「俺はヤクザだ。疑うならネットで検索しろ」 10代女性へのわいせつ行為で逮捕された組員のシンプルすぎる犯行と所属組織の数奇な運命

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8月19日、10代の女性に無理やりわいせつな行為をした疑いで、6代目山口組(司忍組長)傘下の2次団体・3代目杉本組(本部:岡山県津山市)の組員の男(52)が逮捕された。これをきっかけに改めて杉本組のこれまでの動きが注目されているという。
【写真を見る】2代目竹中組の安東組長と3代目杉本組の山田組長は、4代目山口組の竹中正久組長を墓参したという「男は8月17日の早朝、ベンチで休んでいた10代の女性に声をかけて、津山市内の男の自宅に誘い込み、自分が暴力団組員であることをインターネットで検索させて認識させたうえで、嫌がる女性に無理やりわいせつな行為をした容疑がもたれています」

と、担当記者。逮捕容疑は10代女性へのわいせつ行為だった フィクションの世界ならば、「俺はヤクザだ」と彫り物の入った背中を見せて脅すところなのだが、今どきは「俺はヤクザだ。疑うならネットで検索しろ」ということになるようである。 男と女性は面識がなく、女性が被害届を提出したことで犯行が露見したという。過去の「組のもんじゃ」事件「現在、男は容疑を否認しています。自宅に連れ込んだところまでは防犯カメラなどで捕捉できるものの、わいせつについては女性の身体や着衣に男の体液などが付着していることなどを明らかにする必要があり、今後の捜査次第では不起訴になる可能性もあるでしょう」(同) 実はこの男は2021年にも強要未遂の疑いで逮捕されている。倉敷市の保健所に新型コロナウイルスに関する電話をかけた際に、「倉敷市の病院は埋まっているから岡山の町の方の病院に入院させてあげると職員に言われた。組のもんじゃ。わし1人の体じゃねんじゃ。もう引かんからな」などと脅して、無理やり入院させるよう迫った疑いが持たれていた。 暴力団員であることを相手に認識させたうえでの容疑というのは今回と共通した特徴と言えるだろうか。いずれの事件も、シンプルといえばシンプル。ある意味で一般人のヤクザへの悪いイメージを体現したようなものなのは間違いない。2代目宅見組幹部から 一方で、この男が所属する杉本組のこの数年の動向はシンプルとはほど遠い。そのあまりに複雑な動向は、業界でも注目の対象となっているのだ。その数奇な運命を見てみよう。 現在の3代目杉本組の山田一組長は元々、3代目山口組(田岡一雄組長)傘下の竹中組(竹中正久組長)に籍を置いていた。1980年発生の「姫路事件」(一部では姫路戦争とも称される)で実行犯となり、懲役12年の刑を受け、徳島刑務所で服役した人物である。 その後、6代目山口組傘下・2代目宅見組(入江禎組長)の幹部に。2015年に入江組長らが神戸山口組を立ち上げた際には従って傘下に入ったものの、翌16年に神戸山口組からの脱退を宣言して絶縁処分を受ける。この時、山田組長の実子である大山義明若頭(当時)は、組長の方針に意を唱えて、4代目杉本組を立ち上げた。これにより、杉本組は分裂に至った。2代目竹中組から池田組「山田組長は2代目宅見組の若頭候補でもあったのですが、造反して6代目山口組傘下の2次団体・2代目竹中組(安東美樹組長)へ移籍しました。かつて所属した竹中組の縁を頼ったうえで、元サヤである6代目への復帰ということになりますね」 と話すのは、竹垣悟氏(元山口組系義竜会会長で、現在はNPO法人「五仁會」を主宰)。 しかし、そこから半年も経たないうちに今度は、当時、神戸山口組傘下だった池田組(池田孝志組長)に移籍。動きはそれにとどまらず、10ヶ月ほどが経過して、今度は6代目直参となった。 整理すると、わずか8年ほどの間に「神戸山口組立ち上げに参加」→「6代目山口組側へ移籍(同時に組は分裂)→「神戸山口組側に移籍」→「6代目山口組直参に」と目まぐるしく動いたことになる。 形のうえではあたかも川中島を何度も往復するような、節操のない動きと取られても仕方がないのかもしれない。一旦2代目宅見組から絶縁処分を受けたはずなのに、同じ神戸山口組傘下の池田組に移籍している点も「ヤクザの常識」から見れば許されざる行為と言える。安東組長との話し合いの結果 もっとも、池田組もまた神戸山口組を脱退して、神戸山口組を公に批判して抜けた絆會と運命共同体となる一方で、神戸山口組と2社連合を結んでいる。これもなかなか一般には理解しがたい動きなので、「ヤクザの常識」というのはケースバイケース、時と場合によるということなのかもしれない。 話を山田一組長の動きに戻すと、ここまで鮮やかで軽やかな身のこなしができた背景には、ある種の密約があったことが指摘されてきた。「山田組長が2代目竹中組から池田組に移ったのは、安東組長との話し合いの結果だと言われており、それがおおむね事実だと私も感じています。つまり、あえて池田組に入り込み、若い衆を同調させ、あわよくば組織の瓦解に追い込むというミッションがあったのでしょう」(同)功績として6代目直参か その作戦が奏功したか否かは判然としないが、その後に神戸側が弱体化の一途をたどっていることは間違いない。加えて、3代目杉本組が6代目直参となっていることから、組織内での評価が高いことも疑いないだろう。「今年、山田組長と安東組長とが連れ立って4代目山口組の竹中正久組長のお墓参りをしたとされています。両者間にわだかまりがあるなら2人で墓参などあり得ないでしょうから、関係は悪くないはずです」(同) 敵対組織に身分を偽装して乗り込んでスパイ活動を展開する行動はフィクションの世界でしばしば描かれるが、現代のヤクザの抗争でも実際に行われていたということになるのだろうか。 シンプルな行動を繰り返す組員と複雑な動きで生き残りを図る組織。どちらも迷惑な存在なのは言うまでもない。デイリー新潮編集部
