは宗教によっては「この表現が大丈夫なのか」みたいなことなど、最初から世界を意識してのドラマ作りという点がこれまでとは違うところでした。磯山晶 「離婚しようよ」プロデューサー:例えば、松坂桃李さんが演じる東海林大志という政治家は、おバカな状態からスタートして、ストーリーを追うごとに人として成長していくんですけど。どういうおバカぶりなのかをNetflix側に伝えるために、「こういう時に、こういうことを言っちゃう人」みたいな例えを箇条書きで羅列していたのですが、Netflix側はそれにすごく反応しました。本当にいろんな人種の方が視聴するので、おバカな設定とはいえ、世界中の方が嫌な思いをしないよう気を付けてほしいと。台本作りの前の段階で言われましたね。ーーNetflixらしい制約ですね。ストーリーを考える上でも海外の人を意識をしていたのですか?磯山晶 「離婚しようよ」プロデューサー:世界に配信するからといって、いかにも世界に受けそうな日本の姿というものは探していませんでした。よりリアルに描くために報道や選挙のエキスパートに監修を依頼しました。夫は三世議員で、 奥さんは女優で地元のドラマに出ていて人気、みたいな夫婦がいたらどうなるかな?っていうのを想像しながら作っていましたむしろ、脚本の内容が海外の人には全く伝わらないんじゃないかな?と思うようなシーンもあるんですけど…例えば、松坂桃李さんが討論会で観衆の注目を引くために、ものすごい声をちっちゃく喋るシーンがあって。それは、前の晩に仲さん演じる奥さんが、声をちっちゃくすると、みんなが「おっ」って思うから小さく話せとアドバイスをするんですよね。その中で、奥さんが声の小ささの目安を説明する時に、「難破船を歌う前の中森明菜みたいに」と言うセリフがあって。絶対伝わらないんじゃない?って脚本家の大石静さんは言ってたんですけど、脚本家の宮藤官九郎さんと私は「でも、日本でウケない前に海外でウケることばっか考えても駄目ですよね?」、みたいな感じで大石さんの心配は一度忘れて、そのシーンを撮りましたね。ーー海外のドラマ・映画を見ていると、その国ならではの冗談なんだなって思うシーンありますよねそれはそれで、「もう声ちっちゃくするのね」ってことで海外の人も納得しちゃうから。逆に、日本人は笑って頂けたらいいなと。STORY夫は新人議員、妻は俳優。結婚5年目の東海林夫妻は、夫婦生活の危機を迎えていた。仕事や世間体のためにおしどり夫婦を演じているが、家ではSNSの生配信の時しかほとんど会話が無く、顔も合わせることもない。実家からのプレッシャーやスポンサー契約など、離婚への道のりは険しいが、愛はもう冷めきってしまった。離婚という揺るぎない目標に向かって、二人はともに歩み始めるが‥。Netflixシリーズ「離婚しようよ」[出演者]松坂桃李、仲里依紗、錦戸亮、板谷由夏、山本耕史、古田新太[スタッフ] 監督:金子文紀、福田亮介、坂上卓哉 脚本:宮藤官九郎、大石静 エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一(Netflix) プロデューサー:磯山晶、勝野逸未 制作プロダクション:TBSスパークル 製作著作:TBSテレビ
全世界共通のテーマ「離婚」を描いた本作だが、海外の視聴者からは登場人物や設定からにじみ出る“日本らしさ”がウケているという。「離婚」を描く中で見えた、その“日本らしさ”とは?制作プロデューサーの磯山晶にNetflix特有の制約と向き合う制作の裏側を聞いた。
ーー「離婚しようよ」というタイトルは「離婚」をポジティブに捉えた挑戦的なタイトルですよね
磯山晶 「離婚しようよ」プロデューサー:離婚した方が幸せになる人も絶対にいますし。離婚をネガティブな意味だけで捉える人は少なくなってきていると思います。実際、パートナーシップがあったとしても、「結婚」「婚姻関係」でなくてもいいという人もいれば、長い人生、ひとりの人だけでいいという人もいます。まさに「多様性の時代」ですよね。
その上で、吉田拓郎さんの「結婚しようよ」という名曲がありますので。ご本人の許可を得て、そちらを元にさせていただきました。
ーーNetflixを通じて全世界配信の本作、なぜ「離婚」をテーマに?
Netflixと打ち合わせをしたときに、「結婚」「離婚」「夫婦」は全世界共通のテーマなので、そこに“日本らしさ”を出せたらいいんじゃないかとディスカッションしたのを覚えています。
「離婚」そのものを描くだけでも、日本の国民性みたいなものは滲み出ると思っています。アメリカ人とかだと「離婚したいな」と思ったらすぐに離婚しちゃう。だから海外の人から見たら「離婚したいのにできない」というのが日本人特有かもしれない、というところから話しました。
ーー松坂桃李さんが政治家を、仲里依紗さんが女優を演じていますが、その役柄にも日本らしさが?
