東京には“地獄”が待っていた。留学費用300万円を「ママ活」で稼ごうとした20歳青年の嘆き

若い女性が年上の男性とデートしてお小遣いをいただくという行為がパパ活だが、その男性版として若い男性が年上の女性とデートしてお小遣いをいただくという「ママ活」も存在する。しかし、甘い夢を見る男性を狙った詐欺も、近頃増えているという。 マッチングアプリや出会い系サイトを20年以上ウォッチし、著書に『美男子のお値段』などがあるライターの内藤みか(@micanaitoh)が実態をリポートする。
◆もうママ活するしかない
静岡在住の料理専門学生・ケイタ(仮名・20歳)は、本場のイタリアンを学ぶために留学したいと真剣に考えていた。しかし1年留学するとなると、安く見積もっても300万円はかかってしまう。
そんな大金は必死にバイトしてもそう簡単に貯まるものではない。お金が理由で夢を叶えることができないのはつらすぎる。なんとかして稼ぐことができないかと考えていたときに、ママ活というものがあることを知った。
「同じ学校の可愛い女の子で、パパ活をしている子がいるんです。ブランドの服やバッグで身を固めていて、女ばかりいいなと羨ましく思っていました。なので、ママ活もあると知った時、留学するためにはこれしかない、とピンときたんです」
◆プロフィールで夢をアピール
ケイタは勇んで年上女性が大勢いると言われている出会い系アプリに登録し、サンタさんにプレゼントをお願いするがごとく、思いの丈を熱く綴った。
「静岡で料理を学んでいるケイタです! いつか自分のレストランをオープンさせたいという夢があります! 僕の夢を応援してください! おいしいお店にもたくさん連れて行ってください! あと、留学もしたいので、その費用も支援お願いします!」
しかしアプリに登録している女性たちの居住地は大都市に集中していて、静岡在住の女性は見当たらなかった。起業したり専門職などでバリバリ働いているお金がありそうな女性は、地方にはあまり多くはいないのかもしれなかった。
そのためプロフィールに新たに「交通費をくれればどこにでも行きます!」と書き込み、遠方の女性からの誘いも待つことにした。ルックスにそれほど自信はなく、モテたこともなかったが、一所懸命なところを気に入ってくれる女性がきっといるはずだと信じるしかなかった。
◆「東京でデートしてもらえませんか?」
アプリに登録して2日後、東京の30代女性からメッセージが届いた。キリッとした顔立ちの美人で、女医だという。「頑張っているあなたを応援したいです。一度東京までいらっしゃいませんか? もちろん交通費と、お小遣いも5万円お渡しします」というものだった。
「ぜひお願いします!」と、ケイタは勇んで快諾し、待ち合わせの日時を決めた。
東京駅で落ち合い、銀座でショッピングした後にお台場のホテルでディナーという豪華なコースを提案された。ディナーのあとはホテルにチェックインもすることになるのではないだろうかと考えると胸が躍った。
◆「先に保証金を送ってほしいの」
東京までの新幹線代を彼女が負担してくれるのかと思ったが、少し不信感があるらしく、「会えた時に交通費を払う」と言う。以前、約束した男が交通費だけ受け取ったまま音信不通になってしまったからだそうだ。
「ドタキャンなんてしませんよと言ったんですが、彼女は言葉だけでは不安だと『先にこちらに2万円送金してもらいたい』と提案してきたんです。『2万円は会えた時に返します。こちらにお金を預けていたら、逃げたりなんてしないでしょ?』って」

しかし東京駅に着き、彼女にメッセージをしようとすると、新幹線の中まではやり取りできていた彼女のアイコンが消えている。ブロックされたのだ。そこで初めてケイタはだまされたと青ざめた。
◆東京には“地獄”が待っていた
「お手当をもらえると思ってたので、持ち金もほとんどなくて。警察に相談しても、やり取りが消えてしまっているので信用してもらえないし。東京までの新幹線代と彼女へ送った2万円を大損してしまったままじゃ悔しいじゃないですか」と嘆くケイタ、そこで秘策を思いついた。
この損失はママ活で取り返そうと、アプリのプロフィール欄に「助けて! 今、東京駅にいます。帰りの電車賃もなくて困ってます。誰か僕を拾ってください」と書き込んだのだ。
窮状を訴えれば、裕福な女性がきっと手を貸してくれる。ここは東京なのだから大丈夫だ、と自分に言い聞かせたが、誰からもリアクションはなく、結局親に送金してもらって帰りの切符を買うしかなかった。
痛い目に遭ったその後も、ケイタはママ活を続けている。女性がときめくようなことを書いたほうがウケもいいのではと考え、プロフィールを「なんでもするので、僕の夢を応援してください!」に書き換えてもみた。しかしケイタのメッセージ欄は静まりかえっている。
◆ママ活男子を狙う詐欺に注意
「いつかは大金持ちの女性が自分を見初め、留学費用を出してくれないかなって。たったひとりのお金持ちと出会えたら勝ちだと思うんですよね。もう懲りたんで、お金を事前に振り込んだりするのはやめます。そもそもお金をもらうのは、こっちだと思うんで」
今回の損を取り返すまでは、ケイタは年上女性へのアプローチを続けるつもりでいる。しかし、このような甘い夢を見るママ活男子を狙う詐欺が後を絶たない。
見ず知らずの男にいきなり大金の支払いを約束する女性などいるわけがない。最初に顔合わせをして好みのタイプかどうかを確認し、そこから少しずつ仲を深めていくのが筋ではないだろうか。
ケイタが引っかかったような「事前振り込み」を要求してくるケースは、詐欺の可能性を疑ったほうがいいだろう。待ち合わせ場所に相手が本当に現れるかどうか心配なのはお互い様のはず。ケイタもまずは、詐欺を見抜き、おかしな要求を突っぱねる眼力を持つことが必要そうである。
<取材・文/内藤みか>