中高年男性は「異性への関心」を失うと“早死に”しやすい!?調査で1.69倍の違い…“男性特有”のワケを研究者に聞いた

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異性への関心がない中高年男性は、関心がある人よりも死亡リスクが高い。このような結果を、山形大学医学部看護学科・櫻田香教授らの研究グループがまとめた。研究グループは、山形県内の7市で健康診断を受けた、40歳以上の男女約1万9000人(男性7668人・平均年齢64.2歳、女性1万1386人・平均年齢61.6歳)の許可を得て、環境要因と死亡リスクとの関連性についての調査を実施。

異性への関心のほか、病歴、血圧、笑いの頻度、喫煙状況、アルコール摂取の状況、精神的ストレスなどについての質問をした上で、2009年から最大9年間(中央値7.1年間)の追跡調査を行った。異性への関心は「はい(ある)」「いいえ(ない)」の2択で選んでもらい、男性の8.3%、女性の16.1%が、関心がないと答えたという。異性への関心の有無で「総死亡リスク」に1.69倍の違い調査期間中には、男性356人、女性147人、合計で503人が亡くなった。このうち、67人は心血管疾患、162人はがんによるものだった。この結果を踏まえてデータを解析したところ、男性の死亡率は、異性に関心がないと9.6%、関心があると5.6%で違いがあった。単純な死亡率だけではなく、年齢、高血圧、糖尿病といった寿命に影響する要素を調整して統計学的に比較しても、異性に関心がない男性はある男性よりも1.69倍、総死亡リスクが高かったという。一方で、女性は異性への関心と死亡リスクに関連はみられなかった。研究成果は2022年12月、アメリカの科学誌「プロスワン」に掲載された。男性の方が、精神的な要因が死亡リスクに与える影響が大きいと推測中高年男性には興味深い結果だが、対処はできるのだろうか。また、女性はどう考えればいいのかも気になるところだ。櫻田教授に聞いた。――異性への関心と死亡リスクの関連性を調べた経緯を教えて。私たちのコホート研究では、生活習慣などの要因と病気、生命予後との関連性を調べています。共同研究者と研究について話した時「性別、性差は人が幸せに生きる上で大切なテーマではないか」となりまして、調査票に「異性への関心」についての質問があることを思い出し、解析をしました。――そもそも「異性に関心がない」はどんな状態?質問紙を郵送して答えていただいているので、個人の判断によってきてしまいます。これは、この研究の限界でもあると思います。――関心の有無で死亡リスクが違うのはなぜ?過去にも“生きがい”を持つ男性は、持たない男性よりも心血管死亡リスクが低い、ソーシャルサポート(社会的なつながりの中でやりとりされる支援)を受けていない男性は、死亡リスクが高いなどの報告がされています。異性への関心があることが、ポジティブな考え方や生きがい、ソーシャルサポートなどと何らかの関連があるのではないかと考えています。具体的な機序はわかりませんが、女性よりも男性では、精神的な要因が死亡リスクに与える影響が大きいのではないかと推測します。喫煙者、糖尿病、精神的苦痛などを抱えている傾向にあった――中高年男性はどう対処すればいい?異性への関心だけでなく、いろんな人や物事に関心を持ち交流の機会を持つことが大切かと思います。地域の社会活動に参加する、趣味や仕事で人と会うような機会を増やす、などが考えられると思います。――異性に関心がない男性に共通点はある?男性で異性に関心がないと答えた人では、タバコを現在吸っている人の割合が高い、糖尿病の方が多い、精神的苦痛を感じている人が多い、などの特徴がみられています。――女性が死亡リスクの対処としてできることは?今回の研究結果からは具体的な示唆はありませんが、以前行った研究では「笑う頻度が極端に少ない女性は死亡リスクが高い」というデータがでていますので、よく笑うように努めてもらうと良いかもしれません。他者に興味・関心を持つことが大事では――性的少数者はどのように考えればいい?生物学的な性別か社会的な性別のどちらが、死亡リスクに影響を与えるのかは全くわかりません。ただ、今回の研究結果では、異性に関心があると寿命が縮まるというデータはありませんので、異性でも同性でも関心を持っていた方が良いのではないかと思います。――今回の研究成果はどんなことに活用できそう?地域の保健活動、健康指導などの際に、人との交流を活性化することで寿命延伸に役立つかもしれません。皆さんも恋をして、仕事やプライベートを頑張ろうという気持ちになることもあるはず。いくつになっても、異性に関心を持つことが、行動する原動力のひとつになって、いい影響をもたらすということなのかもしれない。
