6月14日、岐阜市にある陸上自衛隊の射撃場で実弾射撃訓練中に隊員が小銃で銃撃され3人が死傷した事件。逮捕された18歳の自衛官候補生は地元出身であることが明らかになっているが、容疑者に関する報道をめぐっては、新聞・テレビなどメディアの間で戸惑いが広がっている。
【写真】容疑者宅前に白シャツ姿やカメラ配備で待機する報道陣。他、田んぼに落ちた新聞社の車、訓練の様子も 事件から一夜明けた6月15日、昼過ぎには地元新聞・テレビなどのメディアから大手新聞・キー局まで、すでに7~8社が岐阜県内の自宅付近に集まっていた。少年自宅は、田園が広がる住宅街に建っている。報道陣は自宅前に待機してはいたが、取材に動く様子はない。翌16日の新聞やテレビでも、自宅付近に関してはほとんど触れられていない。

現場の記者たちに話を聞くと、口をそろえて言うのが、「特定少年だから取り扱いに注意しなければならない」ということだ。2022年4月から施行された改正少年法により、18~19歳については新たに「特定少年」という概念が設けられ、成年に近い処分を受けるようになった。民法改正により18歳から成人となったことに伴う措置だが、報道にはいまだに大きな制約が課せられている。〈(特定少年は)起訴されると、氏名や住所、顔写真など本人の特定につながる「推知報道」が可能になった。(中略)今後の捜査の結果、男が起訴され実名が公表された場合、実際に氏名などを報じるかどうかは、報道機関が判断して決める〉(日本経済新聞6月14日付) つまり、起訴されるまでは特定につながる報道ができない状況にある。15日夜、自宅付近にいた民放キー局の記者は言う。「なんのためにここにいるのか……」「 今回『特定少年』として注意しているのは、自宅周りの聞き込みをするときに、こちらからは容疑者の名字と名前を出さないということ。向こうに心あたりがあればそれに応じて話を聞くが、そんなことはなかなかないので、取材は難しい。実際、報道でも『岐阜県』以上の情報は出してないですよね。 テレビも大きなカメラを持って夕方の多い時は5社ほど待機していたが、家族が出てきたところでどうすべきかはわかっていないというのが本音です。起訴されれば顔写真や名前の報道が可能になるということなので、今はそれに備えて映像や写真を集めている会社も多いのではないかとは思います。 ただ、マスコミの車が田んぼのなかに建ち並んでいて、カメラをもった取材陣は多い時で20人以上自宅前に待機していました。自宅や本名が特定されてはいけないというけど、この風景を誰かがSNSに上げたら、名前なんてすぐに表に出てしまうのではないか」 21時を過ぎても自宅前に張り付いていた全国紙の社会部記者も、戸惑いを口にした。「今日(15日)の夕方17時頃、自宅から人がひとりこっそり出てきて、バイクに乗りこんだんですよ。20人ほど待機していた取材陣はいつもならすぐに詰め寄って話を聞こうとするんですけど、今回は皆が目配せしあって、なかなか一歩目を踏み出す記者がいなかった。そのままバイクは逃げるようにどこかに走り去りました。これじゃあなんのためにここにいるのか、わからないですよね。 今日は射撃場で家宅捜索がありました。自宅のガサ入れ(家宅捜索)がいつになるかわからないので、こんな時間まで一応自宅前にいるのですが、そもそも家宅捜索してる絵も結局我々は撮れないですからね。本当になんのためにいるのか……」 そんななかちょっとしたアクシデントも起きていた。15日21時頃、自宅付近の田んぼに1台の車が頭から突っ込んでいる姿が。この車両は地元新聞社記者が運転する車両らしく、30分後にはレッカー車が到着し車を引き上げていた。 この地元紙の別の記者は、「こんなこと騒ぎにしたくないのに、恥ずかしいです。来ても取材することもないし、本当に何しに来たんだか……」と嘆いていた。
事件から一夜明けた6月15日、昼過ぎには地元新聞・テレビなどのメディアから大手新聞・キー局まで、すでに7~8社が岐阜県内の自宅付近に集まっていた。少年自宅は、田園が広がる住宅街に建っている。報道陣は自宅前に待機してはいたが、取材に動く様子はない。翌16日の新聞やテレビでも、自宅付近に関してはほとんど触れられていない。
現場の記者たちに話を聞くと、口をそろえて言うのが、「特定少年だから取り扱いに注意しなければならない」ということだ。2022年4月から施行された改正少年法により、18~19歳については新たに「特定少年」という概念が設けられ、成年に近い処分を受けるようになった。民法改正により18歳から成人となったことに伴う措置だが、報道にはいまだに大きな制約が課せられている。
〈(特定少年は)起訴されると、氏名や住所、顔写真など本人の特定につながる「推知報道」が可能になった。(中略)今後の捜査の結果、男が起訴され実名が公表された場合、実際に氏名などを報じるかどうかは、報道機関が判断して決める〉(日本経済新聞6月14日付)
つまり、起訴されるまでは特定につながる報道ができない状況にある。15日夜、自宅付近にいた民放キー局の記者は言う。
「 今回『特定少年』として注意しているのは、自宅周りの聞き込みをするときに、こちらからは容疑者の名字と名前を出さないということ。向こうに心あたりがあればそれに応じて話を聞くが、そんなことはなかなかないので、取材は難しい。実際、報道でも『岐阜県』以上の情報は出してないですよね。
テレビも大きなカメラを持って夕方の多い時は5社ほど待機していたが、家族が出てきたところでどうすべきかはわかっていないというのが本音です。起訴されれば顔写真や名前の報道が可能になるということなので、今はそれに備えて映像や写真を集めている会社も多いのではないかとは思います。
ただ、マスコミの車が田んぼのなかに建ち並んでいて、カメラをもった取材陣は多い時で20人以上自宅前に待機していました。自宅や本名が特定されてはいけないというけど、この風景を誰かがSNSに上げたら、名前なんてすぐに表に出てしまうのではないか」
21時を過ぎても自宅前に張り付いていた全国紙の社会部記者も、戸惑いを口にした。
「今日(15日)の夕方17時頃、自宅から人がひとりこっそり出てきて、バイクに乗りこんだんですよ。20人ほど待機していた取材陣はいつもならすぐに詰め寄って話を聞こうとするんですけど、今回は皆が目配せしあって、なかなか一歩目を踏み出す記者がいなかった。そのままバイクは逃げるようにどこかに走り去りました。これじゃあなんのためにここにいるのか、わからないですよね。 今日は射撃場で家宅捜索がありました。自宅のガサ入れ(家宅捜索)がいつになるかわからないので、こんな時間まで一応自宅前にいるのですが、そもそも家宅捜索してる絵も結局我々は撮れないですからね。本当になんのためにいるのか……」
そんななかちょっとしたアクシデントも起きていた。15日21時頃、自宅付近の田んぼに1台の車が頭から突っ込んでいる姿が。この車両は地元新聞社記者が運転する車両らしく、30分後にはレッカー車が到着し車を引き上げていた。 この地元紙の別の記者は、「こんなこと騒ぎにしたくないのに、恥ずかしいです。来ても取材することもないし、本当に何しに来たんだか……」と嘆いていた。