「10万円の高級水」が売れることも…“コンカフェの実態”を元店長に聞く

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

昨今、一大ブームを巻き起こしているコンカフェ。コンカフェとは、特定のコンセプトを衣装、メニュー、接客などに取り入れたカフェ&バーを指す。コンセプトは、魔法少女、お姫様、ゴスロリ、天使などさまざまで、2000年代初頭に流行したメイドカフェから派生したものと考えられる。一昔前まではアキバカルチャーのイメージが強かったコンカフェ・メイドカフェだが、最近はアルコールを提供する店が増えたこともあり、普通のバーに行く感覚で気軽に足を運んでいる人も多いらしい。しかし、客層が広がったことによりさまざまな事件も起きているようだ。
今回は、コンカフェで店長を務めた経験もある百野綾華さんにインタビューを実施。コンカフェの実態について話を聞いた。
◆入店後一週間後で潰れたアイドルコンカフェ
10代の頃はアイドルユニットに所属していたという百野さん。アイドル卒業後は一度芸能界から距離を置くも、ファンの人と交流する場所がほしいと思い、「アイドルコンセプト」のコンカフェで働くことを決めた。
「アイドルコンセプトとは、現役アイドルや元アイドル、アイドルの卵などが働いているコンカフェです。ステージの時間があって、キャストが歌ったり踊ったりしてくれるお店が多いですね。私のように、セカンドキャリアとしてアイドルコンセプトのお店で働く元アイドルも増えてます。客層は、キャストのアイドル時代のファンや、アイドル好きなお客さんが主ですね。
ただ、『アイドルにはあんまりお酒を飲んでほしくない』と思うお客さんが多いせいか、最も儲けを出しやすいアルコール類が全然売れないんですよ。そのせいかアイドルコンセプトのお店は潰れやすく、私が前に勤めたお店は入店後一週間で潰れました(笑)」
◆「キャストを泥酔させて持ち帰ろうとする」悪質な客も
一方で、シャンパンが1日に何本も開くようなコンカフェは、あまり治安が良くないところも多いそう。
「昔のコンカフェは、本当に普通のカフェとして運営しているお店がほとんどでした。でも、最近はキャバクラやガールズバーの運営がコンカフェ業界に参入してきて、指名に似たシステムやお店には内緒でアフターをしているキャストも出てきているようで、夜のお店との線引きがだいぶあいまいになっています。
でも、キャバクラやガールズバーと違って、コンカフェには男性スタッフがいない店もあって。そういう店を狙い、キャストを泥酔させて持ち帰ろうとする悪質なお客さんもいて……。売上的にはたくさん飲ませてもらったほうがいいので、こればっかりはキャスト同士で連帯して気をつけるしかないんですよね」
◆「靴下を一万円で売ってくれ」という客も
他にも、迷惑なコンカフェ客のエピソードには枚挙にいとまがないようだ。
「手作りのサンドイッチをコンビニのビニール袋に直に入れて渡してきた人、靴下を一万円で売ってくれと交渉してきた人、付き合ってもないのに『親に挨拶してほしい』と頼んできた人とか、困ったお客さんにはたくさん出会いましたね(笑)。
来店予約のためにTwitter(X)でお客さんと個別にDMのやり取りをすることもあって、アイドル時代よりも距離感がかなり近くなったので、勘違いしちゃう人が出てくるのは仕方ないのかもしれないです」
◆やりがい搾取とも言えるコンカフェの労働環境
ホール、キッチン、接客、個別DMでの営業のほか、ビラ配り、SNS更新、動画配信など、普通の飲食店に比べると多くの業務が発生するコンカフェ。しかし、その時給は大体1100~1500円程度だという。

◆10万円の水を初対面で入れてくれた神客
とはいえ、やはりコンカフェでしか体験できない嬉しいイベントや、とんでもない“神客”に遭遇することもあるようで。
「キャストの誕生日をお祝いする“生誕祭”というイベントがあるのですが、私は25~30本ほどのシャンパンを開けさせてもらいました。そのシャンパンを使ってシャンパンタワーをやるんですけど、私はサンリオのシナモロールが好きなので、シナモンデザインのタワーを特注しました。
神客エピソードでいうと、コンカフェには『フィリコ』という売値10万円くらいの高級水があるんですけど。はじめましてのお客さんが『なんか飲んでいいよ』って言ってくれたので、冗談で『じゃあフィリコで』と答えたら、本当にフィリコを入れてくれたことがありました。初対面だし、席に着いたばっかりなのに、まさかフィリコをもらえるとは……驚きでしたね。味は普通の水でした(笑)」
◆コンカフェで“若いイケメン客”は魅力的じゃない
ここまでの神客はなかなかいないかもしれないが、一般的に、コンカフェキャストから好かれる客とはどんな人なのか?
「推しに一途だけど、ほかのキャストとも仲良くしてくれて、無理のない範囲でちゃんとお金も使ってくれる人。そういうお客さんは、本当に素敵だなあと思います。逆に、若いとかイケメンとか、そういう表面上の魅力はあんまりアドバンテージにならないですよ」
最後に百野さんから、コンカフェキャストに“ガチ恋”してしまった客へのアドバイスをもらった。
「お客さんは多かれ少なかれ、みんなキャストに恋してると思ってます。だからガチ恋を気持ち悪いとは全然思わない。キャストだっていつかはお店を卒業するし、それまで一途に推してくれていたお客さんと付き合ったり結婚した子の話も聞いたことがあります。ただし、見返りを求める人はNG。『これだけお金使ったんだから、店外デートしてよ』みたいなのは絶対に嫌われます。本当にキャストのことが好きなら、過剰な見返りを求めず、一途に推しの夢を応援してほしいですね」
<取材・文/渡辺ありさ 撮影/中川菜美>

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。