◆初公判で金髪から黒髪に 愛知県警中署は2023年3月8日、住所不定・無職の吉野凌雅被告(21)と、同じく住所不定・無職の少年(19)、吉野被告の交際相手のA子(15)を威力業務妨害の疑いで逮捕したと発表した。
同年2月5日、共犯者の少年は吉野被告が『くら寿司名古屋栄店』で寿司を手づかみで食べ、しょうゆ差しの注ぎ口を直接口に含むような動画を撮影し、それをツイッター(現X)に上げたことから、大炎上していた。
この行為によって、くら寿司にはクレームが殺到し、97個のしょうゆ差しをすべて廃棄し、テーブルのものもすべて差し替えることになり、これだけで57万円の損害が出たという。店は翌日に被害届を提出し、一連の迷惑動画事件では、全国初の逮捕者となった。
同年7月20日に名古屋地裁で開かれた初公判で、吉野被告は金髪から黒髪の短髪姿に変わり周囲を驚かせた。初公判を前にテレビのインタビューに対して「たくさんの方々を傷つけてしまったので、その気持ちを反省の思いを込めて、この法廷で意見として述べたい」と述べていた。
「吉野被告は第2回公判の被告人質問で犯行の動機を問われ、『自分の承認欲求のためだった。人気者になりたかった。バカなことをした』などと述べました。逮捕直後は自分のことしか考えられなかったが、父親が真剣に自分に向き合ってくれることに心を打たれ、保釈後はどうしてもくら寿司に謝罪文を届けたいと思い立ち、真っ先に訪問したと話しました」(名古屋地裁詰め記者)
◆交際相手の“売春の稼ぎ”で全国を転々
発言を受け止めれば真人間に生まれ変わったともとれるが、果たして本当に“改心”したのだろうか。横槍を入れるつもりはないが、裁判記録から明らかになった吉野被告の素性について改めて確認していきたい。 吉野被告は工業高校卒業後、運輸会社などに勤めたが、20歳頃から定職に就かず、SNSで知り合った女性に貢がせて飯を食う、女衒ともいえる生活をしていた。
一緒に逮捕された交際相手のA子とも2022年9月頃、ツイッター(現X)を通じて知り合って肉体関係を持ち、自分に貢がせる売春婦に仕立て上げていた。そのことを知ったA子の母親が吉野被告との交際に反対し、「外泊しないこと」「売春しないこと」といった誓約書を書かせると、A子はそれに反発。「親の縛りが厳しくてしんどい」と誓約書の内容をLINEで吉野被告に報告し、11月中旬に家出した。A子の母親は困り果て、12月には警察に相談していた。
「家を出てオレとどっかへ行こう。名古屋なら援助交際で稼げる。東京だと親から近いし、援助交際の単価も安い。名古屋で2人で生活しよう」
神奈川県横浜市在住のA子を東京都新宿区歌舞伎町に呼び寄せ、高速バスに乗って東京から名古屋へ移動した。A子のスマホは捨てさせて、吉野被告のスマホを使い、ツイッター(現X)やワクワクメールで客を探していた。吉野被告はメッセージを書き込む係を担当していた。
◆捜査の手から逃れるように福岡へ
吉野被告は「オレもホストで稼ごうと思う」と提案したことはあったが、A子が泣いて嫌がったので、A子に援助交際で生活費全般を稼がせ、ホテルを泊まり歩いていた。
その渦中に起きたのがくら寿司ペロペロ事件なのだ。その場にはA子もいた。共犯者の少年もA子と同時期にツイッター(現X)で知り合ったクチで、吉野被告の面白い行動を撮影して、ツイッターに上げる係をしていた。

さらに広島に移動し、その後、名古屋に戻ってきたところを待ち構えていた警察に逮捕されたのだ。吉野被告はA子を支配下に置き、営利誘拐した容疑でも再逮捕された。
◆「女の子は守ってあげないと」
仮にも交際相手だったA子に売春させ、その金を吸い上げていたことについて、吉野被告は第2回公判で次のように述べている。
「自分がすべて悪いです。逮捕後に考えが変わった。交際相手の女の子は利用するんじゃなくて、守ってあげないといけない。それがはっきり分かっていなかった。A子にはもう会うつもりはありません。自分が人生をメチャクチャにしてしまった。一生干渉するつもりもありません。A子の親御さんにも大切な娘さんを傷つけてしまい、申し訳なく思っています。反省している気持ちを行動で示していきたい」
吉野被告は刑務所や少年院を出た若者たちの就職を支援する企業の一つに就職予定で、現在は塗装工の修行をしているという。だが、くら寿司に対する賠償は何一つしていない。まさにこれからが真価を問われるところだろう。
<取材・文/諸岡宏樹>