99¢パスタは神!食費より萎える1時間3000円超のパーキング…愛と絶望のNY最新物価レポート

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未曾有の円安。私たちの円は、米ドルを筆頭にあらゆる通貨に押されまくり、今やコールド負けしそうな状況である。2011年10月に史上最安値である75円台をつけたドル/円レートが、ここ最近は140~150円で推移している。日本の生活費は圧迫されるばかりだが、アメリカはどうだろうか。
ニューヨークは世界で最も物費が高い都市の一つだ。ECAインターナショナルの最新調査によると、外国人駐在員にとって最も生活費が高い都市の一つだという(並ぶのはスイスとかシンガポールだって。たしかに高そう)。
そんなニューヨークにうっかり降り立ってしまった筆者が、悲喜こもごもの現地物価レポートをお届けする(※以下、金額はNY滞在時に使用したクレジットカードの為替レート『1ドル/150円』をもとに算出)。
レストランの高さについて数々の噂がとどろいているが、実際にメニュー表を目にするとものすごく萎える。ランチのサラダやパスタが20~30ドルする。欧米にはシェア文化がないため、もくもくと我が高級皿と対峙することになるのも悲しい。こんなに払うなら、せめて他の食べ物も一口欲しい。ケールのサラダのみと向き合ったランチ。ビール1杯とチップで合計55ドルだ。チップは金額の20%程度が相場。掛け算を習った私は、元の価格が高ければ高いほど、チップが高くなることを知っている。2000円程度のチップを支払った。確かに笑顔でビールを注いでくれたけれど。
チップを合わせて約8000円――日本なら愉快な飲み会に2回行ける金額が、1時間のランチタイムで消化されてしまった。健康そうなケールを大量に食べたが、金額を見て具合が悪くなりそうになった。
レストランスタッフの賃金もすごい。ニューヨーク市の雇用労働者の最低賃金は15ドル(2250円)。この時点で日本の倍じゃん…と悲しくなるが、実際は15ドルでは人が集まらず、時給30~40ドルで募集していることがザラらしい。さらには、時給に加えてチップが支払われる。下手したら日本の日当くらいの金額を、ニューヨーカーは1時間で稼いでいるのだ。そりゃ私だって笑顔でビールを注ぐわ。
ドラッグストアに売られていたお犬さまのご飯は、日本の庶民のご飯より高い。14.99ドル(2249円)だ。生類憐れみの令が再び出たのだろうか。時代は巻き戻っているのに、日本はさっぱり追いつけない。
来世はニューヨークで犬になるのも悪くないかもしれない。ブラッシュアップライフ的なことが私の身に降り掛かったら、人間よりもニューヨークの犬を優先したい。
食品店では、見覚えのある納豆が売られていた。3パックで2.79ドル(419円)。日本を基準に考えると高く感じるが、ニューヨークのその他食材と比較するとそこまで高くはない部類である。
“物価比較の覇王”こと卵パックは、10個で5.79ドル(869円)。寿司は16.75ドル(2513円)。日本なら寿司屋で大将が握った寿司ランチが食べられる金額だが、こっちは冷えたパック寿司だ。寿司は世界的にインフレしている。
さすがは世界一のニューヨーク。見渡すもの全てが高い。
屈してはならぬと、どでかいスーパーを徘徊し、安く食を凌げる方法がないかを模索することにした。
庶民の味方のパスタを発見した。なんと99セント! 「伝説の剣」でも見つけたかのごとく嬉しい。毎日パスタを茹で続ければ生きていける気がしてきた。6個入りのトマトが1ドル。トマトパスタの完成だ。っていうか他に選択肢はない。頑張れば一日の食費を千円以下に抑えられることに安堵した。
さらに庶民の味方を発見! バナナは19セント。バナナパスタはしんどいが、朝食も確保できた。食を確保したところで、衣&住を充実させるべく、さらに散策へ。
ハーレム地区にある「ファッションセンターしまむら」のようなお店では、なんと1ドルから服が揃った。ニューヨークのしまむらでおしゃれコーデを決め込んで、日々パスタを食べよう。
安いものを探していたら、100均にありそうな日本語表記の商品が1.99ドル(299円)で並んでいた。日本なら100円で買えるのに…とは思うが、これらの商品もアメリカでは圧倒的に安いシロモノである。100均にありそうな文房具は、海外仕様のパッケージに包まれた途端に、値段がガツンと上がった。日本の技術と品質はすごいのに安い。ありがた悲しい。ニューヨークの地で、人生初の感情に出会えた。ありがとう、日本。
日用品の価格はどうだろうか。小さなティッシュ一箱が2.79ドルだ。日本なら5個入りパックが買えてしまう。おちおち、花粉症にもなっていられない。今年は暖冬につき、2024年の花粉は早めに飛散するという。早急に帰国し、日本で鼻水をたらそうと決めた。
食器洗いのスポンジは、3個パックで4~6ドル。訪日外国人が日本の100均やディスカウントショップで狂喜乱舞する理由がわかる。
財布が悲鳴を上げる顛末となりつつあるが、ニューヨーク育ちの銀行員と話す機会があったので「お前の財布は泣いてないのかい?」と聞いてみた。
「たしかに日本から来たら、円高の影響で高く感じるよね。ただ、こっちの水準で給料を貰っていたら、これが普通。そこまで高いとは感じていない」
待て待て待て、高く感じないの? 普通なの?
