ガーシーこと東谷義和(51歳)=敬称略=のインタビュー原稿をめぐる対応で朝日新聞の所属部署と衝突し、昨年8月末で朝日新聞社を退職した筆者・伊藤喜之は、その後もドバイに引き続き住み、取材を継続させてきた。
1年近くの取材の成果をまとめた『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』(講談社+α新書)が3月17日に発売される。本書でも触れられなかったエピソードも含め、マスコミでは報じられていない「ガーシー」の実像を伝えていく。
前篇に引き続き、ガーシーの妹(48歳)の告白を聞こう。
韓国アイドルBTSに会わせると言って知人女性約40人から総額約4千万円を集めて実現させなかった詐欺疑惑(すでに全員に弁済し、示談成立)などが持たれていた東谷だが、それは妹にとっても寝耳に水だったという。
「昔、私の元旦那が浮気した時も韓国旅行に行っていたお兄ちゃんが『正座させて待っとけ』と行って韓国から飛んで帰ってきてくれたり。困ったことがあったらすぐにお兄ちゃんって感じでなんでも昔から相談する仲でした。なんでも解決してくれるスーパーマンみたいな。だから(詐欺疑惑や億単位の借金があると聞いて)余計にショックすぎました」
兵庫県伊丹市の実家で。飾られていたガーシーこと東谷義和の写真立て
「父が(ギャンブルで借金をつくり)自殺した時は、ヤミ金から借りていたみたいで業者から督促の電話がガンガンかかってきた。借金の対処はお兄ちゃんが引き受けてくれて、『死んだやつからどう金取るねん』って言い返してくれて。返済しなくて大丈夫なようにしてくれた」
この時点で、私はドバイで東谷の取材を開始してすでに4ヶ月が経っていた。朝日新聞ドバイ支局長としてドバイに駐在していた私は昨年4月にドバイにある和食レストランで初めて接触して以来、彼のYouTubeチャンネル「ガーシーCH」の配信現場などで密着取材を続けていた。
配信では暴露対象者を口汚くののしりながらスキャンダルなどを暴露する姿を見てきた一方で、普段は周囲の仲間らと雑談をしていても冗談をいって場を盛り上げる。危なっかしさはありつつも、エネルギッシュでユニークな人物だという感想は抱いていたが、この母親と妹の証言から浮かび上がる優しさや正義漢があふれる人物像は少し意外な気がしたのだった。家族には見せていた優しさかたや、昨年5月の私の最初のロングインタビューでは、東谷本人は「自分は悪党だと思っていますよ」と語っていた。自分のことを悪党だとここまではっきり自認する人物も珍しいと思いながら、その後、彼が放つことになる印象的な言葉に唸ることになる。「カルロス・ゴーンの本とか、犯罪を犯した逃亡者の本が売れる訳じゃないですか。今の人々は『嘘の正義より真実の悪』を求めている面はあろうと思いますよ」(22年5月30日のオンライン出馬会見)「『悪党にしか裁けない悪』は絶対にある。警察や弁護士やまともな人では対応できないね」(22年8月19日、経済学者成田悠輔とのオンライン対談) ここまで悪党だと自認する男が家族には見せていた優しさやヒーローぶり。東谷を見つめるうえで、何か大事なことを見落としていたのかもしれない。この取材以来、私はそんなことを考えるようになった。昨年5月、参院選出馬を口説き落としにきたNHK党党首(当時)の立花孝志氏と生配信私は東谷のインタビュー原稿をめぐる対応で朝日新聞の所属部署と衝突し、昨年8月末で会社を退職することになった。しかし、その後もドバイに引き続き住み、取材を継続させてきた。1年近くの取材の成果をまとめたのが『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』(3月17日発売、講談社+α新書)だ。ガーシーCHの配信現場、参院選出馬、誕生日会、モーニングルーティンなど、ドバイでの東谷に密着し、その行動を追った。東谷の周囲に成人向け動画投稿サイト創業者で日本警察からマークされている者、暗号資産ビジネスでグレーな噂を抱えている者、学生闘争で挫折感を抱いた元赤軍派、交通事故で相手を植物状態にさせた若手経営者ら、日本社会に何らかのルサンチマン(遺恨)や情念を抱える者たちが数多く集まっていた。そして、その彼らが東谷のガーシーCHに対して陰に陽にさまざまな形で手を貸していることに気づき、一人ひとりにインタビューを重ねた。詳細はぜひ本書を手に取っていただきたいと思うが、この連載では本書でも触れられなかったエピソードも含めて私が目撃してきた、マスコミでは報じられていない「ガーシー」の実像を伝えていく。
