窓が開けられず、ゴミと虫が大量に…実際に住んで分かった「商業施設入り物件」のリアル《1階にコンビニ、飲食店があったら?》

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賃貸物件のなかには、居室だけでなくコンビニや飲食店などの商業施設がテナントとして入っている物件も多くある。一見、便利そうに思えるが、入居後に後悔する可能性もゼロではないとか……。そこで今回は、実情をよく知る不動産のプロやテナントが入っているマンションに住む人々に話を聞いた。
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※写真はイメージ yamasan/イメージマート
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駅チカ物件に多いのが、賃貸マンションの1階や2階に飲食店があるケース。松井和也さん(仮名・50歳)が住む部屋の階下には個人経営の焼き鳥店があり「とくに『ニオイ』が気になっている」と話す。
「入居前から、焼き鳥のニオイについてはわかっていたつもりですが、想像以上でした。入居してすぐの頃に洗濯物を外に干したら、半日で服が油っぽくなってしまい、それ以来、ずっと室内干しです。
また、店舗の営業時間中はずっと焼き鳥を焼いているので、部屋の換気ができるのは営業時間が終わった深夜ですね」

また、毎日のように大量のゴミが出るため、カラスやネズミがゴミ捨て場を荒らすという。しかし、カラスやネズミよりも彼を悩ませる存在が部屋に潜んでいる。
「ゴキブリの出現率も噂以上でした。窓から小さいゴキブリが入ってきたり、玄関の隙間から侵入してきたり……。気休めに玄関の敷居に置き型の殺虫剤を一列に並べていますが、防ぎきれません。スプレータイプの殺虫剤は必須アイテムです」
「ニオイや虫といったデメリットも覚悟のうえで住み始めたが、ゴキブリの数はもう少し減ってほしい」と松井さんは肩を落とす。
そのほか、「自宅マンションの1階にファストフード店が入っている。自分の部屋は9階にあるが、それでも窓を開けるとファストフード特有のニオイが漂ってくる」(30代・会社員)といった声も。飲食店のニオイは9階でも避けられないようだ。
都内で不動産仲介業を営む橋本守さん(仮名・42歳)は、飲食店のテナントが入っていてもニオイの影響が少ない物件もある、と話す。
「飲食店から発せられるニオイの正体は、店外に設置された排気ダクトから出る熱や煙。1階に店舗があっても排気ダクトが屋上に設置されている物件ならば、上空に煙を逃がせるので居住階への影響は少ないでしょう。
ただ、屋上にダクトを設置するには多額の費用がかかるので、個人経営の飲食店では店舗横の壁に下向きのフードをつけたダクトを設置するのが限界。そのため、どうしても上階にニオイが立ち上ってしまいます。資金力がある大手チェーン店は、クレーム回避のためにダクトを屋上に設置するケースが多いので、その点は安心かもしれません」
飲食店がテナントに入っている物件を検討する際は、ダクトの位置を注視するとよさそうだ。
そのほか、1階にコンビニがある物件は入居後にクレームが入りがち、と橋本さんは話す。
「コンビニがあると24時間気軽に利用できて便利ですし、我々不動産屋もメリットとして推すポイントです。ただ、商品の搬入が夜遅い時間や早朝に行われるため、『ガシャンガシャンという台車の音が気になる』というクレームが入ることもあります。上層階に住んでいれば音は響かないのですが、3階、4階あたりまでは搬入の音が聞こえてしまいます」

また、コンビニ前で酒盛りをする人々がいると「人の声がうるさい」「治安が悪い」などの理由で、退去する住人もいるそうだ。
そして近年、騒音のトラブルになっているのが、住人がマンションの一室を“レンタルルーム”として提供している部屋だという。
「昨今、個人が自室や所有する部屋をレンタルルームとして貸し出すサービスが広く普及しましたよね。海外でお客さんを募集して、許可を取らずに違法で民泊をしている例もありました。他にも、“スタジオ”として24時間貸し出している部屋は、何度かトラブルになりました」
楽器OKの物件でも、大音量で楽器の音をかき鳴らしたり、YouTuberが大きな声で収録したりすると、「隣接する部屋にも音が伝わります」と橋本さん。
「私が担当している物件には、深夜割引サービスを実施している貸しスタジオがあり、住人の方から『深夜にドラムの音が響いて眠れない』とのクレームが入りました。また、不特定多数の人が出入りしてエントランスの前で騒いだり、喫煙したり、ゴミが散らばっていたりして、近隣の人が困っていたんです。そこですぐに部屋の借り主に連絡して、ほかの住民からの苦情を直接伝えました」
契約書に「近隣住民に迷惑をかけない」という条件があったため、それを盾に交渉したところ、深夜の騒音はなくなったそう。
飲食店とは異なり、貸しスペースは外観からは判断できない。そのため「今後はこうしたトラブルがさらに増える可能性が高い」と橋本さんは話す。
「同じ建物内でなくても、消防署や大きな病院が近所にある物件は、音に敏感な人は避けるのがベター。人々の生活にとって重要な施設ではありますが、これは実際に住んでから分かることですね」

テナント物件の騒音が“住みにくさ”につながる可能性はゼロではない。しかし、使い方によってはメリットもある、と橋本さんは話す。
「じつは、私が住んでいる部屋のすぐ下に深夜まで営業している居酒屋があるんです。夜間は人の声がガヤガヤうるさいですが、こちらは夜遅い時間にルームランナーで走っても文句は言われません。生活音を気にせず暮らせるのはいい点です。
住まいを提案する際も『小さな子どもがいる』『時間に関係なくミシンを使いたい』という希望がある人には、テナントの上をおすすめしているんです。実際、クレームも少ないですね」
自分自身が騒音の発生源になりそうな人は、テナントや会社の事務所、駐車場の上の角部屋を選ぶのもアリかもしれない。
ここまで、自宅の物件に“あると困るテナント”を紹介してきたが、業種によっては「あるとうれしいテナント」も存在する。
「転居したマンションの2階にホットヨガスタジオが入っていたので試しに入会してみたところ、大正解だった。ホットヨガで汗をかいたあとは、スタジオ内に設置されたシャワーを使うのが一般的だが、自分は部屋に帰れば、待ち時間なしでシャワーが浴びられる。レッスン料はかかるが、運動不足が解消されているので満足度が高い」(30代・会社員)
「自室の下に事務所物件が入っている。夜間には誰もいなくなるので静かだし、自分が足音を立ててもクレームにならないので過ごしやすい」(40代・会社員)
テナントを有効に活用したり、事務所が階下にあったりする物件は快適に過ごせそうだ。

また、橋本さんが扱っている賃貸物件のなかには、飲食店のテナントが入っていても住人の満足度が高いマンションがあるという。
「そこは1階で飲食店を経営しているオーナーが、マンションの大家も兼任している物件なのですが『入居者は半額』というサービスを実施しているんです。入居者も喜んで店舗を利用しています。ほかにも、銭湯を運営している賃貸物件で入居者なら無料でお風呂を利用できる、なんてケースも。どんな物件にも言えることですが、住人を大切にしている大家さんの物件は、住人の不満も少ないですね」
テナントの種類や大家の方針によって、住みやすさとデメリットは大きく異なる。引越しの際は本稿を参考にしてもらいたい。
(清談社)

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