全面禁煙の老舗旅館で、たばこを吸った迷惑な客。このことがきっかけで、旅館が客に同意書を求める事態となっている。
9日、取材班が向かったのは、山形・米沢市にある秘湯「白布温泉」。
情緒あふれる、かやぶき屋根の旅館は、鎌倉時代の創業とされる。
滝のように流れ落ちる源泉を、豪快に浴びることができる温泉。
さらには、名物・米沢牛のすき焼きを堪能すれば、日ごろの疲れなど、どこへやら。
そんな旅館で、目についたものがあった。
館内の15カ所に貼り出された「禁煙」の貼り紙。
これはいったい…。
湯滝の宿 西屋・遠藤央子若女将「景観上、思うところもあるが、徹底するために、あちこちに禁煙の表示を張っています」
禁煙の徹底を訴える若女将(おかみ)。ある迷惑客への怒りのツイートが大きな注目を集めた。
ツイッターより「あれほど『館内敷地内 完全禁煙』とHPにも予約ページにも客室にも掲示しているというのに、部屋で散々たばこを吸って臭いだけ残して帰っていかれたお客様。宿を何だと思ってる? 分からいでか。その部屋は消臭作業のため数日は使えない。凍える空気の中掃除してくれたスタッフに心の中で詫(わ)びなされ!!」
この厳しい言葉を向けられたのは、2022年12月、この宿に宿泊した50代の男性。
全館禁煙であるにもかかわらず、客室でたばこを吸っていたという。
さらに、この男性客は、ホテル口コミサイトのサービスや設備などの項目で、この宿に5段階中1をつける、逆ギレ行為にも及んだという。
湯滝の宿 西屋・遠藤若女将「(部屋の)上半分が煙で満たされた状態だった。古い建物なので、一度臭いが染みつくと、なかなか取れない」
若女将が、宿での喫煙に神経をとがらせるのは、苦い記憶があるため。
2000年3月に、白布温泉で火災が発生。
燃えやすい「かやぶき屋根」の旅館2棟が全焼した。
これにより、200年以上前から残る「かやぶき屋根」の旅館は、若女将のところだけとなってしまった。
そこで考えた喫煙への新たな対策が…。
若女将「全館敷地内禁煙であること、あらかじめ確認いただいたうえで、こちらにチェックいただいています」
5月から宿泊者に対し、宿での喫煙をしないとする、同意書の提出を求めることにした。
宿泊客「今の世の中を考えると、やらないといけないんだなと…」、「初めてだからそういうこと(同意書)も。え?って思った」
禁煙の同意書に、ネット上の反応は「同意書だけではまた喫煙する人が出てくる」、「値上げという対策をすればいいのでは?」など、さまざま。
宿泊施設が同意書を求めるケースはほかにもあり、軽井沢のホテルでは、ペットを布団やソファの上に乗せる行為を、また東京の高級旅館では、寝間着での館内の移動を禁じている。
ネットで批判も受けたという若女将は、宿泊客に同意書の提出を求めることにした理由について、次のように話し、理解を求めている。
湯滝の宿 西屋・遠藤若女将「唯一残った旅館をなんとしても守らなければならない。火の元を徹底的に管理しなければ…」