【渋澤 和世】58歳男性が絶句…「空き家」になった実家に住み着いていた「驚きの生き物」 手入れしていたつもりだったが…

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平成30年の「住宅・土地統計調査」によると、日本中にある空き家の数は848万9000戸と、過去最多となった。その割合は、全国の住宅の13.6%を占めているというから、相続などで、思いがけず空き家を所有する可能性は誰にでもあると言ってもいいだろう。
二束三文にしかならない物件や特に思い入れがない家ならば、すぐに処分する決心も付くだろうが、ある程度の価値のある物件、もしくは住み慣れた実家の場合、処分するべきか、また処分するにしてもいつ処分するかなど悩みどころも多くなる。
その結果がこうした空き家の増加につながっているとも考えられる。だだ、一歩判断を誤ると思わぬ痛い目を見ることもないとは言えない。今回紹介するのは、まさにそんなケースだった。
物語の主人公は、東京在住の田中明夫さん(仮名、以下同)。自動車部品メーカー勤務の58歳で、子どもはおらず百貨店に勤める妻と品川区に一軒家を構えている。小さい敷地だが、共働きのためローンも残りわずかだ。
明夫さんには3歳年上の姉、信子さんがいる。信子さんも既に結婚し、現在は札幌在住。元々は夫の転勤について札幌に行ったのだが、食べ物もおいしく自然と都市のバランスがいい札幌を気に入り、マンションを購入した。子どもが二人おり、長男は独立しているが、下の娘はダウン症で現在も同居している。
photo by gettyimages
明夫さん姉弟の実家は、東京都大田区の多摩川近くの住宅街にある戸建て住宅。父親は2016年にガンで他界しており、その後2年間、母親がそこで一人くらしをしていた。介護認定は要支援1で多少、年齢による疲れやだるさはあったものの、日常生活は特に心配するような状況ではなかった。しかし2018年、虚血性心疾患の1つ「心筋梗塞」で、突然死してしまう。新型コロナウィルスが流行する前だったおかげで、親戚にも参列してもらい、お葬式も無事に終わることができた。葬儀が終わり、一息ついていた明夫さんは、信子さんから「実家の今後について、話をしたい」と提案される。実家をすぐに売却するのか明夫さんの意見は、「できるだけ早く売却したい」だった。妻が10歳ほど年下で、少なくとも彼女の定年までは今の自宅の方が通勤にとても便利であり、また現在住んでいる閑静な環境も気に入っていたため、同じ東京都内とはいえ実家に住み替えるという選択肢は全くない。さらに自宅を売却したお金が入れば、ローンの残額を払うこともできる。そうなれば、自分が60歳を過ぎてから現在の会社で雇用延長をしなくても、何とか食べていけるくらいの収入さえあれば、老後は余裕のある暮らしができると考えたのだ。実は明夫さんは、長年、さほど規模が大きくない自動車部品メーカーの人事部門に所属しているが、社会保険労務士の資格を持っていて、妻から反対されながらも密かに退職して独立することを考えていた。もし自身が雇用延長を選んでも、新しい正社員がどこかの部署から人事部に異動してくるだろう。そうなれば、製造部門から「稼ぎもないのに何で人事にこんなに人がいるんだ!?」という声が出ることは容易に予想できる。そのような意見への負い目もあり、このまま会社に残ることに精神的な抵抗を感じていた。photo by getteyimages 雇用延長しても給料は4割減になるのは確実で、それならば資格と経験を活かして別の活躍の場を見つけようとしているわけだ。そこで姉・信子さんにも、「自宅は売却してはどうか」と提案したのである。一方、姉の信子さんにしても、札幌に家族がいるため、東京の実家に戻るという選択はない。明夫さんはすんなり売却で話が決まると思っていたのだが、甘かった。信子さんは売却自体に反対はしないものの、すぐに売却することには反対してきたのである。二人が実家の売却について相談していた2018年と言えば、東京オリンピックを控え、不動産市場が盛り上がりつつあったタイミングだ。特に大田区は羽田空港に近いこともあって、これから大きく値上がりする可能性がある。そこで、今すぐ売却するのではなく、時期を待とうというのが、信子さんの意見だった。明夫さんが当時を振り返って話す。「確かに姉の言うことには一理あるかもしれないと思いました。そこで、しばらく売却はせずそのままにしておくことにしたのです」こうして当面は売却しないことになったものの、母親の死が突然だったこともあり、実家には生活用品がそのままになっている。これを片付けなければいけない。姉の信子さんは札幌に帰ってしまうので、空き家になった実家の管理や整理は、都内に住む明夫さんが担当することになった。