旦那さんは世襲議員で、地元で人気の女優の奥さんと離婚すると、「次の選挙で勝てないかもしれない」というデメリットが不安だと。奥さんは女優として主婦モノのCMを多く抱えているから離婚してイメージが壊れると生活に支障をきたすと。
だから、選挙事務所の後援会とか、芸能事務所の社長とか、そういう人たちに「絶対に離婚するな」と言われてしまう。でも、お互いに「絶対に離婚する」という目標に向かって一致団結する中で逆に仲良くなっていくっていう。その反比例が面白いと思って。
ーー作中で描かれる「日本の選挙」にも日本的な雰囲気を感じますが
雨が降っていても候補者が傘をささなかったり、田んぼに入っていって有権者と握手するみたいな「どぶ板選挙」の描写をやりたかったです。あとは本人は「本人」って書いてあるタスキを、妻には「妻」と書いてあるタスキをさせて、自転車にのって選挙区を走るとか。政策のことはほとんど語らず「お体大切に」って言う感じとか。日本の地方選挙は面白いなっていう。
ーーNetflixを通じて全世界に配信する上で、なにか制約はありましたか?
高橋智大 TBS・プラットフォームビジネス局DX戦略部長:それぞれのお国事情、あとは宗教によっては「この表現が大丈夫なのか」みたいなことなど、最初から世界を意識してのドラマ作りという点がこれまでとは違うところでした。
磯山晶 「離婚しようよ」プロデューサー:例えば、松坂桃李さんが演じる東海林大志という政治家は、おバカな状態からスタートして、ストーリーを追うごとに人として成長していくんですけど。どういうおバカぶりなのかをNetflix側に伝えるために、「こういう時に、こういうことを言っちゃう人」みたいな例えを箇条書きで羅列していたのですが、Netflix側はそれにすごく反応しました。
本当にいろんな人種の方が視聴するので、おバカな設定とはいえ、世界中の方が嫌な思いをしないよう気を付けてほしいと。台本作りの前の段階で言われましたね。
ーーNetflixらしい制約ですね。ストーリーを考える上でも海外の人を意識をしていたのですか?
磯山晶 「離婚しようよ」プロデューサー:世界に配信するからといって、いかにも世界に受けそうな日本の姿というものは探していませんでした。よりリアルに描くために報道や選挙のエキスパートに監修を依頼しました。夫は三世議員で、 奥さんは女優で地元のドラマに出ていて人気、みたいな夫婦がいたらどうなるかな?っていうのを想像しながら作っていました
むしろ、脚本の内容が海外の人には全く伝わらないんじゃないかな?と思うようなシーンもあるんですけど…
例えば、松坂桃李さんが討論会で観衆の注目を引くために、ものすごい声をちっちゃく喋るシーンがあって。それは、前の晩に仲さん演じる奥さんが、声をちっちゃくすると、みんなが「おっ」って思うから小さく話せとアドバイスをするんですよね。その中で、奥さんが声の小ささの目安を説明する時に、「難破船を歌う前の中森明菜みたいに」と言うセリフがあって。
絶対伝わらないんじゃない?って脚本家の大石静さんは言ってたんですけど、脚本家の宮藤官九郎さんと私は「でも、日本でウケない前に海外でウケることばっか考えても駄目ですよね?」、みたいな感じで大石さんの心配は一度忘れて、そのシーンを撮りましたね。
ーー海外のドラマ・映画を見ていると、その国ならではの冗談なんだなって思うシーンありますよね
それはそれで、「もう声ちっちゃくするのね」ってことで海外の人も納得しちゃうから。逆に、日本人は笑って頂けたらいいなと。
STORY夫は新人議員、妻は俳優。結婚5年目の東海林夫妻は、夫婦生活の危機を迎えていた。仕事や世間体のためにおしどり夫婦を演じているが、家ではSNSの生配信の時しかほとんど会話が無く、顔も合わせることもない。実家からのプレッシャーやスポンサー契約など、離婚への道のりは険しいが、愛はもう冷めきってしまった。離婚という揺るぎない目標に向かって、二人はともに歩み始めるが‥。Netflixシリーズ「離婚しようよ」[出演者]松坂桃李、仲里依紗、錦戸亮、板谷由夏、山本耕史、古田新太[スタッフ] 監督:金子文紀、福田亮介、坂上卓哉 脚本:宮藤官九郎、大石静 エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一(Netflix) プロデューサー:磯山晶、勝野逸未 制作プロダクション:TBSスパークル 製作著作:TBSテレビ