119番に「通帳なくした」…“不要不急の通報”相次ぎ異例の呼びかけ「電話切断も」

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東京消防庁は119番通報が増えたため、不要不急の電話は切断することがあると異例の呼び掛けをしました。途中で電話を切らなければならない通報とはどんなものなのか、指令センターに密着しました。
■去年の119番通報 過去最多約104万件も…
東京消防庁のX(旧ツイッター):「不要不急の電話については、最後までお話を聞かずに切断する場合があります」
東京消防庁が電話を途中で切ることがあるという119番通報とは?緊迫した現場を取材すると、“呆れた実態”が明らかになりました。
東京消防庁にある指令センター。23区すべての119番通報が集まります。
職員:「火事ですか?救急ですか?」
通報者:「救急です。5歳の娘なんですが、ちょっと意識を失いまして」
職員:「今も意識ないですか」
通報者:「はい」
大型のモニターに映し出されたのは、インフルエンザに感染した5歳の女の子です。母親が少し目を離した隙に、意識を失ったと言います。
職員:「動きますね手も。肩たたいて呼んでもらってもいいですか」
通報者:「●●ちゃん、●●ちゃん」
職員:「ちょっとぐったりと…分かりました。今、救急隊と消防隊急いで向かっています」
高齢女性が、食事中に突然意識を失ったという通報もありました。
職員:「1回押したらしっかり戻して、リズムをしっかり行いましょう。1、2、3、4」
職員のアドバイスで心臓マッサージなど応急処置をしたところ、女性は意識が回復しました。
職員:「今、消防隊と救急隊が急いで向かっています。あと2~3分で到着できると思います」
指令センターでは、こうした緊迫のやり取りが24時間365日、休むことなく続いています。
取材した日も、半日で1200件を超える通報がありました。
去年、東京消防庁が受けた119番通報は、過去最多となるおよそ104万件。しかし、去年の同じ時期と比較すると、今年はそれを、さらに上回るペースになっています。
■「タクシー代わり」 不要不急の通報相次ぐ
現場の逼迫(ひっぱく)に拍車を掛けているのが、「不要不急の通報」です。
東京消防庁総合指令室 藤野祐三消防司令補:「不要不急の通報が119番通報全体の2割を占めている」
不要不急の通報によって、一刻を争う人への対応が遅れることもあります。
実際、どんな119番通報が寄せられているのでしょうか。
通報者:「隣に工事現場がありまして、すごく音がうるさくて…」
掛かってきたのは「工事現場の音を何とかしてほしい」という電話です。
職員:「騒音ということですか?」
通報者:「そうですね」
職員:「直接、工事現場に行って言うのが一番かなと思うんですけど。119番ではどうにもできないですね」
また、こんな通報もありました。
通報者:「タクシーが止まらないので、今お願いしたところなんです。タクシーがつかまらないの」
移動手段として、救急車を要請してきたのです。
職員:「タクシーの代わりに救急車を使うということですか」
通報者:「なに?」
職員:「タクシー代わりには救急車は使えないので、タクシーの会社に電話していただいて」
通報者:「お金払います」
職員:「救急車はお金いらないんですよ。お金払えるんだったらタクシー呼んで下さい」
■「通帳なくした」「水止まらない」通報も
他にも、様々な信じられない通報がありました。
通報者:「家で通帳をなくしたんですけど」
職員:「何を?」
通報者:「家で銀行の通帳をなくしたんですけど」
職員:「火事ですか、救急車ですか?」
通報者:「自転車がずっと放置されていて…」
通報者:「電話番号を、お店の電話番号を知りたいんだけど」
職員:「104に掛けて下さい」
通報者:「トイレの水が止まらないんだけど、どうしたらいいんでしょう」
職員:「トイレの水が止まらないということであれば、水道業者とかに連絡してみて下さい」
■入院患者から通報…丁重に断り“切断”
さらには、意外な場所からの通報もありました。
通報者:「●●病院、▲▲号室の■■です」
職員:「今入院されているんですか?」
電話を掛けてきたのは、なんと入院中の病院からでした。
職員:「何も病院の人がしてくれないという相談ですか?退院したいとかいう相談は、先生か看護師さんにしてもらっていいですか」
通報者:「退院ではない。外部と連絡をしてほしいと…」
職員:「こちらでは、119番センターは緊急回線ですので、不要不急の相談は失礼します。失礼します」
職員は、丁重に断ったうえで電話を切断しました。
東京消防庁総合指令室 藤野祐三消防司令補:「(これまでは)相手が納得するまで話を続けていたが、電話の時間が長くなるので、途中で切りますと。119番通報は緊急回線なので、救急車が必要、また消防隊が必要という時に利用してほしい」

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