異性への関心がない中高年男性は、関心がある人よりも死亡リスクが高い。このような結果を、山形大学医学部看護学科・櫻田香教授らの研究グループがまとめた。
研究グループは、山形県内の7市で健康診断を受けた、40歳以上の男女約1万9000人(男性7668人・平均年齢64.2歳、女性1万1386人・平均年齢61.6歳)の許可を得て、環境要因と死亡リスクとの関連性についての調査を実施。
異性への関心のほか、病歴、血圧、笑いの頻度、喫煙状況、アルコール摂取の状況、精神的ストレスなどについての質問をした上で、2009年から最大9年間(中央値7.1年間)の追跡調査を行った。
異性への関心は「はい(ある)」「いいえ(ない)」の2択で選んでもらい、男性の8.3%、女性の16.1%が、関心がないと答えたという。
調査期間中には、男性356人、女性147人、合計で503人が亡くなった。このうち、67人は心血管疾患、162人はがんによるものだった。
この結果を踏まえてデータを解析したところ、男性の死亡率は、異性に関心がないと9.6%、関心があると5.6%で違いがあった。単純な死亡率だけではなく、年齢、高血圧、糖尿病といった寿命に影響する要素を調整して統計学的に比較しても、異性に関心がない男性はある男性よりも1.69倍、総死亡リスクが高かったという。
一方で、女性は異性への関心と死亡リスクに関連はみられなかった。研究成果は2022年12月、アメリカの科学誌「プロスワン」に掲載された。
中高年男性には興味深い結果だが、対処はできるのだろうか。また、女性はどう考えればいいのかも気になるところだ。櫻田教授に聞いた。
――異性への関心と死亡リスクの関連性を調べた経緯を教えて。
私たちのコホート研究では、生活習慣などの要因と病気、生命予後との関連性を調べています。共同研究者と研究について話した時「性別、性差は人が幸せに生きる上で大切なテーマではないか」となりまして、調査票に「異性への関心」についての質問があることを思い出し、解析をしました。
――そもそも「異性に関心がない」はどんな状態?
質問紙を郵送して答えていただいているので、個人の判断によってきてしまいます。これは、この研究の限界でもあると思います。
――関心の有無で死亡リスクが違うのはなぜ?
過去にも“生きがい”を持つ男性は、持たない男性よりも心血管死亡リスクが低い、ソーシャルサポート(社会的なつながりの中でやりとりされる支援)を受けていない男性は、死亡リスクが高いなどの報告がされています。
異性への関心があることが、ポジティブな考え方や生きがい、ソーシャルサポートなどと何らかの関連があるのではないかと考えています。具体的な機序はわかりませんが、女性よりも男性では、精神的な要因が死亡リスクに与える影響が大きいのではないかと推測します。
――中高年男性はどう対処すればいい?
異性への関心だけでなく、いろんな人や物事に関心を持ち交流の機会を持つことが大切かと思います。地域の社会活動に参加する、趣味や仕事で人と会うような機会を増やす、などが考えられると思います。
――異性に関心がない男性に共通点はある?
男性で異性に関心がないと答えた人では、タバコを現在吸っている人の割合が高い、糖尿病の方が多い、精神的苦痛を感じている人が多い、などの特徴がみられています。
――女性が死亡リスクの対処としてできることは?
今回の研究結果からは具体的な示唆はありませんが、以前行った研究では「笑う頻度が極端に少ない女性は死亡リスクが高い」というデータがでていますので、よく笑うように努めてもらうと良いかもしれません。
――性的少数者はどのように考えればいい?
生物学的な性別か社会的な性別のどちらが、死亡リスクに影響を与えるのかは全くわかりません。ただ、今回の研究結果では、異性に関心があると寿命が縮まるというデータはありませんので、異性でも同性でも関心を持っていた方が良いのではないかと思います。
――今回の研究成果はどんなことに活用できそう?
皆さんも恋をして、仕事やプライベートを頑張ろうという気持ちになることもあるはず。いくつになっても、異性に関心を持つことが、行動する原動力のひとつになって、いい影響をもたらすということなのかもしれない。

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