貧血と診断されたが実は「胃がん」だった…痛み止めだけ処方され「そのまま死亡」…医者の「診療ミス」で酷い目に遭った人たちの悲劇

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『別冊 おとなの週刊現代 「血圧」と「血管」の新しい知識』は、多くの人が悩みを抱える「血圧」や「血管」にまつわるさまざまな情報を紹介しているだけではない。「診断ミス」や「処方箋間違い」の実態と、「本当に頼りになる医者」の見つけ方を解説した記事も収録されている。『寿命を縮めないために知っておきたい病院の「基礎知識」 医者によって診断が違う理由、出すクスリが違う理由』を特別公開する。
日本では全国一律、同じ医療費で医者にかかることができる。表向き、医療の質も平等だ。しかし、現実はどうか。病院によって診断や治療法はまちまち、そのレベルも雲泥の差だ。医療界のタブーに迫る。
なんとなく疲れやすい日が続いた。最近、遠出することが多かったし、季節の変わり目だ。そんなこともあるだろう-杉山新平さん(71歳、仮名)はそう自分にいい聞かせたが、やはりどうも調子が悪い。そこで近所のクリニックに出かけた。
「貧血と診断されました。そんなこと今までいわれたことがなかったので、驚きました。鉄剤のフェロミアを処方されて、レバーやほうれん草をよく食べるようにしました」
少しは体調が回復したような気がした。だが、その3ヵ月後、健康診断でまた異常が見つかった。
「ヘモグロビンの値がおかしかった。『鉄剤も飲んでるし、食生活も気をつけていますよ』というと、検査した先生から『念のために、胃の検査をしましょう』といわれたんです」
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胃カメラを飲み、検査をしたところ、胃がんが見つかった。杉山さんは、単なる貧血だと診断されていたが、実は腫瘍から出血していたのだ。発見された時点でステージはII。杉山さんは1ヵ月後に手術を受け、胃の4分の3を失った。
「もし健康診断を受けていなかったら、がんを見逃したまま、意味のない鉄剤を飲み続けていたでしょう。そうすれば、取り返しのつかないことになっていたかもしれません」(杉山さん)
医師はできるだけ丁寧に問診し、必要ならば検査を行って、正確な診断を下す義務がある。
だが現実には、「なんとなく疲れやすい」という症状から胃がんと診断するのはほぼ不可能。こんな診断ミスは医療の世界では日常茶飯事だ。
たとえば腹痛ひとつでも病名は何百パターンも考えられ、たびたび誤診が起きている。愛知県のクリニックの医師が語る。
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「胃のあたりが痛いといって来た患者さんがいました。胃カメラを使って検査をしましたが、これといった異常がなかったため、痛み止めを処方して帰ってもらいました」
ところが患者は、痛みが治まらないといって、当日のうちに再度受診。そこで改めて別の医師が診たところ、虫垂炎だとわかった。
「急いで大病院へ運び、手術したので助かりましたが、危ないところでした。患者さんが『胃が痛い』と訴えるのを鵜呑みにしたので、虫垂炎を見逃してしまった」
同じく腹痛を訴えた患者が、診断ミスで亡くなってしまったケースもある。都内の大学病院の夜間救急に運び込まれた70代男性。この男性は実はこの大学病院で理事も務めた消化器外科の医師だった。事情を知る別の大学病院の関係者が語る。
「高名な先生が来たので、当直の医師たちもつきっきりでレントゲンも撮った。しかし、腹部にとくに異常はありませんでした。とりあえず痛み止めで抑えて、翌日、精密検査をしようということになったのですが、そのうちに意識がうすれ、明け方に心筋梗塞で亡くなってしまいました」
完全な誤診だった。心筋梗塞の痛みは、通常は胸に出ることが多いが、この男性のように腹痛を訴えることもあるし、肩こりのような形で現れることもある。
「本当は、夜のうちに心電図を取っておくべきでした」(大学病院関係者)
がんではないのに、がんだと誤診されるケースもある。北海道在住の庄司晴彦さん(79歳、仮名)もその一人。娘の志穂さん(仮名)が語る。
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「父は肝臓がんと診断されて手術をしました。正直、手術に耐えうる体力があるか不安でしたが、本人が『がんを切れるなら、手術したい』というので、そうしました。
しかし、後の病理検査で、がんだと見られていたものが良性腫瘍だとわかりました。医者には『がんでなくてよかったですね』と軽くいわれましたが、父は心労と手術、入院ですっかり元気を失くしてしまって……。この先どうなるか心配です」
悔やんでもしかたないと思いつつ、医師の軽い態度には納得がいかない。
医師の診断は、往々にしてまちがっていることを肝に銘じておきたい。
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『なぜ医者は「誤診」してしまうのか、現役の医師たちが明かす「本音」…実は「診療時間の終わりがけにくる患者」は医療ミスが多くなる!』に続く…

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