神戸地検は12日、PR会社に報酬を支払った公選法違反(買収)容疑で刑事告発され、県警が書類送検した兵庫県の斎藤元彦知事を嫌疑不十分で不起訴とした。ほかに斎藤氏や知事選に絡んだ告訴、告発についても一斉に不起訴処分となった。9日に元兵庫県議の竹内英明氏への名誉毀損容疑で政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首が逮捕されていたが、兵庫県政を巡る混乱で、一気に幕引きが図られたことになる。
斎藤氏は昨年の知事選後にPR会社「meruchu(メルチュ)」へ報酬を支払った公選法違反容疑、阪神・オリックスの優勝パレードの経費不正疑惑や特産品ワインを自宅に持ち帰った件など県に損害を与えた背任容疑で刑事告発されていた。
一方、知事選期間中に稲村和美候補への選挙期間中に支持を表明した県内22市長による公選法違反容疑、稲村氏のXアカウントが虚偽通報で凍結された偽計業務妨害容疑、稲村氏に関する虚偽の事実をSNSに投稿した公選法違反容疑、メルチュ社長の公選法違反(被買収)容疑についても合わせて、この日、不起訴となった。
昨年、斎藤氏のおねだりやパワハラ疑惑で、兵庫県政は大揺れとなり、斎藤派VS反斎藤派で、議会、県民を巻き込んでの分断が起こった。不信任決議で失職した斎藤氏だが、立花容疑者にアシストされる形で、出直しの知事選で再選したことで、分断はさらに深まり、双方で告発、告訴合戦は続き、今でも県庁前では斎藤氏への抗議活動が行われる異常事態となっていた。
混乱が続く中で、「斎藤氏やメルチュ社長は不起訴になる。あとはどのタイミングで発表するか」と数か月前から周辺に漏らしていたのは、ほかならぬ立花容疑者だった。
兵庫県政に詳しい関係者は「斎藤氏の不起訴は既定路線だが、斎藤氏を批判している側からすれば、不起訴となれば収まりがつかなくなる。結果的に爍嫁藁倭挙瓩悩愼氏再選の原動力となった立花氏の逮捕で、反斎藤派の留飲を下げる狙いがあったのではないか」と捜査当局側の思惑を指摘する。
立花容疑者は9日に逮捕されたが、名誉毀損事件は通常、在宅捜査で、身柄を拘束する逮捕は異例。県警側は「証拠隠滅や逃亡の恐れがある」と説明していたが、同容疑者は任意での事情聴取にも応じていたため、法曹界では「後付けの理由」と物議を醸していた。
逮捕直後に一連の疑惑の不起訴ラッシュを発表したことで、当局側は県政を巡る混乱で、立花容疑者には強硬的な手段を取ることにより、バランスを取ったとの見方が出るのも当然だ。斎藤氏を支持する兵庫県議で地域政党「躍動の会」代表の増山誠県議は自身のYouTubeで「立花さんの件とバーターで、(不起訴を)一緒に発表したんじゃないかというが、そういう部分もあり得るのかな」と話した。
告発側は不起訴に不服として、検察審査会に審査を申し立てる意向を明かし、斎藤氏には疑惑告発文書を作成した元県幹部の情報漏洩問題の関与疑惑も残っているが、一つのヤマ場は乗り越えた形となる。
一方、百条委員会の委員長だった奥谷謙一兵庫県議が立花容疑者から知事選中に虚偽の投稿や自宅兼事務所前で街頭演説を行われたことなどでの威力業務妨害、脅迫、名誉毀損の容疑で刑事告訴した件では、結果が出ていない。再逮捕の可能性や竹内氏への名誉毀損容疑での立件は免れないとの声が出ていて、「大山鳴動して、立花氏一人」で1年以上続く、兵庫県政のドタバタは終結を見ることになるのか――。