「いつも旅行先で便秘」「緊張すると腹痛」その理由とは?消化器専門医が解説する腸と自律神経の「密」すぎる関係について

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ストレス過多な社会、食生活の欧米化といった時代の変化によって、日本人の「腸の動き」は一昔前より悪くなっていることをご存じですか。最近の医学の進歩で、腸の役割は多岐にわたるということがわかってきました。「私たちの健康の9割は、腸が司っている」と語るのは、消化器専門医の川本徹さん。その川本先生いわく「腸の動きが活発になるか、鈍くなるかは、主に自律神経の働きに影響される」そうで――。
【表】交感神経と副交感神経の役割とは* * * * * * *腸がいい状態を保つには適切なぜん動運動が不可欠腸は「食べて出す」ための働きだけでなく、体や心の健康にプラスの作用をもたらすホルモンまで作っているすごい臓器です。ですから、できるだけ腸に負担をかけるようなことをせず、その機能を十分に果たせるようにサポートしてあげましょう。そうすれば、腸が元気になる→さらによく働いてくれる→「食べて出す」がスムーズになる&いいホルモンがたくさん出る→体や心がさらに健康になるというよいサイクルが生まれます。そのためには、繰り返しになりますが、何よりも腸のぜん動運動が適切に行われるようにすることが大事です。腸がいい状態を保つためには、腸を波のようにくねらせる動きが欠かせないのです。では、どうすればぜん動運動は正常に行われるのでしょう。実は、腸のぜん動運動は、自律神経と深く関わっています。交感神経と副交感神経の正しいリズム自律神経という言葉は、健康に欠かせないキーワードとしてよく耳にしますね。そのバランスが大切で「自律神経を整えれば健康になる」と言われたりしますが、腸の動きが活発になるか、鈍くなるかは、主に自律神経の働きに影響されるのです。自律神経というのは、私たちの意思と関係なく、体を動かすために働いている神経です。『結局、腸が9割 名医が教える「腸」最強の健康法』(著:川本徹/アスコム)この体中に張り巡らされた神経が臓器に信号を送っていて、呼吸をするために横隔膜を動かしたり、心臓を動かすなど、生きていくために必要な体の動きに関係しています。自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があり、常に両方が働いているのではなく、1日の中でどちらかが優位に働いている時間帯がだいたい決まっています。簡単に言うと、交感神経が優位に働いている時は、体は活動的で緊張感を持っている状態。副交感神経が優位になると、体はリラックスした状態になって休息のための動きをします。ですから、太陽が昇っている朝から昼間の間は交感神経が優位に、夕方から夜は副交感神経が優位になるというのが正しいリズムです。腸のぜん動運動は自律神経の働きと連動している腸のぜん動運動と自律神経がどう関係しているかというと、交感神経が優位になるとぜん動運動は鈍くなり、副交感神経が優位になるとぜん動運動は活発になります。ですから、排便は副交感神経が優位のリラックスした状態のときに起きやすく、常に緊張状態で交感神経が優位なままの人は、ぜん動運動が鈍いために便秘になりやすいのです。また、交感神経が優位になりすぎたり、いわゆる自律神経の乱れが起きていると、便秘になることもあれば、逆にぜん動運動が激しくなりすぎて下痢が起こる場合もあります。例えば、旅行に行くといつも便秘になる、緊張する場面になるとお腹が痛くなって下痢をする、といったような症状は、どちらも自律神経の乱れによるものです。いずれにしても、腸のぜん動運動は、私たちが自分の意思で強弱をコントロールできるものではなく、自律神経がそのカギを握っています。自律神経のバランスを整えることが大事腸と自律神経は、とても密な関係なのです。交感神経と副交感神経のバランスが取れていて、優位になる時間帯も一日のうちで自然に切り替わっていれば正常な状態。このように自律神経が整った状態であれば、腸のぜん動運動は適切に行われ、「食べて出す」のプロセスも正常に行われます。つまり、便秘でも下痢でもなく、ほぼ毎日スムーズな排便がある人は、自律神経も整っていると言えるでしょう。