海賊版サイト「漫画村」を運営し、著作権法違反で2019年に逮捕され、懲役3年などの実刑判決を受けた星野ロミ氏。この11月に仮釈放されたという星野氏と、ひろゆき氏が緊急対談を行った。
漫画家が心血を注いで描いた作品を、違法にタダ読みさせた星野氏に対して、出版大手3社は19億円の損害賠償訴訟を起こしている。一方、星野氏は自分の行為を合法だと主張しつつ、刑事裁判では控訴しなかった。いったいなぜなのか? 合法だと言う根拠はなにか? ネットビジネスの瀬戸際を生きてきた2人の対談をお届けする。
◆違法な海賊版サイト元運営者に令和のネット炎上王が切り込む!
ひろゆき(以下ひろ):お勤めご苦労さまです! 3年ぶりとはいえ、久しぶりの外の世界は慣れました?
星野:ようやくって感じです。刑務所では独房での生活だったので、人との関わりは少なく、英語の勉強ばかりしてました。
ひろ:それはなぜ?
星野:出所したら、世界を相手に何か仕かけたいなと思っていて。
ひろ:星野さんってサービス運用者としての能力値は割と高いですよね。漫画村の仕組みは、他のサーバーにアップされた画像を漫画村内で表示するものですよね。それだと画像がうまく表示されないことも多いのに、画像が抜けないように調整しつつ、膨大なアクセスを捌いていましたし。
星野:俺は合法になるようシステムを作った点を評価されていると思っていました(笑)。
◆「誰も見ていない景色を楽しんでいる快感はあります」
ひろ:僕も漫画村は基本的には合法サイトだと思ってました。リーチサイト関連の法律は、著作権法とは別なので。
星野:漫画を無断でネット上にアップロードすることは当時、著作権法違反でした。なので、すでにアップロードされている漫画の画像にアクセスできるサイトを作れば、合法だと考えたんです。これはリーチサイトと呼ばれるもので、漫画村はこの類のひとつでした。ただ現在では、漫画村の影響でリーチサイトは違法になりましたが……。
ひろ:いろんな技術を組み合わせてサービスを実現する、いい意味でのハック能力は高いと思いますよ。
星野:そういう穴を突いてハックするのって、スゴくないですか?
ひろ:抜け道を探す考え方は重要な気はしますけど。世間がそれを評価するかは、またちょっと違ってくるかなと。何かのシステムをハックするのが快感?
星野:誰も見ていない景色を楽しんでいる快感はありますね。読者には広告が表示されていないのにもかかわらず、広告料を稼げる仕組みもそうでした。漫画村のサイトが表示されると別タブで広告のみ掲載されるものです。裏広告と呼ばれ、当時から「広告費の架空請求」とか言われてますけど、それもシステムの穴を突いただけで。そもそも広告会社ってシステムを理解していないんです。本来なら広告会社が対策すべき話のはず。
ひろ:たしかに広告会社はシステムを見直すべきだし、広告主も気づくべきだとは思います。自分の広告が「どこのサイトに配信されているか?」なんて、調べればわかることですからね。
◆合法と主張しているのに控訴をしなかった理由
ひろ:地裁の判決を受け入れ、控訴はしなかったらしいですね。判決文にある共犯者にアップロードする指示を出したことが著作権法違反の該当行為だったからですか?

ひろ:控訴して高裁までいけば、まともな人が出てくるのでは?
星野:そういう話ではないんですよ。なので、外に出てから大勢が見えるところで闘うのが手っ取り早いと思って控訴しなかった。そもそも有罪になった理由のひとつは、誰も本質を理解していなかったからですし。だから、世論を味方につけ、本質を理解してもらおうと考えました。
◆「間違っていないのに言われる筋合いはない」
ひろ:どうやって世論を?
星野:SNSのフォロワーを伸ばして裁判の事実を理解できるように暴露して世論を形成する。そうやって日本の腐った裁判システムをぶっ壊す。「100倍返しだ!」と。現在は20億円の民事裁判の最中で、懲役も海外を合わせたら3年4か月も入ったという、ほぼ絶望的な状況から復活したらスゴいと思いません?
ひろ:それをぶっ壊すには、政治家にならないと難しくないですか?
星野:いや。世論を形成すればいけるはず。
ひろ:いまの日本のシステムは世論がつくっている気がしますけど。
星野:本質的に構造をわかっている人じゃないと壊せないんですよ。
ひろ:当時、星野さんは、「法律上問題はない」的なことを書いていて。理論上は正しくても、喧嘩を売ると揉め事になって結果として潰れるのが早くなるのに「何でこの人は好戦的なんだろう?」と思っていたんです。それはいまも変わらないですかね?
星野:まあ。というか、「間違っていないのに言われる筋合いはない」という話で、違法でないものを潰したいなら法律を変えるのが先だと思うんです。
【ひろゆき】実業家。’76年生まれ、東京都出身。中央大学在学中に掲示板の「2ちゃんねる(当時)」を開発し、管理人に。現在はフランスに在住し、英語圏の掲示板を運営
【星野ロミ】プログラマー。’91年生まれ。日本、イスラエルとドイツの三重国籍。漫画村運営者として、福岡県警に’19年に逮捕され、’21年に懲役3年などの実刑判決を受けた
◆漫画村事件を追い続けてきた記者が語る、海賊版サイトの害悪
「漫画の海賊版サイトは不滅です。いたちごっこなんですよ。サーバーが海外にあるなど、諸外国を巻き込む場合は著作権法などの日本の国内法は適用されません。ベトナムなど著作権法の概念がない国に“あえて”サーバーを置く悪質な方法も出てきています」
漫画村を5年以上追ってきた吉田弥記者(仮名・30代)の言葉は切実だ。コロナ禍で家での滞在時間が増加するなか、漫画の海賊版サイトの利用は’22年5月まで急増した。
◆奪われるメジャーデビューのチャンス
海賊版サイトは漫画家にどんな影響を与えているのだろうか。
「新人漫画家が手がけた作品はいま、電子版でしか単行本を作ってもらえないケースが多くなっているのです。出版社側としては、紙で出したときに売れないリスクがありますから。海賊版で電子版を読めるなら、誰も買わなくなりますよ。せっかく汗水垂らして作った作品なのに、海賊版サイトによって簡単に、メジャーデビューのチャンスが失われていくのです」
【社会部記者・吉田 弥(仮名)氏】大手新聞の記者で、これまでIT企業の動向や不祥事などを5年以上も追求。コインチェック流出事件やDeNAのウェルク問題などを担当してきた
※12/20発売の週刊SPA!「[緊急対談]ひろゆきVS漫画村・星野ロミ」より一部抜粋
取材・文/杉原光徳(ミドルマン) 板垣聡旨(本誌) 写真/野崎航正