貧困などで困窮しているのに“男性だから”と手を差しのべてもらえない男性が「弱者男性」と呼ばれている。先行き不安な時代が彼らを社会の隅に追いやったのか? 彼らが抱える“生きづらさ”の正体を突き止める。◆500人アンケートで見えてきた令和の“弱者男性”の姿
1996年の労働者派遣法改正、新自由主義経済の拡大、女性の社会進出、外国人労働者の流入……。バブル崩壊以降、さまざまな要因から低所得にあえぐ非正規雇用の労働者が増加。そこで表面化したのが「弱者男性」の存在だ。
「一般的には不安定な雇用で経済的に困窮し、社会的ながりが希薄な男性を指すものでした」と語るのは男性論に詳しい批評家の杉田俊介氏。
弱者男性は一般的に「貧困」「未婚」「障害」のいずれかを併せ持つとされている。
◆「自分は典型的な弱者男性」49歳の嘆き
「自分は典型的な弱者男性だと思います。年収は歩合制で280万~300万円を行ったり来たりです」
運送会社に勤める千葉県在住の大西隆さん(仮名・49歳)はため息をつく。
「コロナ禍前は20年ほど製造業に勤めていましたが、自分は定期的に休むので給料は300万円台で横ばい。満足に働けない心苦しさもあり同僚とも馴染めませんでした」
大西さんが定期的に休職を余儀なくされたのは長年パニック障害を抱えていたからだ。
「父親が昭和気質で、僕が内気なことを言うと“男のくせに”と殴る。それがトラウマで学生時代は無理に陽気に振る舞い空回り。そのうち、学校で突然、口が利けなくなることが頻繁に起きた。それがパニック障害の発作と知るのは、社会人になってからです」
◆「自分を愛してくれる女性に出会えたら救われる気がします」
コロナ禍をきっかけに会社を自主退職。現在の職に就く。
「他人と過ごす時間が少ないのは楽ですね。ただ……」
大西さんは生涯一度も女性と交際したことがないという。
「親譲りの低身長で容姿もひどい。中学時代、女子に『気持ち悪い』と言われたトラウマもある。婚活でもろくに相手にされない。それでも、自分を愛してくれる女性に出会えたら救われる気がしますね」
◆貧困層以外にも拡大する“弱者男性”
今回、週刊SPA!が日本人の平均年収である450万円以下で「自分を弱者男性だと思うか」を20~60代の男性3800人にアンケートしたところ約3割が認める形に。
そこから500人を抽出すると、その平均年収は236万円と過酷な経済状況が浮き彫りに。実際、「Q2・自分が弱者男性だと思う理由」については「年収が少ない」、「貯金が少ない」といった経済的な理由が1位と2位を占めた(詳しい結果は後述)。
◆Q1・自分を「弱者男性」だと思いますか?
思う……14.7%少し思う……17.2%どちらとも言えない……27.3%あまり思わない……19.6%思わない……21.2%
日本人の平均年収である年収450万円以下の男性3080人に調査したところ、自分を「弱者男性」だと「少し思う」と「思う」が3割を超すという結果になった。
◆Q2・自分が「弱者男性」だと思う理由(3つまで複数回答可)
年収が少ない……77.2%貯金が少ない……36.0%病気・障害がある……28.0%独身である……26.4%学歴が低い……18.8%容姿が悪い……18.2%雇用形態が不安定……17.6%出世していない……17.6%異性と付き合ったことがない……7.2%離婚歴がある……4.8%その他……2.8%
1位と2位が「お金」に関する事柄という結果に。3位は「障害・病気」を理由とする人が多く、「その他」には対人関係への悩みも多かった。
※アンケート概要:全国の20~60代男性500人に調査を実施(調査期間:9月25日~27日)
一方で弱者男性は少しずつ変容が進み、明確な“貧困層”以外にも拡大している。
男性問題に詳しいライターのトイアンナ氏は「女性からDVを受けたり、離婚後に子供の親権を奪われた男性など、旧態依然の男性像に基づいた社会設計に苦しむ男性の声も大きくなっている」と話す。
男性専門のカウンセリングを行っている臨床心理士・濱田智崇氏も「コロナ禍以降、妻やパートナーからのDVを訴える男性の相談は増えており、配偶者や恋人がいても心理的な“孤独”を抱える男性が増えています」と語る。
トイアンナ氏は「もともと古い男性像の呪縛に苦しむ男性はいましたが、長引く不況や社会不安が“男のしんどさ”に拍車をかけた」と分析。
令和の“弱者男性”が抱える生きづらさの正体とは何か? 今も現状にあえぐ男たちの声を検証する。
【批評家 杉田俊介氏】文芸評論や労働/貧困問題について著述。近著に『男が男を解放するために非モテの品格・大幅増補改訂版(Pヴァイン)
【ライター トイアンナ氏】マーケターとして勤務後、ライターとして独立。恋愛とキャリアを中心に執筆。近著に『ハピネスエンディング株式会社(小学館)』
【臨床心理士 濱田智崇氏】京都橘大学総合心理学部准教授。’95年、日本初の男性専用相談ホットラインを開設。全国の“男の生きづらさ”の相談に取り組む
取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/宮下祐介 モデル/高橋一路※10月17日発売の週刊SPA!特集「新型[弱者男性]の肖像」より