夏の定番レジャーに君臨する“プール”。全国各地にあるレジャープール施設に行けば、25mプールのみならず、人工的に波を発生させる「波のプール」や、水槽内を水が流れる「流水プール」、そして流れる水に身を任せるすべり台「ウォータースライダー」など、水に関わるさまざまなアトラクションを楽しむことができる。
【写真】この記事の写真を見る(2枚) プールで涼を取りながら、レジャーも満喫できる一挙両得の施設だが、利用中に身の危険を感じた経験がある人もいるだろう。そこで今回は、プールにまつわる危険な体験談を紹介しよう。

◆◆◆走り出した息子を、プールサイドで見失い… 親子連れで賑わう夏休みのプール。相田智之さん(仮名)は、数年前に当時5歳の我が子と行ったプールでヒヤリ体験をしたという。「そこは、屋内に子ども用のプールがあり、外にはスライダーと流れるプールが設けられたプール施設でした。温泉に併設されたプールで、敷地はそれほど広くありませんが、家族連れにはちょうどいいサイズ感なので、毎年利用している場所です」iStock.com 相田さん親子は、脱衣所で水着に着替えてプールサイドに向かった。すると、プールを前にしてテンションが上がった息子さんが、一目散に走り出したという。「その際『走っちゃダメだよ』と声をかけながら、息子から一瞬目を離してしまったんです。すぐに彼がいたはずの場所を見たのですが、そこには誰もいませんでした。呼びかけても返事がなくて、完全に見失ってしまい、かなり焦りましたね」 相田さんが必死に探していると、子ども用の浅いプールの中で小学生に抱きかかえられている我が子の姿が目に入った。「どうやら走り出した勢いでプールに飛び込み、水の中に頭まですっぽり入って溺れてしまったようでした。その一連の様子を近くで見ていた少年が、息子を抱き上げてくれたんです。子ども用のプールでも油断してはいけない、と身を以て感じましたね」 幸い息子さんは大事に至らず、その後も水遊びを楽しんだというが、一方の相田さんは奥さんに烈火のごとく叱られたという。人気の 「流れるプール」は危険スポットにもなる? 大学時代に、市民プールで監視員のアルバイトをしていた田中裕太さん(仮名)は、仕事中に人命救助を行った経験を話してくれた。その日彼は、監視用の高いイスに座って、流れるプールの監視を担当していたという。「いくつかあるプールの中でも流れるプールは人気が高く、いつも多くの来場客でごった返していました。中に入っていると周囲の状況はよくわからないと思いますが、上から見ていると、危険な遊び方をしている人は目に入るんですよね」 そのとき、田中さんが注視していたのは2人の女性客とその子ども。ママ友らしき女性たちが、2歳前後の幼児を載せた浮き輪を引っ張りながら、流れるプールの中を漂っていたという。「ふたりともおしゃべりに夢中になっていたので『危ないな』と思って見ていたんです。しばらくすると、子どもが浮き輪の穴から水の中に落ちる瞬間が見えたので、すぐにプールに飛び込みました。早めに救助できたので事なきを得ましたが、子どもが落ちたときはお母さんたちも気付いていなくて。もしも自分が見ていなかったら、どうなっていたかわからないですよね……」 田中さんは「小さな子がプールにいるときは、より注意深く見るようにしていました」と当時を振り返った。混みすぎていて、水面に顔が出せない 実際に幼少期にプールで危険にさらされたときの記憶が、大人になった今も鮮明に残っている、という声も寄せられた。「幼稚園生の頃、流れるプールで潜水しながら泳いでいました。息継ぎをするために顔を出そうとしたのですが、頭の上が人で埋め尽くされていて、水面に顔が出せなくなってしまったんです。 かなりギリギリの状況でしたが、プールサイド近くのわずかな隙間を見つけて、やっと呼吸ができました。今思うと、無理にでも顔を上げれば問題なかったのですが、少しパニックになっていたように思います」(20代・男性)「4歳の頃に、旅行先のホテルのプールで溺れかけました。何の変哲もない25mプールに“台座”で子どもが遊ぶ用の浅瀬が作られていたのですが、そこから足を滑らせて深いところに落ちてしまったんです。近くに親も親戚もいたのですが、静かに溺れていたので気付いている様子もなくて……。 当然、泳げないので、必死にもがいて自力で台座に這い上がりました。幼いながらに怖かったですね」(30代・女性)兄にしがみついたら、2人で溺れてしまい… 幼い頃のプールの思い出が、後の人生に影響するケースもある。