実際に物価が高いことよりも、この発言のほうがダメージがでかいかもしれん。この物価に悶え苦しんでいるのは私たちだけ……。ニューヨーカーにとっては、これが日常なのです。おそらくですが「地方から東京に来たら家賃も物価もやっぱちょっと高いよね~」くらいの感覚なのでしょう。
ニューヨーク在住の日本人に話を聞いてみると、「日本円換算をしたら辛くなるので考えないようにしてる。日本にいた時より狭い部屋で家賃は70万円くらい」とのこと。日本の平均月給の倍以上の金額を払っても豪邸には住めない。衣食住のうち、住だけはどうにもならなそうである。
驚愕したのは、街のパーキング。脅威の1時間21.21ドル(3182円)。1日の最大料金ではありませんよ。天下の港区もここではお子様扱い。加えてこのパーキング、最大料金のようなシステムはないそうで、さらなる危険をはらみます。
車がなくても、マンハッタンでは問題なく移動できる。このパーキングを使うのは超絶セレブだけなんだろうけど、本当に高く感じないのだろうか。ちなみに月極駐車場は余裕で10万円オーバーらしい。家やん。
どうでもいいけど、0.21ドルで刻むのはなんなんだ。こっちはキャッシュレス社会だから、1セントがなくてコンビニに走るようなシーンはきっとないのだけれど、日本のパーキングが1時間221円だったら私は非常に戸惑う。クレカやPayPayが使えても戸惑う。21.21ドルは戸惑いどころではない。
タクシー不足が加速する日本でも、導入するかしないかで話題になっている「ライドシェア」サービス、Uberがニューヨークでは定着している。
とにかく歩く街であるニューヨーク。2018年に訪れた際は、疲労を軽減するため、あらゆる移動にUberを活用した。しかし現在、Uberの移動はドルベースで3倍ほどになっているという。つまり円換算すると4.5倍ほどだ。これではちょっとした移動に使うことはできない。地下鉄を駆使し、ひたすら歩くことにした。しかし、地下鉄移動も高い。乗るたびに2.9ドル(435円)かかる。どのみち高い。
なんとか生活費を安くする技をこの地で見出そうとあがいたが、無理だと痛感し、打ちひしがれながら帰国した。
しかも、悔しいことに、私がニューヨークに滞在していた時期が円安のピークで、帰国後にレートは、1ドル141円代まで円が高騰した。なんでやねん。タイミングが悪すぎる。2024年、為替はどう動くのか。円高になるという予測もあるが、ここまで見てわかるように、そもそも物価が圧倒的に違いすぎる。ニューヨークが高く感じるのは、為替の影響のみではない。どのみち高いのだ。
帰国後は、あらゆるものが安く感じる。千円ランチにすら感謝できる体になった。この副反応こそが、ニューヨーク旅の最大の効能だったのかもしれない。日本の物価高を嘆く人は、一旦ニューヨークに行ってみるといいかもしれない。日本の暮らしが充実するライフハックだ。全く役に立たないライフハックを一つ生み出して、私の旅が終わった。
写真・文:井澤梓立命館大学卒業後、金融機関を経て、2010年株式会社ビズリーチの新規事業立ち上げに参画。法人営業や人材エージェントの新規開拓営業に携わる。その後ライターとして独立。経営者などのインタビューを数多く手掛けている。カタル代表(https://cataru.co.jp/)

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