異常な猛暑が続く今年の夏だが、悪夢は気温だけではない。物価高や電気代の高騰で子育て中の困窮世帯はかつてないほどの苦境に置かれている。
この夏休みに何が起きているのか。支援者への取材や当事者の声から浮かび上がった子供の貧困の実情に迫った。
◆子育て世帯にとって、かつてなく厳しい今夏
「夏休み、給食が止まったら子供の栄養が足りなくなる。食料を買いに行くにしても労力と食費がかかる」
「働いても、働いても賃金は上がらず物価は上がって、子供をどこかに連れていく余裕なんてないよ……」
夏休みに入ってから、SNSではそんな投稿が飛び交う。
長く続く賃金の低迷にやまぬ物価上昇、電気代の値上げ、さらにコロナ禍での給付金もない。子育て世帯にとって、今夏はかつてなく厳しい。
厚生労働省は7月、’21年の子供の相対的貧困率が11.5%となり、前回調査よりも2.5%改善したと発表。
しかし、’19年の全国家計構造調査では、ひとり親世帯の貧困率は57%。半数以上が困窮しており改善したとは言い難い。
◆「食料品を送ってください」
特に非正規雇用の多いシングルマザーが厳しい状況にある。困窮世帯の親子をサポートする大阪のNPO法人「CPAO」代表の徳丸ゆき子氏は次のように話す。
「『食料品を送ってください』という子育て世帯からの依頼が今夏は多い。うちシングルマザーが約8割。物価高でダイレクトに生活に響いているんです。
生活保護受給世帯も多く、保護を受けながら非正規で働いている方もいる。正規雇用の人はほぼいません」
◆「子供が1人で調理」ガスが止まっている家庭も
夏休みに入り学校給食がなくなったため「子供が1人で調理できる食料品を届けていただきたいという依頼が増えた」と話すのは、風俗やキャバクラなど夜職に就くひとり親を中心に支援活動をする「ハピママメーカープロジェクト」の石川菜摘氏だ。
「食べ物がないから提供してほしいという依頼に対して、パックご飯や缶詰、カップラーメンを中心に家族で1~2週間はもつ食料をお渡しています。
仕事中は子供がひとりで留守番しているため、『レンチンできるものが入っていると助かる』と言われます。栄養価の高い生野菜は特に喜ばれるのですが、渡し方が難しく、野菜ジュースになることも。
また、ガスが止まっている人もいるので、その場合は、ガスコンロとボンベをお渡しすることもあります」
◆家族全員分で500円の弁当「きつい」
困窮世帯は食料支援に頼るほか、スーパーの値引き食材を活用する世帯も多い。
「お金がなくなると精神的余裕がなくなります。すると、料理も作れなくなっていきます。
関西の激安スーパーですと、お弁当のタイムセールが始まると半額になって100円台になることもある。そうした弁当を活用する子も多い。
それでも家族全員分を買うと500~600円になり、きついそうです」(徳丸氏)
【徳丸ゆき子氏】大阪府生まれ。困窮家庭の親子をサポートするNPO法人「CPAO」代表。’03年より国際協力NGOに所属し、子供の貧困問題などに取り組んでいる。
【石川菜摘氏】 キャバクラや風俗など夜の世界で働くシングルマザーの支援活動を行う「ハピママメーカープロジェクト」の代表。食料無償提供活動などを行う。