配信では暴露対象者を口汚くののしりながらスキャンダルなどを暴露する姿を見てきた一方で、普段は周囲の仲間らと雑談をしていても冗談をいって場を盛り上げる。危なっかしさはありつつも、エネルギッシュでユニークな人物だという感想は抱いていたが、この母親と妹の証言から浮かび上がる優しさや正義漢があふれる人物像は少し意外な気がしたのだった。
かたや、昨年5月の私の最初のロングインタビューでは、東谷本人は「自分は悪党だと思っていますよ」と語っていた。自分のことを悪党だとここまではっきり自認する人物も珍しいと思いながら、その後、彼が放つことになる印象的な言葉に唸ることになる。
「カルロス・ゴーンの本とか、犯罪を犯した逃亡者の本が売れる訳じゃないですか。今の人々は『嘘の正義より真実の悪』を求めている面はあろうと思いますよ」(22年5月30日のオンライン出馬会見)
「『悪党にしか裁けない悪』は絶対にある。警察や弁護士やまともな人では対応できないね」(22年8月19日、経済学者成田悠輔とのオンライン対談)
ここまで悪党だと自認する男が家族には見せていた優しさやヒーローぶり。東谷を見つめるうえで、何か大事なことを見落としていたのかもしれない。この取材以来、私はそんなことを考えるようになった。昨年5月、参院選出馬を口説き落としにきたNHK党党首(当時)の立花孝志氏と生配信私は東谷のインタビュー原稿をめぐる対応で朝日新聞の所属部署と衝突し、昨年8月末で会社を退職することになった。しかし、その後もドバイに引き続き住み、取材を継続させてきた。1年近くの取材の成果をまとめたのが『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』(3月17日発売、講談社+α新書)だ。ガーシーCHの配信現場、参院選出馬、誕生日会、モーニングルーティンなど、ドバイでの東谷に密着し、その行動を追った。東谷の周囲に成人向け動画投稿サイト創業者で日本警察からマークされている者、暗号資産ビジネスでグレーな噂を抱えている者、学生闘争で挫折感を抱いた元赤軍派、交通事故で相手を植物状態にさせた若手経営者ら、日本社会に何らかのルサンチマン(遺恨)や情念を抱える者たちが数多く集まっていた。そして、その彼らが東谷のガーシーCHに対して陰に陽にさまざまな形で手を貸していることに気づき、一人ひとりにインタビューを重ねた。詳細はぜひ本書を手に取っていただきたいと思うが、この連載では本書でも触れられなかったエピソードも含めて私が目撃してきた、マスコミでは報じられていない「ガーシー」の実像を伝えていく。
ここまで悪党だと自認する男が家族には見せていた優しさやヒーローぶり。東谷を見つめるうえで、何か大事なことを見落としていたのかもしれない。この取材以来、私はそんなことを考えるようになった。
昨年5月、参院選出馬を口説き落としにきたNHK党党首(当時)の立花孝志氏と生配信
私は東谷のインタビュー原稿をめぐる対応で朝日新聞の所属部署と衝突し、昨年8月末で会社を退職することになった。しかし、その後もドバイに引き続き住み、取材を継続させてきた。1年近くの取材の成果をまとめたのが『悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味』(3月17日発売、講談社+α新書)だ。
ガーシーCHの配信現場、参院選出馬、誕生日会、モーニングルーティンなど、ドバイでの東谷に密着し、その行動を追った。東谷の周囲に成人向け動画投稿サイト創業者で日本警察からマークされている者、暗号資産ビジネスでグレーな噂を抱えている者、学生闘争で挫折感を抱いた元赤軍派、交通事故で相手を植物状態にさせた若手経営者ら、日本社会に何らかのルサンチマン(遺恨)や情念を抱える者たちが数多く集まっていた。そして、その彼らが東谷のガーシーCHに対して陰に陽にさまざまな形で手を貸していることに気づき、一人ひとりにインタビューを重ねた。
詳細はぜひ本書を手に取っていただきたいと思うが、この連載では本書でも触れられなかったエピソードも含めて私が目撃してきた、マスコミでは報じられていない「ガーシー」の実像を伝えていく。