「そこで、毎月というわけにはいきませんが、2か月に一度は実家に行って、洋服や台所用品を処分するなどしていました。特に賃貸に出す予定もなく急ぐ必要がなかったため、ゆっくりと片付けていこうと思っていたのです」Photo by iStock 実家に害獣が住み着いていたところが、母親の死から1年近くたったある日、予想もしなかった事件が起きる。実家の中に害獣が入り込んでいるらしいと、実家がある地区の自治会から明夫さんに連絡がきたのである。多摩川も近く、庭の草も伸び放題のまま放置していたので、格好の棲家となったのだろう。明夫さんが調べたところ、多摩川の河川敷は、野生動物の隠れる場所が多くあり、近年はイタチ、タヌキ、ハクビシン、アライグマ等害獣の住みかとなっている例がかなりあることがわかった。しかも厄介なことに、河川敷から道を越えて民家へ侵入してくる害獣は、ほとんどが夜行性。夜に動き回って人目につかないように現れる。明夫さんがまったく気が付かなかったのもそのためだ。実家を調べた限り、大きな被害はないようだが、うっすらと獣の臭いがする。住み着いているのではなく、たまたま入り込んだだけかもしれない。だが、このまま放置して、近隣に迷惑をかけるわけにはいない。「対処のための害獣駆除の費用、殺菌・消毒費用、清掃費用でトータル20万円程かかってしまいました。姉には状況を連絡しましたが、姉の家も定年になったご主人とダウン症の姪がいて、生活が楽ではないことはわかっていましたから、お金のことは言い出せませんでした」photo by gettyimages(画像はイメージです) 結局、害獣駆除のためにかかった費用はすべて明夫さんが負担することになった。だれも住んでいなくても、不動産というものは持っているだけで固定資産税もかかるし、思いもよらないトラブルが起こることもある。明夫さんにとって、空き家を持つことが、想像以上にコストがかかることを初めて痛感させられた瞬間だった。それから野生動物が住み着かないように実家へ行く頻度を増やした明夫さん。しかし不運にも実家に空き巣に入られ、さらには信子さんと家の相続をめぐって揉めることになってしまう。明夫さん姉弟の実家問題のてん末については、【後編】『2500万円の実家を相続した58歳男性、その処分をめぐる姉との「相続トラブル」の実情』でさらに詳しく紹介する。
明夫さん姉弟の実家は、東京都大田区の多摩川近くの住宅街にある戸建て住宅。父親は2016年にガンで他界しており、その後2年間、母親がそこで一人くらしをしていた。介護認定は要支援1で多少、年齢による疲れやだるさはあったものの、日常生活は特に心配するような状況ではなかった。しかし2018年、虚血性心疾患の1つ「心筋梗塞」で、突然死してしまう。
新型コロナウィルスが流行する前だったおかげで、親戚にも参列してもらい、お葬式も無事に終わることができた。
葬儀が終わり、一息ついていた明夫さんは、信子さんから「実家の今後について、話をしたい」と提案される。
明夫さんの意見は、「できるだけ早く売却したい」だった。
妻が10歳ほど年下で、少なくとも彼女の定年までは今の自宅の方が通勤にとても便利であり、また現在住んでいる閑静な環境も気に入っていたため、同じ東京都内とはいえ実家に住み替えるという選択肢は全くない。
さらに自宅を売却したお金が入れば、ローンの残額を払うこともできる。そうなれば、自分が60歳を過ぎてから現在の会社で雇用延長をしなくても、何とか食べていけるくらいの収入さえあれば、老後は余裕のある暮らしができると考えたのだ。
実は明夫さんは、長年、さほど規模が大きくない自動車部品メーカーの人事部門に所属しているが、社会保険労務士の資格を持っていて、妻から反対されながらも密かに退職して独立することを考えていた。
もし自身が雇用延長を選んでも、新しい正社員がどこかの部署から人事部に異動してくるだろう。そうなれば、製造部門から「稼ぎもないのに何で人事にこんなに人がいるんだ!?」という声が出ることは容易に予想できる。そのような意見への負い目もあり、このまま会社に残ることに精神的な抵抗を感じていた。
photo by getteyimages
