4700万円をブラック企業から勝ち取った元社員が「大金を手にして後悔した」理由「ワースト3」

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23歳のときに勤めていたブラック企業から700万円。さらに、29歳のときに再就職したブラック企業2社めから4000万円。労働裁判で大金を勝ち取った「ブラック企業の天敵社員」こと佐藤大輝氏(33歳)が、まとまったお金を手にしてよかったと思う理由については〈4700万円をブラック企業から勝ち取った元社員が「大金を手にしてよかった」と思う理由「ベスト3」〉で紹介した。
本稿では一転して、「お金の持つマイナス面の力」について佐藤氏が紹介する。
ブラック企業との裁判期間中、僕はウーバーイーツの配達員として、生活を回すためにママチャリのペダルを回した。が、女性は安心安定が大好物の生き物なのか、なかなか相手にしてもらえなかった。
また、同性からも「いつまでフラフラしているつもりなの?」と懐疑の眼差しを向けられていた。そんなトホホな評価の僕に、今更になって好意を示す老若男女が現れてみろ。明らかに何かが変だ。
それでもネバーギブアップの精神で、僕は裁判後、気になっていた女性へデートを提案。居酒屋で飲んだ後、夜景の綺麗な高級バーで1杯飲みませんか、とメッセージを送った。
Photo by iStock
返事は、まさかのオッケー。空いてる日程を提示された僕は、10年ぶりの彼女獲得に向けて鼻息荒く店に電話を入れた。が、残念ながら高級バーは予約が埋まっていた。
この事実を彼女に伝えたところ、「じゃあ、お店が空いてる日に改めて行こう」と返事があった。僕は悲しい気持ちに襲われた。居酒屋デートだけじゃダメなのね……。
気を取り直して、つい先日、僕はマッチングアプリに登録。就活の履歴書と同じ感覚で、アプリのプロフィール欄を埋めていったのだが、年収の項目をどうするかは迷いに迷った。なぜなら裁判で獲得した賠償金のトリセツがなかったからだ。
取り急ぎ、僕は年収500万円に設定。2週間ほどアプリをやり込んだ後、興味本位で、年収1000万円で再設定。結果、足跡の数は3倍。いいねの数は2倍、増加した。僕はそっとアプリを退会した。
過去、僕は500万円近くの奨学金地獄に堕ちていた頃がある。当時は道端に捨てられている片手だけの手袋を回収。似たような柄が揃った際はガッツポーズを決め込み、SDGsの精神でありがたく再利用していた。
ちなみに僕はバドミントンが趣味なのだが、10年間以上、自分のお金でラケットを買っていない。ユニフォームやウェアなどを含め、心優しい仲間から中古品を無料で譲り受けてきた。
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ところがどっこい。まとまったお金が手に入って以降、僕は僕の立ち振る舞い方がわからなくなった。お金があることを伝えるのも気が引けるし、お金がないと嘘をつくのも何かが違う気がする。相手と正面から向き合うための方法がわからない。
年齢を重ねれば重ねるほど「自己開示」が難しくなり、学生時代のように簡単に友達を作ることができなくなる悩みを僕は抱えていたが、お金を手にしてから自身の悩みがより色濃くなった。新しい友達どころか、まさか古い友達との接し方すら困難になるとは……。
今、僕は私生活においてダンマリを決め込んでいる。会社から勝ち取った和解金額はバド仲間へはもちろん、両親にすら教えていない。
そういえば最近、自腹でYONEXのユニフォームを購入した際、バド仲間から「もしかしてママ活で稼いでる?」と懐疑の眼差しを向けられた。
人は見たいように見て聞きたいように聞く「確証バイアス」があることは周知の事実だが、もしかしたらバイアスを通した他者からの評価が、自身のアイデンティティになっている側面もあるのかもしれない。
僕の記事に寄せられる読者の方からのコメントには「あぶく銭はすぐになくなる」「悪銭身に付かず」といった格言なのか願望なのかわからないものがよくある。詐欺師や当たり屋といった誹謗中傷も絶えない。仕事用のメールアドレスに「ご家族の身は大丈夫かな?」といった犯罪を示唆する脅迫メールが届いたこともある。
身の安全が脅かされているかもしれない家族からの当たりも強い。
ある時、仕事の関係で東京へ行くことが決まった。せっかくだから実家に泊ろうと思い母親に連絡を入れたところ「頻繁に海外旅行できるお金があるなら、ホテルにでも泊まればいいんじゃない?」と返信があった。
僕は海外渡航が大好きで、異国を旅する度にLINEのアイコンを変えている。どうにもこれが気にくわなかったようだ。
ちなみに2023年に訪れたのはオーストラリア、マレーシア、スリランカ、アラブ首長国連邦ドバイ、アイスランド、インドネシア。もし今この文章を読んでイラっとした人は、たぶん僕の母親と友達になれる。
冗談ではなく実家への帰省を拒絶された僕は、『マネー現代』の編集さんとの打ち合わせ後、巣鴨にあるアパホテルに6000円で宿泊。家族の誰にも会うことのないまま新幹線に乗り、一人暮らしの家を目指した。もちろん今年の年始も、実家へは顔を出してない。
このように、お金は他者からの嫉妬や妬みを生んでしまうリスクがある。
硬貨だろうが札束だろうが関係ない。お金には発火性と可燃性が兼ね備えられている。
共感・共鳴とはもっとも遠い所にある感情を簡単にあぶり出してしまうお金は、本当におっかない……。といったユーモア溢れる言葉で締めるのは、さすがに危険過ぎるか。
最後に余談だが、寄せられたコメントの中で僕が一番気に入っているのは「カイコパス」だ。イジメではなくイジリまでで、記事へのご意見・ご感想を伝えてくれたら嬉しい。

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