自民党議員の“裏金” 所得だった場合の納税額は?…計算してみた【報道1930】

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確定申告の季節。申告に訪れた70代の会社経営者に自民党のいわゆる裏金問題について聞いたところ…、「国会議員のやってることは泥棒みたいなもんですよ。要するに裏金作って税金払わないで何億とか何千万とかやってるわけですから。今からでも税金払うべきだと僕は思いますね。本当に国民を馬鹿にするのもいい加減にしろっていう感じですよね」そう語った。同様の思いを抱く国民は少なくないだろう。そこで番組では、もしも“裏金に課税したならいくらになるのか”計算してみた。
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政治資金収支報告書に記載がなかった収入には課税するべきではないか、という声は国民や野党議員のみならず、一部の自民党議員からも上がっている。例えば、政治資金パーティーの収入におけるキックバックとされるカネは、わかっているだけで、安倍派95団体合計で6億7000万円(5年間)を超えている。もし仮にこのカネに課税できるなら、納税額はいくらになるのか、専門家の協力を得て試算した。
大阪学院大学 八ツ尾順一教授「泥棒が1000万円稼いでも、これは違法な所得だから課税しないかというとそうじゃない。違法性とか関係なく、その人がお金を持っていたら課税するというのが税法の基本的な考え方」
八ツ尾順一教授は公認会計士と税理士の資格を持つ“税のスペシャリスト”。難しい税金の話を歌にして、親しみを持ってもらうために曲を作り、カラオケにも登録されている。納める税金足りないよ~すみませんけどペナルティ~ああ~それは不納付加算税~♪そんな活動も続けている。八ツ尾教授は今回の問題について、収支報告書に記載しなかった時点で議員は政治資金として認識していないとみなされ、雑所得となり課税対象になる可能性があると指摘する。
大阪学院大学・法学部 八ツ尾順一教授「“不明”とかって果たして税の世界で税務署が認めてくれるかっていうと、まずこれはあり得ないと思う。政治家も一種の納税者ですから、当然他の納税者と違うということは基本的には税法に書いてないということです」
八ツ尾教授にキックバック分の課税額を計算してもらった。
前提は国会議員の給与に当たる歳費(2300万円)以外に所得がない場合、仮に3年間で1900万円のキックバックを得ていた議員の場合は…
大阪学院大学・法学部 八ツ尾順一教授「だいたい1000万弱ですかね…、これだけで」
更にもし意図的に隠ぺいした事実があれば重加算税が課せられる可能性がある。その税率は35%。課税額はおよそ1200万円になる。
大阪学院大学・法学部 八ツ尾順一教授「(議員が修正した収支報告書に書いた)使途不明金ですが、法人税法上では“使途秘匿金”というんですけどね、使途秘匿金だったらペナルティがあるんです。支出した金額の40%を税金として取りなさいっていう法人税法の規定があります。(中略)所得税でも法人税でも、収入が2000万円あって税務署に『使途不明金分1000万円引いて(課税額算出して)ください』って言っても、これを税務署は引かないでしょ。これはあくまで常識の世界。税法の問題ではなく常識の世界ですよ」
政治家の常識は、税の世界では非常識になると教授は語った。そして、税理士の資格も持つ教授ならではの考えを補足した。
大阪学院大学・法学部 八ツ尾順一教授「もしこれが税法上雑所得であればね、税理士が自らそういうのを申告しなさい、とそういうことを言わなければならないというのは教科書的にはそうなってくるわけです…(―――でも実際は?)なかなかそりゃ~税理士もそういうことは言えないでしょうな」
今回試算した税額はキックバックによる裏金が全額、議員の個人所得(雑所得)とみなされた場合だ。キックバック1000万円で納税額(所得税・住民税)500万円。隠蔽・仮想と認定された場合の重加算税は140万円。以下同様に2000万円の場合、納税1000万円、重加算税280万円。3000万円の場合、納税1500万円、重加算税420万円。
