「国民の分断、悲しい」秋葉原、奈良、下関…各地で聞いた国葬への声

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国を挙げて厳かに悼むはずの儀式は、当日まで賛否が分かれる中での異例の開催となった。27日にあった安倍晋三元首相の国葬。一般献花の長い列は夜になっても途切れず、数時間並んで手を合わせる人も多くいた。一方、式のさなかにも国会前や全国で反対の声が上がった。「もっと民意を聞き、葬儀の仕方を考えられたのでは」「世間の理解を得られない中での開催は残念」と落胆の声も聞かれた。
【写真で振り返る】安安倍晋三元首相 国葬の1日 安倍氏は2012年衆院選で政権を奪還して以降、選挙戦の「最後の訴え」の舞台として、サブカルチャーの「聖地」として知られる東京・秋葉原をしばしば選んだ。道行く人の国葬に対する思いはさまざまだ。

「今日一日は安倍さんに思いをはせたい」と話したのは、千葉県船橋市の接客業の男性(25)。秋葉原で多くの聴衆を前に安倍氏が演説する様子を見て「圧倒された」と振り返り、国葬反対の意見については「本当に残念だ」と話した。 仕事で秋葉原に来ていた東京都板橋区の女性会社員(22)は「賛否がある中、国民にしっかり説明をせず、国葬を強行したのは本当に良かったのか」と懐疑的だ。10代の頃から安倍氏が首相だったこともあって親しみを感じる部分もあるといい、「亡き安倍さんも、これだけ賛否がある中で国葬されるのは悲しいと思う」とおもんぱかった。 首相時代の16年5月、主要7カ国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開かれた三重県志摩市では、市庁舎前に半旗が掲げられた。市内の「伊勢志摩サミット記念館」で国葬のテレビ中継を見ていた山崎勝也さん(77)は「サミット準備の時に会った安倍さんは権力者ぶらず、思いやりの深い方だった。国葬への賛否は承知しているが、個人的には厳かにお見送りした」。 サミット時は、同市の自治会連合会長で、地元の官民団体が結成した市民会議では市内のクリーンアップ作戦などの責任者を務めた。15年の秋には、現地を下見した安倍氏から「いろいろと準備をありがとうございます。頑張ってくださいね」とねぎらわれたという。「遠慮がちに記念撮影をお願いしたら、機嫌良く応じてくださった」。ツーショット写真は、今も自宅の居間に飾っているという。 安倍氏が銃撃されて亡くなった奈良市の近鉄大和西大寺駅北口では、朝から手を合わせる人たちの姿が見られた。奈良県警は周辺の雑踏警備に当たった。 堺市の自営業、森崎光展さん(72)は、国葬を巡って世論が二分されていることについて「国民のために一生懸命、働かれた方で人柄も好きだったのに、それを声高に言えない雰囲気があるのは残念。海外からも多くの要人が弔問に来るのに、国民の間で分断があるのは悲しい」と語った。 午後2時に国葬が始まると、スマートフォンで中継を見ながら黙とうをささげる人も。愛知県小牧市から訪れた神谷郁子さん(52)は「拉致問題が進展したのは安倍さんのおかげだと思う」と功績を評価した。 一方、奈良市のJR奈良駅前では、国葬に反対する人たちによる街頭コンサートがあった。フォークシンガーの中川五郎さんら約200人が集まり、国葬反対を歌詞に取り入れた曲などが披露された。中川さんは「民主主義国家のはずなのに、国民の声を聞くことなく国葬が決まったことに違和感を覚えた」と語った。 安倍氏の地元・山口県下関市の事務所では、降りしきる雨の中、朝から弔問に訪れる人の姿が見られた。島根県から訪れた医療事務、山田晶子さん(49)は「国葬について反対意見があるのは分かるけれども、個人としてはすごく残念。あんな形で亡くなった方が後になって批判されるのは、ご遺族の気持ちを思うとつらい」と話した。 下関市の無職、麻野和男さん(78)は「安倍さんほど信念を持って取り組んだ人はいない。悪いところばかり追及するのではなく、長い間、首相をされたご労苦に対して弔意を示すべきではないか」と述べた。 一方、下関市役所の前では、正午から市民団体「戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動しものせき実行委員会」が集会を開き、約60人が「国葬反対」と書かれたプラカードなどを手に街頭へ。共同代表の熊野譲さん(69)は「下関でも多くの人が集まり、改めて反対の声が大きいと感じた。国葬は法的根拠がなく、法の下の平等や内心の自由に反する」と訴えた。 他にも全国各地で抗議活動があり、JR札幌駅南口広場(札幌市)には国葬に反対する約100人が集まった。参加した北海道憲法共同センターの斎藤耕弁護士(50)は「法律的根拠がなく、閣議決定だけで行う国葬を許してよいのか」と駅前を歩く人たちに訴えた。 名古屋市の繁華街、中区栄では、市民団体「安倍元首相の国葬に反対するあいちの会」などが主催したデモ行進があり、約400人が「国葬反対」などと書かれたプラカードを掲げた。呼びかけ人の中谷雄二弁護士が「国葬は国費を私物化して行う反民主主義のキャンペーンだ。そんなお金があるのなら、今苦しんでいる人になぜ手を差し伸べないのか」とアピール。 デモに参加した愛知県東浦町の主婦(51)は「政府にはおごりがあり、政府に反対の声をしっかり届けようと思った」と話した。【遠藤龍、大坪菜々美、尾崎稔裕、吉川雄飛】
