広島市内の広島電鉄宮島線・草津駅で、鉄道ファンが貸し切った電車2台が数分にわたって停車し、その影響で、駅に隣接する踏切がしばらく開かなかったと、ツイッターで動画が投稿されて拡散している。
動画を見ると、鉄道ファンらが駅で撮影会をしているようにも見える。広島電鉄では、撮影のためではなく客の乗車確認で時間を取ったと説明し、「定時発車に努めるべきだった」と謝罪した。
電車2台が駅に止まっており、鉄道ファンがあちこち動いて、隣接の踏切などで写真を撮っている。
この2台は、宮島線で長年活躍している3100形の車両だ。うち1台は、宮島線開業100周年を記念して、9月にも予定されているリバイバル塗装の前だった。
一方で、踏切はバーが下りたままで、警報機が鳴り続けている。鉄道ファンは、ホーム上を走るなど撮影に夢中で、踏切で待っている人たちには無頓着な様子だ。
この動画は、2022年8月28日にツイッターで踏切待ちしたドライバーが投稿した。
ドライバーは、現場では同日15時ごろ、鉄道ファンが電車を貸し切って撮影会を行っていたのではないかと指摘し、車や自転車、歩行者が長い間、踏切が開くのを待っていたとした。電鉄側が鉄道ファンからの求めで電車の停車位置を動かしたりもしていたという。こうした行為はとても迷惑であり、遊びで人の時間を奪うことは止めてほしいと苦言を呈した。
踏切の道路は、一方通行の細道のため、車では逃げ道がなかったという。もし、救急車などの緊急車両が来たらどうするのかとの疑問も投げかけた。
投稿された動画は、3万回以上再生されており、様々な意見が寄せられている。鉄道ファンではなく電鉄側の責任ではないかといった声や、「係員配置して踏切開ける対応出来んかったんか」「普通こういうのは車庫でやるものだと思うけど…」との指摘が出ていた。
ドライバーによると、電車を貸し切った鉄道ファンの幹事をしていたという人物が、この騒ぎを受けてドライバーにツイッター上で謝罪してきた。
幹事だというこの人物は、このときは周りが見えておらず、踏切で待たせた人たちに迷惑をかけて申し訳なかったと謝罪したという。広島電鉄側にも、踏切が開かなかった経緯を説明してお詫びしたといい、二度とこのようなことがないようにしたいと説明したとしている。
この人物のツイッターアカウントは、その後非公開になった。
動画を投稿したドライバーは8月29日、J-CASTニュースの取材に対し、他に車2、3台が、踏切が開くのを待っていたと答えた。
草津駅の駅員は、撮影をしていた鉄道ファンと何か話していたといい、鉄道ファンの求めで運転士が停車位置を動かす様子を見たとした。なかなか撮影会が終わらず、4歳の娘がトイレを我慢していたため、ドライバーが大声で駅員に声をかけると、1分ぐらいしてようやく電車が動き出したとしている。
広島電鉄の広報担当者は29日、取材に対し、鉄道ファン30人の団体が電車2台を貸し切り、15人ずつ分かれて乗った上りと下りの電車が草津駅ですれ違う設定で運行していたとして、次のように説明した。
貸切電車は、イベントなどで利用できると、公式サイトで案内している。それによると、1行程で2~5万円ほどだ。
広島電鉄では、今回の騒ぎを受けて、ツイッター上でお詫び文を出した。そこでは、当日になって草津駅で客が乗車すると変更依頼を受けて乗車待ちをする事態になり、撮影会のような状況が生じてしまったと説明。付近数か所の踏切を約4分間遮断したとして、「このたびは、踏切を長時間遮断することとなり、ご通行の皆さまに多大なご迷惑をお掛けしましたことを、お詫び申し上げます」とつづった。そのうえで、「今後は、貸切運行のご乗車予定時刻・場所について、改めて入念に確認していくとともに、事前計画にない乗降者の制限など、発車の遅れが生じないよう努めます」としている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)