3年間で1000万円を超える裏金を受け取っていた安倍派の面々。八ツ尾教授はこうも語った…。
「政治資金規正法と税法では法律の緻密さや考え方が全然違う」
これを受けて国会議員は「これは雑所得です」なんて言うわけがないと語るのは自民党、田村憲久議員だ。
自民党政調会長代行 田村憲久 衆議院議員「雑所得かどうかは本人が申告するかどうかですけど『これ雑所得ですよ』って言った瞬間に政治資金規正法違反になっちゃうわけですよ。本来、我々政治家は政治団体から寄付を受けてはいけないわけですから。つまり本人が雑所得だっていうことは想定されていない」
田村議員は課税するかしないは税務署が調査していると思うので、それは置いておいて収支報告書に記載漏れがあった場合、不記載の金額が大きい時には何らかのペナルティを設けるべきだと語った。一方、東京地検特捜部で検事として税金事件を取り扱ったこともあり、元国会議員でもある若狭勝弁護士は、国会議員の特別扱いに国民が不満を抱く気持ちは理解できるとした上で、この程度の金額で国税の査察が入ったら民間に類が及ぶと話す。
元東京地検特捜部 若狭勝 弁護士「キックバック、イコール雑所得、だから課税すべきということで全部徹底してしまうと全体の法体系にぐらつきが出てきちゃう感じが…。例えば今回、国税の査察が…。雑所得で5000万くらい申告してなかったってことを刑事事件としてやるようになったとした場合には…。実際今世の中の社会では5000万くらいで査察が動くってことはないんですよ。1億円以上。所得(収入)のごまかしが1億円くらいになると査察が動いて刑事事件になる。個人の場合ですよ…。今回、世論が凄いから5000万くらいで査察が動いたとすると、今後民間はどうなの…。民間で5000万(の所得隠し)くらいで査察が動いて逮捕ってなったら、結構世の中に波及が大きい…」
今回も大山鳴動して、国税動かず…なのか?かつて国税は大物議員を脱税で逮捕している。元国税庁、野村興児氏。31年前、あの金丸事件を告発した人物だ。今回初めて、カメラの前であの事件の当時を語った。
元国税庁調査査察部長 野村興児氏「企業が政治家に献金するということが色濃く残っていた時代であります。金丸事件というのは30億余りの政治献金が長年にわたり割引債券で運用されながら蓄積されていた案件であります。政治資金だという主張もありましたが、長年にわたる蓄財と割引債という形での運用。こういったことを考えると明らかに所得である。従って所得税法違反で告発が行われました」
この件では隠し部屋から債権と金の延べ棒という物証が出たため罪を立証できた。30年を経て再び持ち上がった政治家の税問題。“政治資金”か“所得”か簡単には立証できないのが実情だ。
元国税庁調査査察部長 野村興児氏「いろんな状況とか事情が揃わないと所得税という形には結びつかない。(中略)政治資金規正法が本来の機能を果たしうるように法の整備。抜け道がないように整理されることが本質だろうと思います」
今回調査が進むとすれば担当部署は『課税部資料調査課』“リョウチョウ”と呼ばれる組織だ。かつてそのリョウチョウに所属していた税理士の佐藤弘幸氏は、国会議員を税法で追い詰めるのは至難の業だという。
税理士 佐藤弘幸氏「国会議員の場合、見える圧力、見えない圧力というものがある。調査した結果“シロ”だった場合、調査した側に非があるとか…。簡単には調査できない。(中略~今回は)脱税というかは別として申告漏れは間違いないので、所得税の課税はするべき。課税すべき調査した場合でも課税できる案件だと思う。しかし、収支報告書を修正されてしまうと政治資金という沼の方へ行ってしまう。わかりやすく言うとサンクチュアリ(聖域)誰もなかなか手を出せない領域に行ってしまう」
佐藤氏は、裏金の課税問題を解決する策として、政治資金の定義を法令で明記することと、収支報告書の所管を総務省から国税庁に変え、定期的に調査することだと語った。ここまでしないと国民は納得できないということを政治家の方々は分かっているのか…通常国会での議論を注目したい。
(BS-TBS『報道1930』2月20日放送より)

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