オウム後継のアレフ、「松本元死刑囚の次男が運営主導」と報告せず…公安庁「閉鎖的な性格の表れ」

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公安調査庁は22日、オウム真理教の後継団体主流派「Aleph(アレフ)」について、教団の教祖・麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚(2018年に刑執行)の次男が運営を主導していることを確認したと発表した。
アレフの運営に対する次男の関与を同庁が指摘したのは初めて。アレフがこうした実態について、団体規制法で義務づけられた報告をしなかったなどとして、同庁は同法に基づき、6回目となる再発防止処分を公安審査委員会に請求した。(山下真範、八巻朱音)
発表によると、松本元死刑囚は1995年5月に逮捕された後、次男を後継者に指名。同庁による調査で、次男はアレフの構成員かつ役職員で、2014年頃からアレフの活動方針などの意思決定に関与して祭祀(さいし)を執り行うなど、組織運営を主導していることが確認されたという。遅くとも17年頃からは、2代目「グル(宗教指導者)」を自称しているとも指摘した。
さらに、松本元死刑囚の妻は構成員・役職員として次男を後見的に補佐する立場にあり、2人の居住地とされる埼玉県越谷市内のマンションがアレフの活動拠点になっているとした。
後継団体には00年以降、同法に基づき、団体の構成員や資産状況などを同庁に報告することが義務づけられている。だがアレフは、次男や妻が構成員・役職員であることや越谷市内の拠点について報告せず、同庁は「無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難」としている。
アレフは現在、9月20日を期限とする5回目の処分(半年間)を受けており、計16施設の全部または一部について、居住用を除く団体の土地・建物の使用や寄付の受領が禁じられている。今回の請求では、これに加え、次男が主導するアレフが既存の施設以外の土地・建物を新たに取得する恐れがあるとして、東京や大阪、福岡など団体施設がある12都道府県で、土地・建物の新規取得や借り受けを禁じることを求めた。
同庁は、次男が運営を主導していると判断した具体的な根拠は明らかにしなかった。公安審は今後、アレフ側からの意見聴取の手続きを経て、請求を認めるかどうかの結論を出すとみられる。

「実質的にアレフを支配している(次男という)存在を秘匿していたのは、閉鎖的な性格の表れだ」
22日、アレフに対する再発防止処分の請求を発表した記者会見で、公安調査庁の担当者はアレフの体質についてそう述べた。
同庁によると、アレフは内部規則で「合同会議」による運営を行っているとされている。だが同庁の調査で、実際には、松本智津夫元死刑囚の次男を中心に活動方針などが決められていることが確認されたという。さらに、アレフは次男が構成員・役職員であることを同庁に報告していないだけでなく、内部でも、次男の存在や関与を一部の構成員にしか伝えていないと指摘した。
同庁は次男の年齢について、プライバシーを理由に明かさなかったが、2014年頃にアレフを主導し始めたきっかけについて、「そうした活動をしうる年齢に達したのではないか」と説明した。
同庁がアレフの活動拠点と判断した埼玉県越谷市内のマンションには、同庁が3月26日に団体規制法に基づく立ち入り検査を実施したが、次男側は応じなかった。同庁からの告発を受けた埼玉県警が4月に捜索した結果、室内から現金数千万円が見つかっており、公安当局が現金の出所を調べている。
アレフの国内構成員は今年4月末時点で約1190人。同庁によると、23年以降の再発防止処分によって弱体化の兆しも見えており、施設の使用禁止によって勧誘活動が停滞し、新規の入会者も減少。お布施やセミナー開催などを通じた収入も減っているという。
オウム真理教の教義や組織構造を研究してきた宗教学者の島田裕巳氏は「松本元死刑囚の次男の存在は、団体を維持する上で求心力になりうる。公安庁は、次男の成長に伴ってアレフ内の構図が変化し、活動が活発化することに危機感を持っているのではないか」と話している。

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