「男は8月17日の早朝、ベンチで休んでいた10代の女性に声をかけて、津山市内の男の自宅に誘い込み、自分が暴力団組員であることをインターネットで検索させて認識させたうえで、嫌がる女性に無理やりわいせつな行為をした容疑がもたれています」
と、担当記者。
フィクションの世界ならば、「俺はヤクザだ」と彫り物の入った背中を見せて脅すところなのだが、今どきは「俺はヤクザだ。疑うならネットで検索しろ」ということになるようである。
男と女性は面識がなく、女性が被害届を提出したことで犯行が露見したという。
「現在、男は容疑を否認しています。自宅に連れ込んだところまでは防犯カメラなどで捕捉できるものの、わいせつについては女性の身体や着衣に男の体液などが付着していることなどを明らかにする必要があり、今後の捜査次第では不起訴になる可能性もあるでしょう」(同)
実はこの男は2021年にも強要未遂の疑いで逮捕されている。倉敷市の保健所に新型コロナウイルスに関する電話をかけた際に、「倉敷市の病院は埋まっているから岡山の町の方の病院に入院させてあげると職員に言われた。組のもんじゃ。わし1人の体じゃねんじゃ。もう引かんからな」などと脅して、無理やり入院させるよう迫った疑いが持たれていた。
暴力団員であることを相手に認識させたうえでの容疑というのは今回と共通した特徴と言えるだろうか。いずれの事件も、シンプルといえばシンプル。ある意味で一般人のヤクザへの悪いイメージを体現したようなものなのは間違いない。
一方で、この男が所属する杉本組のこの数年の動向はシンプルとはほど遠い。そのあまりに複雑な動向は、業界でも注目の対象となっているのだ。その数奇な運命を見てみよう。
現在の3代目杉本組の山田一組長は元々、3代目山口組(田岡一雄組長)傘下の竹中組(竹中正久組長)に籍を置いていた。1980年発生の「姫路事件」(一部では姫路戦争とも称される)で実行犯となり、懲役12年の刑を受け、徳島刑務所で服役した人物である。
その後、6代目山口組傘下・2代目宅見組(入江禎組長)の幹部に。2015年に入江組長らが神戸山口組を立ち上げた際には従って傘下に入ったものの、翌16年に神戸山口組からの脱退を宣言して絶縁処分を受ける。この時、山田組長の実子である大山義明若頭(当時)は、組長の方針に意を唱えて、4代目杉本組を立ち上げた。これにより、杉本組は分裂に至った。
「山田組長は2代目宅見組の若頭候補でもあったのですが、造反して6代目山口組傘下の2次団体・2代目竹中組(安東美樹組長)へ移籍しました。かつて所属した竹中組の縁を頼ったうえで、元サヤである6代目への復帰ということになりますね」
と話すのは、竹垣悟氏(元山口組系義竜会会長で、現在はNPO法人「五仁會」を主宰)。
しかし、そこから半年も経たないうちに今度は、当時、神戸山口組傘下だった池田組(池田孝志組長)に移籍。動きはそれにとどまらず、10ヶ月ほどが経過して、今度は6代目直参となった。
整理すると、わずか8年ほどの間に「神戸山口組立ち上げに参加」→「6代目山口組側へ移籍(同時に組は分裂)→「神戸山口組側に移籍」→「6代目山口組直参に」と目まぐるしく動いたことになる。
形のうえではあたかも川中島を何度も往復するような、節操のない動きと取られても仕方がないのかもしれない。一旦2代目宅見組から絶縁処分を受けたはずなのに、同じ神戸山口組傘下の池田組に移籍している点も「ヤクザの常識」から見れば許されざる行為と言える。
もっとも、池田組もまた神戸山口組を脱退して、神戸山口組を公に批判して抜けた絆會と運命共同体となる一方で、神戸山口組と2社連合を結んでいる。これもなかなか一般には理解しがたい動きなので、「ヤクザの常識」というのはケースバイケース、時と場合によるということなのかもしれない。
話を山田一組長の動きに戻すと、ここまで鮮やかで軽やかな身のこなしができた背景には、ある種の密約があったことが指摘されてきた。
「山田組長が2代目竹中組から池田組に移ったのは、安東組長との話し合いの結果だと言われており、それがおおむね事実だと私も感じています。つまり、あえて池田組に入り込み、若い衆を同調させ、あわよくば組織の瓦解に追い込むというミッションがあったのでしょう」(同)
その作戦が奏功したか否かは判然としないが、その後に神戸側が弱体化の一途をたどっていることは間違いない。加えて、3代目杉本組が6代目直参となっていることから、組織内での評価が高いことも疑いないだろう。
「今年、山田組長と安東組長とが連れ立って4代目山口組の竹中正久組長のお墓参りをしたとされています。両者間にわだかまりがあるなら2人で墓参などあり得ないでしょうから、関係は悪くないはずです」(同)
敵対組織に身分を偽装して乗り込んでスパイ活動を展開する行動はフィクションの世界でしばしば描かれるが、現代のヤクザの抗争でも実際に行われていたということになるのだろうか。
シンプルな行動を繰り返す組員と複雑な動きで生き残りを図る組織。どちらも迷惑な存在なのは言うまでもない。
デイリー新潮編集部

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