韓国の人気DJ、DJ SODAが公演中に「観客からセクハラ行為」を受けたことを告白したX(旧Twitter)の投稿が問題となっている。主催者側は加害者を特定し、法的措置もとるなどと発表し、物議を醸している。
「数人が突然私の胸を触ってくるというセクハラを受けました」
韓国の人気DJで、インフルエンサーのDJ SODAは14日に自身のSNSを更新し、公演中に観客からのセクハラ被害を受けたことを明かした。
Photo by Getty images
大阪府で行われていた「MUSIC CIRCUS’23」の公演中での一幕だ。終盤、DJ SODAがステージを降り、観客席に向かった。すると前列にいた観客の一部が柵ごしに彼女に近づき、ハイタッチでは留まらず、腕を掴んだり胸を触るなどのセクハラ行為を働いたというのだ。
その行為に恐怖を覚えたというDJ SODAは、その時の心境を次のようにつづっている。
〈あまりにも大きな衝撃を受けていまだに怖くて手が震えています…その時、とても驚いて怖かったんですが、一方で私を見て泣いて喜んでくれて好きと伝えてくれる素敵なファンの方々もいて、一旦最後までやりきろうと最大限平気なふりを頑張りました〉(DJ SODAのXより引用)
DJ SODAは「もう舞台の下や前の方に行ってファン皆さんに近寄りがたいと思っています…」と心境を吐露していた。
この投稿は一気に拡散され、SNS上には「痴漢大国」「日本の恥」といったワードが並び、一時トレンド入りするなどして物議を醸した。
この問題を受けて15日、主催したTryHard Japanが声明を発表した。
「このような行為は性暴力、性犯罪であり、断じて許すわけにはいきません」とし、被害に遭ったDJ SODAを最大限サポート、「こうした卑劣な犯罪行為を行った犯人を特定し、損害賠償請求や刑事告訴など、民事及び刑事の法的措置を取る所存です」との対応を取るという。
多くのネットユーザーたちはDJ SODAを擁護し、投稿に対して共感するコメントを付けた。その一方で「露出の高い衣装を着ていた方が悪い」などと指摘するコメントも多く、DJ SODAは「私がどんな服を着ていても、私に対するセクハラと性暴力は決して正当化できない(中略)当然のことだが、これを言うまでに大きな勇気を出さなければならなかった」と批判した。
問題の発端となったDJ SODAの投稿(Xより)
さらには、〈私は本当にファンと交流するのが好きで、いつも舞台の下に降りてファンとハグをしながら公演を追えます。でも公演中にセクハラを受けたことは初めてなので勇気を出して言いたかったです〉〈私は人々に私に触ってほしいから露出した服を着るのではない。私は服を選ぶ時、自己満足で着たい衣服を着るし、どの服を着れば自分が綺麗に見えるかをよく知っているし、その服を着ることで自分の自信になる〉(DJ SODAのXより引用)などと訴えた。
これまでの公演では一連のセクハラ行為のようなものはなかったという。写真は一部加工(DJ SODAのInstagramより)
露出が多い服を好んで着ているからといって、プライベートゾーンに触っていい理由にはもちろんならない。
「露出している服を着ているから被害に遭う」という心無い声は性暴力、性犯罪の被害者らに対して、これまでも再三かけられてきた。
「彼女の服装が今回の問題の発端となったわけでないと思う。やる人は相手がどんな服装だったとしてもやると思います」
そう訴えるのは会社員のサヤカさん(仮名・30代)だ。20年近く音楽フェスやライブイベントなどに通ってきたサヤカさんは「こうした問題はこれまでもあった」と話す。
「相手の同意なく胸を故意に触るのは犯罪行為です。ただ、クラブやライブ会場でお酒が入って、アドレナリンが出ている状況だと普段はそんなことしない人でも理性が働かず、ノリでやってもしまう人はいる。それにDJ SODAのように露出の多い衣装を着ていなくてもアーティストの胸や足に触ったり、男性アーティストの腰に抱きついていた女の子も見たことがあります。それにアーティストだけではなく、どさくさ紛れて観客の女の子の胸を触るなど、痴漢行為が横行しているんです」
さやかさんは10代のころ、あるライブ会場で痴漢被害にあったという。
あるロックミュージシャンのライブだった。フロアは満員電車状態で、身動きが取れないほどに密着していた。するとサヤカさんの後ろにいた観客の男性が、臀部に股間を押し付けてきたというのだ。
「でも、痴漢だという確信はないので何も言えませんでした。痴漢だ、といえばライブを止めてしまうかもしれないし、『冤罪だ』と私の方が訴えられるかも、とも考えました。振りほどいたり、体勢を変えたりしていたらいつの間にかいなくなりました」(サヤカさん、以下同)
家族に被害を訴えると「露出の多い格好をしている方が悪い、とか嫌だったら人がいないところで見ればいい、そんなところに行くから被害に遭う、と逆に母から怒られました。こっちが被害者ですよ! 服装だって普通のTシャツだし、スカートだって別に短くありません」と憤慨する。
ただし、今回のケースはその時の状況とは異なるのではないか、とサヤカさん。
海外ファンとの比較も物議を醸しだす。写真は一部加工(DJ SODAのInstagramより)
サヤカさんは「渋谷のハロウィンやサッカーW杯時などで触られた、痴漢にあったって問題になったことと近いと思います」と推測する。
「つまりノリなんです。みんな深く考えていない。多くの人が『どさくさに紛れて触ってしまえ』とか、『触っちゃったラッキー』くらいの感覚だったと思いますよ。下心があるヤツもいたでしょうが、だいたい盛り上がってぶっ飛んでるって感じ。拡散されている動画などを見て、そう思いました。
渋谷のハロウィンなどに比べれば、痴漢行為を目的として来ている人はライブなどでは少数です。でも、純粋に音楽を楽しみたいんじゃなくて、あわよくば異性との出会いたいとか、女の子と接触できるとか、楽しければなんでもいいとか、下心があるからお酒が入ってタガが外れてしまう人たちがいる。あと、バレなきゃいい、ってことでしょう。それに『その場のノリが良ければなんでも許される』って勘違いしている人は少なくないんだと思います」
またコロナ禍で浸透したソーシャルディスタンスによって、ライブやコンサート会場での振舞い方も伝わっていないのではないか、とも話す。
「この3年半、フェスやライブ会場で、アーティストとの物理的な距離はむしろ遠くなった。観客同士も接触しないよう決められた場所から動いたり、声を出すのは禁止されていました。だからなのか、ノリに慣れていない若いファンも多いし、逆に距離感がバグってるのかやたら近くに寄ってくる人もいる。
それにアーティストの中には、自ら進んでファンにキスをしたり、抱きしめたり、と過激なファンサービスをする人もいます。そうした場面しか知らない人だったら何をやってもいい、と勘違いしてしまうし、ファンだって期待してしまう。痴漢をする人が100%悪いですが、自分のしていることが痴漢だとは思ってなくて、やってはいけないことだと深く考えずにする人もいる。無意識でやっているのであれば、そうした行為はなくならない。ライブでのモラルやマナーを考えるのであればアーティストもファン、双方とも自制しなければならないのではないでしょうか」
観客を喜ばせたい、というアーティスト側の気持ちや接触はファンとしては大変うれしいことだ。だが、一部のファンの誤った行動により、パフォーマンスやライブでの「楽しみかた」が抑制されるような状況にもなりかねない。
性暴力は「その場のノリ」では許されない卑劣な行為。「その場の雰囲気」や「若気の至り」では済まされないことが社会にはたくさんあることを、改めて認識しなければならない。
インスタグラムより
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