新たな土俵はとんかつ店、元人気力士らの「熱闘」に外国人が大歓声

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土俵の中央でがっぷり四つに組み合う両力士。
わずかな隙に豪快な上手投げが決まると、客席から割れんばかりの拍手と歓声が湧き起こった。
ここは墨田区。といっても両国ではない。土を盛って仕立てられた本物の土俵が店内に置かれた、ユニークなとんかつ店での一コマだ。
「横綱とんかつ どすこい田中」では、週に3回、昼の時間帯に外国人観光客向けの「相撲ショー」を行っている。ショーとはいえ、出演するのはかつて国技館の土俵を沸かせた元力士たち。立ち合いからの激しいぶつかりや、繰り出す技の鋭い切れ味など迫力満点だ。希望すれば力士の着ぐるみを着て、元力士と「対戦」することも出来る。日本伝統の国技と食文化が同時に楽しめるとあって店は大繁盛。ショーは昨年12月から毎回のように満席が続いている。
元力士でオーナーの田中康弘さん(47)が「引退した力士たちの受け皿を作りたい」と、昨年11月に開店した。自身の引退後、社会に出て苦労した経験から、力士のセカンドキャリアを後押しする事業を手がけているという。
昨年9月に引退した元小結・常幸龍の佐久間貴之さん(35)は、店内の土俵に立ちながら教員免許の取得を目指している。将来は「高校の相撲部の指導者になりたい」と目を輝かせた。
「引退した力士たちが社会人経験を積んで、その後の成長につなげられる場所にしたい」。土俵を下りても、田中さんの「取組(とりくみ)」は続いているようだ。
(写真と文 須藤菜々子)

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