小島智さん(仮名)は、7歳のときに家族で訪れたドイツのプールレジャー施設での体験が、今でも尾を引いていると話す。「最初に25mプールに入ったのですが、そこは潜水用のプールだったようで、水深が4mもあったんです。足もつかず、溺れかけていたところを父親が助けてくれました。 その次に入ったのが、波が出るタイプのプール。日本の波のプールをイメージしていたのですが、想像よりも水深があって、7歳の自分にとっては波も高かったんですよね。これはまずいと思い、近くにいた兄にしがみついたら、無意識に兄にヘッドロックをキメてしまっていて……。ふたりで溺れているのを見つけてくれた監視員の人が救助してくれました」 すでに2回も水に呑まれてしまった小島さんだが、悲劇はこれで終わらなかった。「少し休憩をして落ち着いたので、次は流れるプールに行きました。ゆるやかな流れに身を任せていたら、プールの中に渦ができるほど高速で回転している場所があり、ちょうどその渦にはまってしまったんです。ここでも流れに足をとられて抜け出せず、またしても係員に助けてもらいました。1日のうちに3回溺れて2回も救助されたのがトラウマになり、20代後半になった今も水が怖くて泳げないままです」 海外のプール施設なので、日本とは勝手が違うかもしれないが、日本のプールも苦手になるほどハードな体験になったようだ。◆ 警察庁生活安全局生活安全企画課が発表した「令和3年における水難の概況」によると、昨年発生した水難事故による死者・行方不明者の数は744人。そのうち、もっとも多いのは海での水難事故で366人、ついで河川が253人となり、プールの死者・行方不明者は4人にとどまっている。 海や川など自然相手に比べればリスクは低いかもしれないが、危険がないわけではない。夏の楽しいレジャーがツラい思い出にならないように、プールで遊ぶ際も細心の注意を払う必要がありそうだ。(清談社)
プールで涼を取りながら、レジャーも満喫できる一挙両得の施設だが、利用中に身の危険を感じた経験がある人もいるだろう。そこで今回は、プールにまつわる危険な体験談を紹介しよう。
◆◆◆
親子連れで賑わう夏休みのプール。相田智之さん(仮名)は、数年前に当時5歳の我が子と行ったプールでヒヤリ体験をしたという。
「そこは、屋内に子ども用のプールがあり、外にはスライダーと流れるプールが設けられたプール施設でした。温泉に併設されたプールで、敷地はそれほど広くありませんが、家族連れにはちょうどいいサイズ感なので、毎年利用している場所です」
iStock.com
相田さん親子は、脱衣所で水着に着替えてプールサイドに向かった。すると、プールを前にしてテンションが上がった息子さんが、一目散に走り出したという。
「その際『走っちゃダメだよ』と声をかけながら、息子から一瞬目を離してしまったんです。すぐに彼がいたはずの場所を見たのですが、そこには誰もいませんでした。呼びかけても返事がなくて、完全に見失ってしまい、かなり焦りましたね」
相田さんが必死に探していると、子ども用の浅いプールの中で小学生に抱きかかえられている我が子の姿が目に入った。
「どうやら走り出した勢いでプールに飛び込み、水の中に頭まですっぽり入って溺れてしまったようでした。その一連の様子を近くで見ていた少年が、息子を抱き上げてくれたんです。子ども用のプールでも油断してはいけない、と身を以て感じましたね」
幸い息子さんは大事に至らず、その後も水遊びを楽しんだというが、一方の相田さんは奥さんに烈火のごとく叱られたという。
大学時代に、市民プールで監視員のアルバイトをしていた田中裕太さん(仮名)は、仕事中に人命救助を行った経験を話してくれた。その日彼は、監視用の高いイスに座って、流れるプールの監視を担当していたという。
「いくつかあるプールの中でも流れるプールは人気が高く、いつも多くの来場客でごった返していました。中に入っていると周囲の状況はよくわからないと思いますが、上から見ていると、危険な遊び方をしている人は目に入るんですよね」
そのとき、田中さんが注視していたのは2人の女性客とその子ども。ママ友らしき女性たちが、2歳前後の幼児を載せた浮き輪を引っ張りながら、流れるプールの中を漂っていたという。
「ふたりともおしゃべりに夢中になっていたので『危ないな』と思って見ていたんです。しばらくすると、子どもが浮き輪の穴から水の中に落ちる瞬間が見えたので、すぐにプールに飛び込みました。早めに救助できたので事なきを得ましたが、子どもが落ちたときはお母さんたちも気付いていなくて。もしも自分が見ていなかったら、どうなっていたかわからないですよね……」
