まるで“子供”の新入社員。母親から会社に電話「今日はお休みさせていただきます」

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多くの企業が新入社員を迎え入れる春。新卒はもちろん、転職してきた人たちで職場の空気は一変する。だが、そこに上司や先輩を困らせる自分勝手な“とんでも新入社員”が紛れ込んでくることもあるのだ。“個”が尊重される時代においても、組織としては悩ましい問題である–。 傍若無人に振る舞う新入社員の対応に困っている上司や先輩社員も少なくない。 ◆注意されると「まるで幼児」 山田裕也さん(仮名・60代)が勤めていた中堅商社は、毎年数十名の新入社員が採用されていた。 「ひときわ目立つ女性社員Aが入社しました。丸顔で目が大きく、鼻筋の通った小柄な女性で、華やかな雰囲気を醸し出す人でした」 Aの見た目から、特に男性陣のウケは最高だったという。ただし、仕事の覚えはよくなかったそうだ。 「正直、現場で実際に指導する立場の先輩社員からの評判はイマイチでしたね」 ある日、「何だ、これは。書類の体裁が無茶苦茶じゃないか! ひどいぞ、すぐに直してこい」という課長の大声が響きわたった。すると突然……。 「『いやあ~。うえ~ん、うえ~ん』という泣き声が聞こえてきました。そして、どた~んという音が響いたんです」 周囲はその光景を目の当たりにしてア然。Aが、フロアに仰向けにひっくり返っていた。手足をバタバタさせながら、泣き喚いていたという。
◆可愛い“モンスター”? 「顔を見ると、大粒の涙を流していました。まるで幼児です。慰めようも、なだめようもありません。まったく手のうちようもありませんでした。そこに、騒ぎに気づいた部長が顔を出したのですが、Aからは驚くべき言動が飛び出します。『おじさま~、課長さんがいじめるの』と言ったんです。まさに子供が親に助けを求めているようでした」 どうやらAの父親と部長は同級生で、家族ぐるみの付き合いがあったようだ。 また、あるときには……。 「社員食堂でAのトレーからお椀が落下したことがありました。そのときにも、『きゃあ~』と泣き叫ぶ始末でした。このようなエピソードがいくつか重なり、社内で“モンスター”と見られていましたが、本人は自分で自分を『可愛いでしょ?』なんて言うこともあって、周囲は呆れるしかありませんでした」
◆仕事中に「銀行行ってきていいっすか?」 有田夏雄さん(仮名・30代)は、入社したばかりの頃は真面目だった新卒社員Bが、しばらくしてモンスターへと変貌していく様子を教えてくれた。 「慌ただしい時期で、私は書類作成に追われていました。するとBが唐突に、『銀行行ってきていいっすか』と言ったんです。緊急な用事があったのかと思い、本人に理由を聞いたのですが……」 Bは、当然のように「いや、金がなくて昼飯が買えないから」と言ったという。 「私が『昼休みにしたら?』と言うと、『昼休みの時間が短くなるので』と返ってきました。このとき、“こいつはモンスターだな”と気づきました」 ◆母親から「今日はお休みさせていただきます」 「彼は遅刻しても、『自分、朝弱いので』と謝る様子もありません」 有田さんは、さすがに腹が立ち、強めに注意したそうだ。しかし、Bの反応はほとんどなく、まるで響いていない表情だった。そして翌日、あり得ないことが起こる。 「Bは会社に来ませんでした。そしたら私の携帯に知らない番号からの着信があったんです。Bの母親からでした。『今日お休みさせていただきます』と」 普通は自分で電話するだろうと、有田さんは思った。それから数日間、無断欠勤。電話をしても出なかったという。
◆音信不通のまま退職 「何日か経って、Bに電話をしてみても繋がりません。さらに数日が経過すると、“この電話番号は現在使われておりません”というアナウンス。音信不通のまま、Bは退職しました」 それから現在に至るまで、Bを超えるモンスターは現れていないと有田さんは言う。 「再びBのような新入社員と出会う可能性はあります。上手く付き合うためには、私が変わらなくてはいけないのでしょうか?」 せっかくの新入社員にすぐに辞められては困るなかで、有田さんは葛藤しながら後輩を指導する日々が続いている。 <取材・文/chimi86>
―[とんでも新入社員録]―

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