雇用延長しても給料は4割減になるのは確実で、それならば資格と経験を活かして別の活躍の場を見つけようとしているわけだ。そこで姉・信子さんにも、「自宅は売却してはどうか」と提案したのである。一方、姉の信子さんにしても、札幌に家族がいるため、東京の実家に戻るという選択はない。明夫さんはすんなり売却で話が決まると思っていたのだが、甘かった。信子さんは売却自体に反対はしないものの、すぐに売却することには反対してきたのである。二人が実家の売却について相談していた2018年と言えば、東京オリンピックを控え、不動産市場が盛り上がりつつあったタイミングだ。特に大田区は羽田空港に近いこともあって、これから大きく値上がりする可能性がある。そこで、今すぐ売却するのではなく、時期を待とうというのが、信子さんの意見だった。明夫さんが当時を振り返って話す。「確かに姉の言うことには一理あるかもしれないと思いました。そこで、しばらく売却はせずそのままにしておくことにしたのです」こうして当面は売却しないことになったものの、母親の死が突然だったこともあり、実家には生活用品がそのままになっている。これを片付けなければいけない。姉の信子さんは札幌に帰ってしまうので、空き家になった実家の管理や整理は、都内に住む明夫さんが担当することになった。「そこで、毎月というわけにはいきませんが、2か月に一度は実家に行って、洋服や台所用品を処分するなどしていました。特に賃貸に出す予定もなく急ぐ必要がなかったため、ゆっくりと片付けていこうと思っていたのです」Photo by iStock 実家に害獣が住み着いていたところが、母親の死から1年近くたったある日、予想もしなかった事件が起きる。実家の中に害獣が入り込んでいるらしいと、実家がある地区の自治会から明夫さんに連絡がきたのである。多摩川も近く、庭の草も伸び放題のまま放置していたので、格好の棲家となったのだろう。明夫さんが調べたところ、多摩川の河川敷は、野生動物の隠れる場所が多くあり、近年はイタチ、タヌキ、ハクビシン、アライグマ等害獣の住みかとなっている例がかなりあることがわかった。しかも厄介なことに、河川敷から道を越えて民家へ侵入してくる害獣は、ほとんどが夜行性。夜に動き回って人目につかないように現れる。明夫さんがまったく気が付かなかったのもそのためだ。実家を調べた限り、大きな被害はないようだが、うっすらと獣の臭いがする。住み着いているのではなく、たまたま入り込んだだけかもしれない。だが、このまま放置して、近隣に迷惑をかけるわけにはいない。「対処のための害獣駆除の費用、殺菌・消毒費用、清掃費用でトータル20万円程かかってしまいました。姉には状況を連絡しましたが、姉の家も定年になったご主人とダウン症の姪がいて、生活が楽ではないことはわかっていましたから、お金のことは言い出せませんでした」photo by gettyimages(画像はイメージです) 結局、害獣駆除のためにかかった費用はすべて明夫さんが負担することになった。だれも住んでいなくても、不動産というものは持っているだけで固定資産税もかかるし、思いもよらないトラブルが起こることもある。明夫さんにとって、空き家を持つことが、想像以上にコストがかかることを初めて痛感させられた瞬間だった。それから野生動物が住み着かないように実家へ行く頻度を増やした明夫さん。しかし不運にも実家に空き巣に入られ、さらには信子さんと家の相続をめぐって揉めることになってしまう。明夫さん姉弟の実家問題のてん末については、【後編】『2500万円の実家を相続した58歳男性、その処分をめぐる姉との「相続トラブル」の実情』でさらに詳しく紹介する。
雇用延長しても給料は4割減になるのは確実で、それならば資格と経験を活かして別の活躍の場を見つけようとしているわけだ。そこで姉・信子さんにも、「自宅は売却してはどうか」と提案したのである。
一方、姉の信子さんにしても、札幌に家族がいるため、東京の実家に戻るという選択はない。明夫さんはすんなり売却で話が決まると思っていたのだが、甘かった。信子さんは売却自体に反対はしないものの、すぐに売却することには反対してきたのである。
二人が実家の売却について相談していた2018年と言えば、東京オリンピックを控え、不動産市場が盛り上がりつつあったタイミングだ。特に大田区は羽田空港に近いこともあって、これから大きく値上がりする可能性がある。そこで、今すぐ売却するのではなく、時期を待とうというのが、信子さんの意見だった。
明夫さんが当時を振り返って話す。
「確かに姉の言うことには一理あるかもしれないと思いました。そこで、しばらく売却はせずそのままにしておくことにしたのです」
こうして当面は売却しないことになったものの、母親の死が突然だったこともあり、実家には生活用品がそのままになっている。これを片付けなければいけない。姉の信子さんは札幌に帰ってしまうので、空き家になった実家の管理や整理は、都内に住む明夫さんが担当することになった。
「そこで、毎月というわけにはいきませんが、2か月に一度は実家に行って、洋服や台所用品を処分するなどしていました。特に賃貸に出す予定もなく急ぐ必要がなかったため、ゆっくりと片付けていこうと思っていたのです」
Photo by iStock