とはいえ、ストレスの多い現代社会において、そんな人の方が少ないかもしれません。日常の忙しさから、食事も生活習慣も乱れがちです。そうした生活を続けていると、自律神経のバランスが崩れ、腸のぜん動運動が適切に行われなくなり、当然便秘、下痢といったお腹のトラブルにつながります。それだけでなく、疲労感、めまい、食欲不振、冷え、頭痛などなどの不調や、不安感、イライラ、集中力の低下、情緒不安定など、メンタル面の不調も起こります。腸の健康のために、そして全身の健康のためにも、自律神経のバランスを整えておくことはとても大事なことなのです。腸は実際に自律神経に包まれている自律神経について、もう少しだけお話ししておきましょう。先ほどから、自律神経と腸のぜん動運動には密接な関係があるとお伝えしていますが、みなさんの中にはまだ納得がいかない、イメージしにくいという方もいらっしゃるかもしれませんね。そこで、下のイラストをご覧ください。これは、腸の管がどんなつくりになっているかを示したものです。腸の管のつくり<『結局、腸が9割 名医が教える「腸」最強の健康法』より>腸の管は、粘膜と筋肉がバウムクーヘンの層のように、重なって作られています。そして、腸の管の壁の中には、ネットのようなものが張り巡らされている層が2つありますね。このネット状のものは、どちらも神経細胞です。食べ物が通過していく管の一番内側は粘膜で覆われ、その粘膜をひとつ目の神経のネットが覆っています。次にひとつめの筋肉の層があり、その筋肉をふたつ目の神経のネットが覆っています。その外側はさらに筋肉の層で覆われています。ひとつ目の神経のネットは、マイスナー神経叢と呼ばれ、副交感神経だけで構成されている神経叢です。ホルモンなどの生理活性物質の分泌を調節していて、主に小腸と大腸にあります。ふたつ目は、アウエルバッハ神経叢という神経のネットです。このアウエルバッハ神経叢は、交感神経と副交感神経の両方で構成されていて、ぜん動運動の緊張と弛緩を調節しています。食道、胃、小腸、大腸にあり、肛門括約筋にまで存在しています。このふたつをまとめて「腸管神経」と呼びます。つまり、腸の動きが自律神経の働きに左右されるのは、実際に神経がびっしりと腸管にくっついているから。イラストで示したように、実際に自律神経のネットで包まれているから、腸のぜん動運動は自律神経の働きにダイレクトに影響されるのです。※本稿は、『結局、腸が9割 名医が教える「腸」最強の健康法』(アスコム)の一部を再編集したものです。
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腸は「食べて出す」ための働きだけでなく、体や心の健康にプラスの作用をもたらすホルモンまで作っているすごい臓器です。
ですから、できるだけ腸に負担をかけるようなことをせず、その機能を十分に果たせるようにサポートしてあげましょう。
そうすれば、腸が元気になる→さらによく働いてくれる→「食べて出す」がスムーズになる&いいホルモンがたくさん出る→体や心がさらに健康になるというよいサイクルが生まれます。
そのためには、繰り返しになりますが、何よりも腸のぜん動運動が適切に行われるようにすることが大事です。
腸がいい状態を保つためには、腸を波のようにくねらせる動きが欠かせないのです。
では、どうすればぜん動運動は正常に行われるのでしょう。
実は、腸のぜん動運動は、自律神経と深く関わっています。
自律神経という言葉は、健康に欠かせないキーワードとしてよく耳にしますね。
そのバランスが大切で「自律神経を整えれば健康になる」と言われたりしますが、腸の動きが活発になるか、鈍くなるかは、主に自律神経の働きに影響されるのです。
自律神経というのは、私たちの意思と関係なく、体を動かすために働いている神経です。
『結局、腸が9割 名医が教える「腸」最強の健康法』(著:川本徹/アスコム)
この体中に張り巡らされた神経が臓器に信号を送っていて、呼吸をするために横隔膜を動かしたり、心臓を動かすなど、生きていくために必要な体の動きに関係しています。
自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があり、常に両方が働いているのではなく、1日の中でどちらかが優位に働いている時間帯がだいたい決まっています。
