「赤信号」14秒後に時速140キロで交差点進入か…富山の母子死亡事故、容疑者「他の車を追い抜こうと思った」

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富山市八町の国道8号交差点で赤信号を無視した車が進入し、男子中学生と母親が死亡した事故から14日で1週間となる。
現場周辺の防犯カメラには、赤信号に切り替わってから14秒後、母子の軽乗用車に、男の乗用車が猛スピードでぶつかる様子が映っていた。富山県警富山中央署は、男を自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死)容疑で逮捕し、調べを続けている。母子を知る人たちには、深い悲しみが広がっている。(原中翔輝、佐野悠太、佐藤伶)
ゴー、ガッシャーン――。
日の出前で薄暗く、雨が降っていた7日午前5時半頃の八町交差点付近。読売新聞が入手した近くの防犯カメラ(地図〈1〉)の映像には、事故現場は鮮明に映っていなかったが、車の走行音と、耳をつんざくような衝突音が記録されていた。
別のカメラ(地図〈2〉)は、衝突の瞬間を録画していた。8号を西に猛スピードで走る車が、赤信号の交差点に進入。青信号で南に向かっていた車と交差点でぶつかり、1台が一瞬で吹き飛ばされた。映像では、8号側が赤信号になってから約14秒後、事故が起きていた。
交差点の東約200メートル(地図〈3〉)の地点にあるカメラは、水しぶきを上げ、8号を暴走する車を捉えていた。
これらの映像から、事故を引き起こした車は、少なくとも交差点の約200メートル手前から猛スピードを出し、赤信号に切り替わってから14秒もたった後、交差点に突っ込んだことがわかる。
事故では、富山市布目、会社員上田絵莉加さん(38)の軽乗用車に乗用車が左から衝突し、上田さんと、同乗していた息子で中学生の壮芽(そうが)君(14)が亡くなった。軽乗用車は、交差点の中心から約50メートル南西の歩道まで飛ばされて大破、横転していた。
乗用車を運転していた舟橋村舟橋、会社員杉林凌容疑者(26)が法定速度(時速60キロ)を上回るスピードで赤信号を無視して事故を起こし2人を死亡させた疑いで、逮捕されている。調べに「赤信号でも行ってやろうと思った」と容疑を認めているという。
捜査関係者によると、杉林容疑者は通勤中だった。「他の車を追い抜こうと思った」と供述しており、交差点の数百メートル手前で赤信号を認識したのに、時速140キロ以上のスピードを出し、ブレーキをかけずに交差点に進入したとみられる。
事故現場では、母子を悼む人たちが花を供え、手を合わせている。13日に訪れた富山市の自営業男性(59)は「自分も子どもが3人いて、人ごとと思えない」と話していた。
2人を知る人たちは、深い悲しみの中にいる。壮芽君と小中学校が同じで、クラスメートの女子生徒(14)は「壮芽君はみんなを笑わせてくれた。ショックが大きく、教室も暗いままだ」とつぶやいた。壮芽君は小学生の頃からハンドボールをしていたという。
上田さんの友人で富山市の自営業の女性(46)は「絵莉加さんは、はつらつとし、笑顔が似合う方だった。大会に出る子どもの送迎をよくしていた」と振り返り、「亡くなった実感が湧かない」と目元を拭った。
危険運転致死傷罪は、1999年に東名高速道路で起きた飲酒運転のトラックによる追突事故を契機に、2001年に創設された。同致死罪は1年以上20年以下の拘禁刑で、過失運転致死罪の7年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金より重い。
杉林容疑者は、「赤信号を殊更に無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」として危険運転致死容疑で逮捕された。同じ条文を適用したケースでは、仙台地裁が24年、乗用車で赤信号を無視して時速約96~100キロで交差点に進入し、車の男性を死亡させた男に懲役12年の判決を言い渡した。
富山県内で危険運転致死傷罪が適用されたケースは少ない。2011年に無謀な運転で同乗の友人2人を死傷させたケースでは、12年に富山市の少年(当時19歳)が危険運転致死傷罪などに問われ、富山地裁で懲役3年以上4年以下の実刑判決を受けた。

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