安倍氏は2012年衆院選で政権を奪還して以降、選挙戦の「最後の訴え」の舞台として、サブカルチャーの「聖地」として知られる東京・秋葉原をしばしば選んだ。道行く人の国葬に対する思いはさまざまだ。
「今日一日は安倍さんに思いをはせたい」と話したのは、千葉県船橋市の接客業の男性(25)。秋葉原で多くの聴衆を前に安倍氏が演説する様子を見て「圧倒された」と振り返り、国葬反対の意見については「本当に残念だ」と話した。
仕事で秋葉原に来ていた東京都板橋区の女性会社員(22)は「賛否がある中、国民にしっかり説明をせず、国葬を強行したのは本当に良かったのか」と懐疑的だ。10代の頃から安倍氏が首相だったこともあって親しみを感じる部分もあるといい、「亡き安倍さんも、これだけ賛否がある中で国葬されるのは悲しいと思う」とおもんぱかった。
首相時代の16年5月、主要7カ国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開かれた三重県志摩市では、市庁舎前に半旗が掲げられた。市内の「伊勢志摩サミット記念館」で国葬のテレビ中継を見ていた山崎勝也さん(77)は「サミット準備の時に会った安倍さんは権力者ぶらず、思いやりの深い方だった。国葬への賛否は承知しているが、個人的には厳かにお見送りした」。
サミット時は、同市の自治会連合会長で、地元の官民団体が結成した市民会議では市内のクリーンアップ作戦などの責任者を務めた。15年の秋には、現地を下見した安倍氏から「いろいろと準備をありがとうございます。頑張ってくださいね」とねぎらわれたという。「遠慮がちに記念撮影をお願いしたら、機嫌良く応じてくださった」。ツーショット写真は、今も自宅の居間に飾っているという。
安倍氏が銃撃されて亡くなった奈良市の近鉄大和西大寺駅北口では、朝から手を合わせる人たちの姿が見られた。奈良県警は周辺の雑踏警備に当たった。
堺市の自営業、森崎光展さん(72)は、国葬を巡って世論が二分されていることについて「国民のために一生懸命、働かれた方で人柄も好きだったのに、それを声高に言えない雰囲気があるのは残念。海外からも多くの要人が弔問に来るのに、国民の間で分断があるのは悲しい」と語った。
午後2時に国葬が始まると、スマートフォンで中継を見ながら黙とうをささげる人も。愛知県小牧市から訪れた神谷郁子さん(52)は「拉致問題が進展したのは安倍さんのおかげだと思う」と功績を評価した。
一方、奈良市のJR奈良駅前では、国葬に反対する人たちによる街頭コンサートがあった。フォークシンガーの中川五郎さんら約200人が集まり、国葬反対を歌詞に取り入れた曲などが披露された。中川さんは「民主主義国家のはずなのに、国民の声を聞くことなく国葬が決まったことに違和感を覚えた」と語った。
安倍氏の地元・山口県下関市の事務所では、降りしきる雨の中、朝から弔問に訪れる人の姿が見られた。島根県から訪れた医療事務、山田晶子さん(49)は「国葬について反対意見があるのは分かるけれども、個人としてはすごく残念。あんな形で亡くなった方が後になって批判されるのは、ご遺族の気持ちを思うとつらい」と話した。
下関市の無職、麻野和男さん(78)は「安倍さんほど信念を持って取り組んだ人はいない。悪いところばかり追及するのではなく、長い間、首相をされたご労苦に対して弔意を示すべきではないか」と述べた。
一方、下関市役所の前では、正午から市民団体「戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動しものせき実行委員会」が集会を開き、約60人が「国葬反対」と書かれたプラカードなどを手に街頭へ。共同代表の熊野譲さん(69)は「下関でも多くの人が集まり、改めて反対の声が大きいと感じた。国葬は法的根拠がなく、法の下の平等や内心の自由に反する」と訴えた。
他にも全国各地で抗議活動があり、JR札幌駅南口広場(札幌市)には国葬に反対する約100人が集まった。参加した北海道憲法共同センターの斎藤耕弁護士(50)は「法律的根拠がなく、閣議決定だけで行う国葬を許してよいのか」と駅前を歩く人たちに訴えた。
名古屋市の繁華街、中区栄では、市民団体「安倍元首相の国葬に反対するあいちの会」などが主催したデモ行進があり、約400人が「国葬反対」などと書かれたプラカードを掲げた。呼びかけ人の中谷雄二弁護士が「国葬は国費を私物化して行う反民主主義のキャンペーンだ。そんなお金があるのなら、今苦しんでいる人になぜ手を差し伸べないのか」とアピール。
デモに参加した愛知県東浦町の主婦(51)は「政府にはおごりがあり、政府に反対の声をしっかり届けようと思った」と話した。【遠藤龍、大坪菜々美、尾崎稔裕、吉川雄飛】

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