この春、新たに社会人になった人にとって、待ち遠しいのが「初めての給料日」。
あれこれ、使いみちを思案している頃かと思います。社会に出てから何年たっても、初任給で買ったものは覚えている、という人も多いのではないでしょうか。今回はそんな初任給にまつわるお話です。
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物価上昇や採用難を背景に、初任給の引き上げを行う企業が相次いでいます。今年に入ってから「初任給…5・5万円増」や「大手、初任給上げ相次ぐ」など、景気のよい見出しが紙面を飾ることが増えました。
20年以上前から変わらなかった初任給の額を久々に引き上げるといったケースも目にします。少子化で人手不足が深刻さを増す中、人材投資を強化し、待遇改善を武器に優秀な人材を確保しようというのが狙いです。
財務状況の判断材料
では当の学生は、この状況をどう考えているのでしょうか。就職活動が解禁された3月、多くの就活生が企業選びを本格化するタイミングで、初任給の引き上げを就活で意識するかどうかを調査してみました。
グラフ(複数回答)を見ると、「意識しない」という人は全体の23・3%で、残りの7割以上が企業選びの際に意識していると答えました。具体的には、「受ける企業を選ぶ際に意識すると思う」が39・7%。内定を承諾するかなど「就職先を決定する際に意識すると思う」はほぼ半数(49・9%)に上りました。
学生からは、次のような声が寄せられました。
「物価高で生活が難しい状況になるし、奨学金もあるので、初任給から高いのはとても魅力的」(文系女子)という経済的に切実な声もあれば、「初任給を上げられるのは体力のある会社だと思うので、財務基盤を見極める材料の一つ」(文系男子)や「初任給を上げられる会社かどうかで、人を大切にする会社かどうかが分かる」(理系女子)など、財務状況や社員に対する姿勢を判断する材料にする、という意見も少なからず見られました。
意識に男女差も
一方で、「初任給が上がっても生涯年収が上がるとは限らない」(理系女子)や「初任給ではなく将来的にいくら得られるかのほうが重要」(文系男子)などのように、初任給の額に踊らされたくないという冷静な声も聞かれます。確かに、初任給が高くても、その後も給与が上がっていくという保証はありません。
なお、男女によっても差が見られ、男子のほうが初期の段階で意識する割合が高く、女子は最終的な意思決定の際に意識する割合が高いという傾向がありました。男子のほうがより大手志向が強いと捉えることもできそうです。
このように初任給引き上げ競争とも言うべき状況ですが、企業にとっては、初任給を引き上げた効果がどう出るのかが気になります。採りたい人材の獲得に向け、企業の試行錯誤は続きそうです。
(キャリタスリサーチ 武井房子)