近年感染が拡大している「梅毒」。「感染実態」や「予防法」について、性感染症を専門とするプライベートケアクリニック東京 小堀善友院長に聞いた。
【映像】梅毒によって体中にできた皮疹
こちらのクリニックに訪れた梅毒の患者は2023年で430人。東京都の感染者の10%以上を診断したという。小堀院長は「最近はもう梅毒を当たり前にみるようになってきたのが実感」と話す。
そもそも梅毒とはどのような病気なのだろうか?
小堀院長は「梅毒は性交渉などによって感染する感染症。最初は感染した場所、例えば陰茎や膣などに病変を作り、その後体に広まることによって、体にぶつぶつができたりだとか様々な症状を引き起こす」と説明。
梅毒に感染するとどのような症状が起きるのだろうか?
「鬼(2~6週間後)では感染した部位に主にしこりなどができる。オーラルセックスでうつった人は唇にしこりができる人もいる。鬼が過ぎるとしこりがなくなってしまう。『治ったのかな』と誤解してしまうが、その後、3カ月くらい経つと、体中に『バラ疹』という皮疹が出たり、手や足に乾癬(かんせん)というぶつぶつができるなどの症状が出ることがある。体に皮疹ができたとしても、それもしばらく経つと消えてしまう。そして感染して1年以上経つと『症状は全く起きていないが感染する力を持ち続けている』という場合になることもある」
梅毒に感染しても症状が起きない場合があり、感染に気づかず、他の人にうつしてしまうケースが多々あるという。
「『潜伏梅毒』という何も症状が起きない状況になるとたちが悪い。検査しないとわからない。梅毒は感染したとしても次の日に検査で陽性が出るわけではない。梅毒は感染した後、抗体ができるのだが、その抗体(の有無)を検査で調べる。我々のクリニックであれば感染して少なくとも6週間は経たないと正しい結果が出ないとしている」
感染が拡大している要因について小堀院長は「梅毒は10年ほど前から増えてきている。『マッチングアプリ原因説』や『インバウンド説(海外から入ってきた)』など様々な説がある。インバウンド説は少し違うと言われている。今は日本だけではなくアメリカやイギリスなど世界中で増えているから」と話し、感染拡大のはっきりとした原因はわからないというのが実情だという。
「以前は男性間の性交渉でうつる場合が多かったが、今は男女間の性交渉でうつっている。その結果、女性の患者、特に20代の女性が非常に増えている。また、治療を受けた女性患者の7%が妊婦だと判明している。梅毒がお腹の子どもに感染すると流産や死産の原因になることも分かっており、中絶される方もかなり多くいる」
知らず知らずのうちに感染してしまうリスクがある梅毒だが、後遺症はあるのだろうか?
小堀院長は「基本的に後遺症はほぼない。ただ、あえて言えば、梅毒のトレポネーマという抗体は一生残るため、一度感染するとその後の抗体検査ではずっと陽性になる。一方で、わかりづらい話ではあるが、梅毒に感染しその後治ったとしても、また梅毒の人と性交渉したら再度感染するリスクがある。その点は注意が必要だ」と説明。
また、梅毒は入浴やサウナなどの日常生活で感染する可能性は極めて低いという。
梅毒の予防法について小堀院長は「コンドームを使うこと、そして検査を受けることが一番大事だ。鬼挟の場合であれば、ペニシリンを1カ月飲む、もしくはおしりに一度注射を打てば治る。診断ができれば基本的には治りやすく、心配はいらない」と述べた。(ABEMA NEWS)