田中さんは「小さな子がプールにいるときは、より注意深く見るようにしていました」と当時を振り返った。
実際に幼少期にプールで危険にさらされたときの記憶が、大人になった今も鮮明に残っている、という声も寄せられた。
「幼稚園生の頃、流れるプールで潜水しながら泳いでいました。息継ぎをするために顔を出そうとしたのですが、頭の上が人で埋め尽くされていて、水面に顔が出せなくなってしまったんです。
かなりギリギリの状況でしたが、プールサイド近くのわずかな隙間を見つけて、やっと呼吸ができました。今思うと、無理にでも顔を上げれば問題なかったのですが、少しパニックになっていたように思います」(20代・男性)
「4歳の頃に、旅行先のホテルのプールで溺れかけました。何の変哲もない25mプールに“台座”で子どもが遊ぶ用の浅瀬が作られていたのですが、そこから足を滑らせて深いところに落ちてしまったんです。近くに親も親戚もいたのですが、静かに溺れていたので気付いている様子もなくて……。
当然、泳げないので、必死にもがいて自力で台座に這い上がりました。幼いながらに怖かったですね」(30代・女性)
幼い頃のプールの思い出が、後の人生に影響するケースもある。小島智さん(仮名)は、7歳のときに家族で訪れたドイツのプールレジャー施設での体験が、今でも尾を引いていると話す。
「最初に25mプールに入ったのですが、そこは潜水用のプールだったようで、水深が4mもあったんです。足もつかず、溺れかけていたところを父親が助けてくれました。
その次に入ったのが、波が出るタイプのプール。日本の波のプールをイメージしていたのですが、想像よりも水深があって、7歳の自分にとっては波も高かったんですよね。これはまずいと思い、近くにいた兄にしがみついたら、無意識に兄にヘッドロックをキメてしまっていて……。ふたりで溺れているのを見つけてくれた監視員の人が救助してくれました」
すでに2回も水に呑まれてしまった小島さんだが、悲劇はこれで終わらなかった。「少し休憩をして落ち着いたので、次は流れるプールに行きました。ゆるやかな流れに身を任せていたら、プールの中に渦ができるほど高速で回転している場所があり、ちょうどその渦にはまってしまったんです。ここでも流れに足をとられて抜け出せず、またしても係員に助けてもらいました。1日のうちに3回溺れて2回も救助されたのがトラウマになり、20代後半になった今も水が怖くて泳げないままです」 海外のプール施設なので、日本とは勝手が違うかもしれないが、日本のプールも苦手になるほどハードな体験になったようだ。◆ 警察庁生活安全局生活安全企画課が発表した「令和3年における水難の概況」によると、昨年発生した水難事故による死者・行方不明者の数は744人。そのうち、もっとも多いのは海での水難事故で366人、ついで河川が253人となり、プールの死者・行方不明者は4人にとどまっている。 海や川など自然相手に比べればリスクは低いかもしれないが、危険がないわけではない。夏の楽しいレジャーがツラい思い出にならないように、プールで遊ぶ際も細心の注意を払う必要がありそうだ。(清談社)
すでに2回も水に呑まれてしまった小島さんだが、悲劇はこれで終わらなかった。
「少し休憩をして落ち着いたので、次は流れるプールに行きました。ゆるやかな流れに身を任せていたら、プールの中に渦ができるほど高速で回転している場所があり、ちょうどその渦にはまってしまったんです。ここでも流れに足をとられて抜け出せず、またしても係員に助けてもらいました。1日のうちに3回溺れて2回も救助されたのがトラウマになり、20代後半になった今も水が怖くて泳げないままです」
海外のプール施設なので、日本とは勝手が違うかもしれないが、日本のプールも苦手になるほどハードな体験になったようだ。

警察庁生活安全局生活安全企画課が発表した「令和3年における水難の概況」によると、昨年発生した水難事故による死者・行方不明者の数は744人。そのうち、もっとも多いのは海での水難事故で366人、ついで河川が253人となり、プールの死者・行方不明者は4人にとどまっている。
海や川など自然相手に比べればリスクは低いかもしれないが、危険がないわけではない。夏の楽しいレジャーがツラい思い出にならないように、プールで遊ぶ際も細心の注意を払う必要がありそうだ。
(清談社)