実家に害獣が住み着いていたところが、母親の死から1年近くたったある日、予想もしなかった事件が起きる。実家の中に害獣が入り込んでいるらしいと、実家がある地区の自治会から明夫さんに連絡がきたのである。多摩川も近く、庭の草も伸び放題のまま放置していたので、格好の棲家となったのだろう。明夫さんが調べたところ、多摩川の河川敷は、野生動物の隠れる場所が多くあり、近年はイタチ、タヌキ、ハクビシン、アライグマ等害獣の住みかとなっている例がかなりあることがわかった。しかも厄介なことに、河川敷から道を越えて民家へ侵入してくる害獣は、ほとんどが夜行性。夜に動き回って人目につかないように現れる。明夫さんがまったく気が付かなかったのもそのためだ。実家を調べた限り、大きな被害はないようだが、うっすらと獣の臭いがする。住み着いているのではなく、たまたま入り込んだだけかもしれない。だが、このまま放置して、近隣に迷惑をかけるわけにはいない。「対処のための害獣駆除の費用、殺菌・消毒費用、清掃費用でトータル20万円程かかってしまいました。姉には状況を連絡しましたが、姉の家も定年になったご主人とダウン症の姪がいて、生活が楽ではないことはわかっていましたから、お金のことは言い出せませんでした」photo by gettyimages(画像はイメージです) 結局、害獣駆除のためにかかった費用はすべて明夫さんが負担することになった。だれも住んでいなくても、不動産というものは持っているだけで固定資産税もかかるし、思いもよらないトラブルが起こることもある。明夫さんにとって、空き家を持つことが、想像以上にコストがかかることを初めて痛感させられた瞬間だった。それから野生動物が住み着かないように実家へ行く頻度を増やした明夫さん。しかし不運にも実家に空き巣に入られ、さらには信子さんと家の相続をめぐって揉めることになってしまう。明夫さん姉弟の実家問題のてん末については、【後編】『2500万円の実家を相続した58歳男性、その処分をめぐる姉との「相続トラブル」の実情』でさらに詳しく紹介する。
ところが、母親の死から1年近くたったある日、予想もしなかった事件が起きる。実家の中に害獣が入り込んでいるらしいと、実家がある地区の自治会から明夫さんに連絡がきたのである。多摩川も近く、庭の草も伸び放題のまま放置していたので、格好の棲家となったのだろう。
明夫さんが調べたところ、多摩川の河川敷は、野生動物の隠れる場所が多くあり、近年はイタチ、タヌキ、ハクビシン、アライグマ等害獣の住みかとなっている例がかなりあることがわかった。
しかも厄介なことに、河川敷から道を越えて民家へ侵入してくる害獣は、ほとんどが夜行性。夜に動き回って人目につかないように現れる。明夫さんがまったく気が付かなかったのもそのためだ。
実家を調べた限り、大きな被害はないようだが、うっすらと獣の臭いがする。住み着いているのではなく、たまたま入り込んだだけかもしれない。だが、このまま放置して、近隣に迷惑をかけるわけにはいない。
「対処のための害獣駆除の費用、殺菌・消毒費用、清掃費用でトータル20万円程かかってしまいました。姉には状況を連絡しましたが、姉の家も定年になったご主人とダウン症の姪がいて、生活が楽ではないことはわかっていましたから、お金のことは言い出せませんでした」
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結局、害獣駆除のためにかかった費用はすべて明夫さんが負担することになった。だれも住んでいなくても、不動産というものは持っているだけで固定資産税もかかるし、思いもよらないトラブルが起こることもある。明夫さんにとって、空き家を持つことが、想像以上にコストがかかることを初めて痛感させられた瞬間だった。それから野生動物が住み着かないように実家へ行く頻度を増やした明夫さん。しかし不運にも実家に空き巣に入られ、さらには信子さんと家の相続をめぐって揉めることになってしまう。明夫さん姉弟の実家問題のてん末については、【後編】『2500万円の実家を相続した58歳男性、その処分をめぐる姉との「相続トラブル」の実情』でさらに詳しく紹介する。
結局、害獣駆除のためにかかった費用はすべて明夫さんが負担することになった。だれも住んでいなくても、不動産というものは持っているだけで固定資産税もかかるし、思いもよらないトラブルが起こることもある。明夫さんにとって、空き家を持つことが、想像以上にコストがかかることを初めて痛感させられた瞬間だった。
それから野生動物が住み着かないように実家へ行く頻度を増やした明夫さん。しかし不運にも実家に空き巣に入られ、さらには信子さんと家の相続をめぐって揉めることになってしまう。
明夫さん姉弟の実家問題のてん末については、【後編】『2500万円の実家を相続した58歳男性、その処分をめぐる姉との「相続トラブル」の実情』でさらに詳しく紹介する。

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