簡単に言うと、交感神経が優位に働いている時は、体は活動的で緊張感を持っている状態。
副交感神経が優位になると、体はリラックスした状態になって休息のための動きをします。
ですから、太陽が昇っている朝から昼間の間は交感神経が優位に、夕方から夜は副交感神経が優位になるというのが正しいリズムです。
腸のぜん動運動と自律神経がどう関係しているかというと、交感神経が優位になるとぜん動運動は鈍くなり、副交感神経が優位になるとぜん動運動は活発になります。
ですから、排便は副交感神経が優位のリラックスした状態のときに起きやすく、常に緊張状態で交感神経が優位なままの人は、ぜん動運動が鈍いために便秘になりやすいのです。
また、交感神経が優位になりすぎたり、いわゆる自律神経の乱れが起きていると、便秘になることもあれば、逆にぜん動運動が激しくなりすぎて下痢が起こる場合もあります。
例えば、旅行に行くといつも便秘になる、緊張する場面になるとお腹が痛くなって下痢をする、といったような症状は、どちらも自律神経の乱れによるものです。
いずれにしても、腸のぜん動運動は、私たちが自分の意思で強弱をコントロールできるものではなく、自律神経がそのカギを握っています。
腸と自律神経は、とても密な関係なのです。交感神経と副交感神経のバランスが取れていて、優位になる時間帯も一日のうちで自然に切り替わっていれば正常な状態。
このように自律神経が整った状態であれば、腸のぜん動運動は適切に行われ、「食べて出す」のプロセスも正常に行われます。
つまり、便秘でも下痢でもなく、ほぼ毎日スムーズな排便がある人は、自律神経も整っていると言えるでしょう。
とはいえ、ストレスの多い現代社会において、そんな人の方が少ないかもしれません。
日常の忙しさから、食事も生活習慣も乱れがちです。そうした生活を続けていると、自律神経のバランスが崩れ、腸のぜん動運動が適切に行われなくなり、当然便秘、下痢といったお腹のトラブルにつながります。
それだけでなく、疲労感、めまい、食欲不振、冷え、頭痛などなどの不調や、不安感、イライラ、集中力の低下、情緒不安定など、メンタル面の不調も起こります。
腸の健康のために、そして全身の健康のためにも、自律神経のバランスを整えておくことはとても大事なことなのです。
自律神経について、もう少しだけお話ししておきましょう。
先ほどから、自律神経と腸のぜん動運動には密接な関係があるとお伝えしていますが、みなさんの中にはまだ納得がいかない、イメージしにくいという方もいらっしゃるかもしれませんね。
そこで、下のイラストをご覧ください。これは、腸の管がどんなつくりになっているかを示したものです。
腸の管のつくり<『結局、腸が9割 名医が教える「腸」最強の健康法』より>
腸の管は、粘膜と筋肉がバウムクーヘンの層のように、重なって作られています。そして、腸の管の壁の中には、ネットのようなものが張り巡らされている層が2つありますね。
このネット状のものは、どちらも神経細胞です。
食べ物が通過していく管の一番内側は粘膜で覆われ、その粘膜をひとつ目の神経のネットが覆っています。
次にひとつめの筋肉の層があり、その筋肉をふたつ目の神経のネットが覆っています。その外側はさらに筋肉の層で覆われています。
ひとつ目の神経のネットは、マイスナー神経叢と呼ばれ、副交感神経だけで構成されている神経叢です。
ホルモンなどの生理活性物質の分泌を調節していて、主に小腸と大腸にあります。
ふたつ目は、アウエルバッハ神経叢という神経のネットです。
このアウエルバッハ神経叢は、交感神経と副交感神経の両方で構成されていて、ぜん動運動の緊張と弛緩を調節しています。
食道、胃、小腸、大腸にあり、肛門括約筋にまで存在しています。
このふたつをまとめて「腸管神経」と呼びます。
つまり、腸の動きが自律神経の働きに左右されるのは、実際に神経がびっしりと腸管にくっついているから。
イラストで示したように、実際に自律神経のネットで包まれているから、腸のぜん動運動は自律神経の働きにダイレクトに影響されるのです。
※本稿は、『結局、腸が9割 名医が教える「腸」最強の健康法』(アスコム)の一部を再編集したものです。

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